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遺産相続レポート

「寄与分」ってなに?

2017.12.25

「寄与分」ってなに?|遺産相続の専門的な情報

1.寄与分とは

相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の貢献をした者がいる場合に、その者の相続分に特別の加算を行うのが寄与分の制度です(民法904条の2)。例えば、被相続人の家業を長年にわたりほぼ無給で手伝い、結果被相続人の財産形成に格別の貢献をした場合や、病気で入院していた被相続人の療養看護を無償で長年にわたり献身的に行ってきた場合などに、その貢献をした相続人の相続分を加算するという制度になります。

遺産分割を巡って相続人間で話し合いが行われる場合、被相続人と長年同居し介護や扶養に努めてきた相続人から、自らの相続分の加算を求められることは実務でもしばしば直面する問題です。そこで、今日は寄与分について概要をお話ししたいと思います。

2.寄与分が認められるための要件

寄与分が認められるための要件は、

  1. 相続人みずからの寄与があること
  2. その寄与が「特別の寄与」であること
  3. 寄与によって被相続人の遺産が維持又は増加したこと

であり、3要件全てを充たす必要があります。なお、寄与として認められるのは被相続人の生前に行った行為です。被相続人の死後に葬儀・法要等の実施で貢献した場合などは、寄与として認められませんので注意が必要です。以下、3要件について説明します。

 

(1)相続人みずからの寄与があること

寄与は原則として相続人みずから行う必要があります。したがって、相続人ではない親族や、被相続人の友人・知人などが寄与を行っても、寄与分は認められません。

もっとも、相続人の子や妻(子や妻は相続人ではない)が行った寄与を、相続人自身の寄与行為とみなして、寄与分が認められる場合があります。

例えば、単身赴任中の相続人に代わって、その妻と長女が交代で重度の認知症となった被相続人の介護を不眠不休に近い状態で行い、財産を維持(財産の減少を防止)した場合などは、相続人ではない妻と長女が行った寄与行為を、相続人自身の寄与行為とみなして寄与分が認められる可能性があります(参考裁判例として平成22年9月13日東京高裁決定)。

(2)その寄与が「特別の寄与」であること

「特別の寄与」とは、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超えた貢献であると解されています。寄与分を主張する相続人は、自分の寄与が「特別の寄与」にあたることを具体的に主張・立証する責任を負います。以下では、寄与行為のいくつかの類型ごとに具体的な判断基準を説明します。

[1]家業従事型

被相続人が自営業等を営んでいた場合、その仕事に従事していたことによって寄与分が認められることがあります。具体的には、(1)特別の貢献、(2)無償性(被相続人から対価を貰っていない)、(3)継続性(一時的ではなく、一定の期間従事していた)、(4)専従性(片手間ではなくかなりの労力を費やしていた)の各要件を検討して寄与分の有無を判断します。したがって、例えば親の会社に勤めて普通に給料を貰っていただけという場合は、無償性の要件を満たしませんので、寄与分が認められる可能性は低いと言えます。

[2]療養看護型

相続人が病気で療養している被相続人の療養看護を行ったという場合に寄与分が認められることがあります。具体的には、(1)療養看護の必要性、(2)特別の貢献、(3)無償性、(4)継続性、(5)専従性の各要件を検討して寄与分の有無を判断します。被相続人が療養看護を必要とするだけの病気にかかっていることが前提となりますので、単に被相続人と同居し家事の面倒を見ていただけという場合には、寄与分が認められる可能性は低いと言えます。

[3]扶養型

相続人が被相続人を扶養し、生活費等の面倒を見た結果、被相続人の財産が維持された場合に寄与分が認められることがあります。具体的には、(1)扶養の必要性、(2)特別の貢献、(3)無償性、(4)継続性の各要件を検討して寄与分の有無を判断します。親と同居して衣食住の面倒を見ていたとか、別居している親に毎月仕送りしていたという場合に問題となることが多いと言えます。

(3)寄与によって被相続人の遺産が維持又は増加したこと

寄与分が認められるためには、相続人の寄与行為と遺産の維持・増加の間に因果関係があることが必要です。簡単に言うと、相続人の寄与行為が無ければ、被相続人の遺産はこんなに増えていない、あるいはもっと減っていただろうと認められる必要があるということで す。

例えば、家業従事型では相続人の寄与行為により、被相続人の事業が順調に拡大し、被相続人の財産増加に貢献したという場合などであり、療養看護型では、相続人が自宅で献身的に介護した結果、ヘルパー代や施設費がかからず、被相続人の財産の減少が阻止されたという場合などです。
したがって、相続人の寄与行為が被相続人の遺産の維持・増加にとって関係ない場合や、財産上の効果が認められない精神的な援助・協力などの場合は、寄与として認められないことになります。

3.寄与分を主張する場合の注意点

寄与分が認められると、遺産から寄与分の額をいわば先取りすることが可能になるので、寄与分の裏付けとなる資料は、誰が見ても納得できる客観的なものを提出する必要があります。そして、資料を提出して寄与分を立証する責任は、寄与分を主張する者が負うことになります。したがって、寄与分を主張する場合は、その前提として自らの寄与行為を証明するだけの客観的な資料が十分に揃っているかどうかについて注意することが必要です。
例えば療養看護型では、どの程度の介護行為等を、いつからいつまで行ったのか、被相続人はその当時介護を必要とする状態だったか、要介護認定の有無・程度、働きながら介護していた場合は介護にどの程度の時間を割いていたのか等について幅広く資料を集める必要があります。裁判例でも、寄与行為の内容については詳細に検討・認定が行われています(昭和61年4月11日盛岡家裁審判、平成19年2月8日大阪家裁審判、平成19年12月6日大阪高裁決定)。

以上説明してきたとおり、寄与分が認められるための要件はハードルが高く、被相続人の面倒を多少見てきた程度では、なかなか認められないのが実務の現状です。また、寄与分を主張する場合には、自らの寄与行為を裏付ける客観的な資料が必須ですので、親の看護の際には、その内容を継続的に記録する等の工夫も必要になってくると思いますので、参考にしていただければ幸いです。

このレポート執筆の弁護士

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