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遺産相続レポート

遺言の記載の解釈について

2018.10.22

遺言の記載の解釈について|遺産相続の専門的な情報

はじめに

昨今、相続に関する関心が高まってきていることから、費用をかけずに手軽に作成することのできる自筆証書遺言(一定の形式的要件を満たす、全文を自筆で記載した遺言書)を作成)を作成する方も増えてきているのではないかと思います。

もっとも、自筆証書遺言は専門知識を持たなくとも、また、専門家の立会いなく作成することができるものですので、手軽に作成することできます。尤もその反面、遺言の趣旨が不明確な記載となってしまっているなど、後にその記載を巡り、相続人間で紛争が生じてしまい、結局、争族となってしまうリスクも高くなります。

今回は、遺言の記載の解釈を巡って特によく問題となる、「財産についてはAに任せます。」との遺言の記載の解釈について、裁判例を交えてご説明します。

各事例の個別事情に鑑み、全く異なった判断について

上記のような遺言の記載がなされることはよくありますが、この記載の解釈は一通りではなく、現にこの記載の意味の解釈が問題となった裁判例では、各事例の個別事情に鑑み、全く異なった判断を下しております。

例えば、「財産については私の世話をしてくれた長女のXに全て任せます。」という自筆証書遺言が、Xに全ての財産を遺贈する(財産を全てXに譲る)趣旨であるか、遺産分割の手続をXが中心になって行うよう指示したに過ぎないものかが争われたケースについて、裁判所は、施設に入所していた遺言者をしばしば訪れて世話をしていたのはXであり、遺言者の死後、残された妻の世話を頼めるのはXしかいないこと、他の相続人は遺言者とは疎遠な関係にあったことなどを考慮し、この遺言はXに全ての財産を遺贈する趣旨であると認定しました(大阪高判平成25・9・5)。

他方、「A家の財産は全部B(Aの当時の交際相手)に任せます。」との自筆証書遺言について、唯一の相続人である娘に財産を相続させず、交際中の女性Bに全財産を遺贈するものと解釈するに足りる事情は存在しないとして、この遺言はBに全ての財産を遺贈する趣旨ではないと認定しました(東京高判昭和61・6・18)。

おわりに

 

上記二つの裁判例を見ても分かるように、裁判所は、当時の客観的な事情を踏まえて、遺言書をしたためた遺言者の意思を合理的に解釈し、遺言の記載の意味内容を決定します。 しかし、このような裁判官の決定が本当に亡くなった方の意思に合致しているかは結局のところ分からず、場合によっては、亡くなった方の真意とは全く異なった認定がなされてしまう可能性があります。

 

また、遺言書を作成しておく大きなメリットの一つが、遺産の分割方針について、相続人同士で話し合いをする必要がなくなるため争族となることを防ぐことができるという点にあるにもかかわらず、遺言の文言解釈を通して相続人間で争いが生じてしまうのでは、本末転倒といえましょう。

 

このような事態にならないよう、公証役場での作成費用等はかかるものの、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言の作成を専門家に依頼するなどの対策を立てることをおすすめします。

このレポート執筆の弁護士

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