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遺産相続レポート

相続人の中に不在者がいる際の遺産分割

2018.06.25

相続人の中に不在者がいる際の遺産分割|遺産相続の専門的な情報

相続人の中に行方不明の人がいる場合

被相続人の方がお亡くなりになり、遺産をそれぞれに分けるため遺産分割協議を行う際、しばしば問題となるのが、相続人の中に行方不明の人がいる場合です。

例えば、Aが亡くなった際、妻であるB、長女C、長男Dが相続人であり、長男Dの行方が分からないとします。遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりませんので、相続人である長男Dを除いてBとCだけで有効に遺産分割協議を行うことはできません。しかし一方で、長男Dを探し出すことが困難な場合もありますので、長男Dが見つからない限り遺産分割が出来ないとなると、Aの遺産を他の相続人がいつまでも使用できない状態が続いてしまいます。そのような場合、妻であるBが夫の名義になっていた預金を引き出せず、生活が困窮してしまうということもありえます。

例のように、相続人が配偶者や子供らである場合などは居場所を把握できているケースも多いでしょうが、相続人が甥姪などやや遠い関係にある場合などは、お互いに普段から連絡も取っておらず、どこに住んでいるかわからないということも少なくないでしょう。

不在者財産管理人を選任

このような場合は、D(=不在者)の代わりにDの財産を管理してくれる、不在者財産管理人を選任することとなります。

不在者とは、「従来の住所または居所を去って容易に帰来する見込みのない者」のことを指します。具体的には、親族など近しかった人たちが皆何年も会っていなくて連絡先もわからず、住民票上の住所地にも当人は実際には住んでいない場合などが不在者にあたるでしょう。

なお、不在者の生死が7年以上明らかでない場合には、「失踪宣告」(民法30条)という別の制度を利用することもできます。失踪宣告がなされた場合、その失踪者が既に死亡したときと同様に相続の手続きを行うことができます。不在者が死亡している見込みが高い場合などは、こちらの制度を利用する方が好ましいこともあります。

不在者財産管理人の範囲

注意しなければならないのは、不在者財産管理人は、選任されただけではDの代わりに遺産分割協議を成立させることは出来ないということです。

不在者財産管理人は、不在者の財産に関し、原則として民法103条に揚げられる(1)保存行為及び(2)性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為のみをすることができ、それ以上の行為をする場合は裁判所の許可が必要となります(民法28条)。

遺産分割協議を成立させることは、財産権の変更を伴う処分行為にあたり、上記不在者財産管理人の本来の権限の範囲外となりますので、別途裁判所の許可が必要となるのです。

このように、相続人の中に不在者がいる場合において、遺産分割協議を成立させるためには、不在者財産管理人を選任した上で、遺産分割協議を成立させるための権限を付与するという2段階の手続きが必要になります。これらは、いずれも家庭裁判所への申立てという法的手続きを必要としますので、お困りの際は専門家である弁護士等に相談するとよいでしょう。

このレポート執筆の弁護士

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