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相続問題の専門知識

相続紛争予防と解決の急所

特殊事情のある遺産分割

1. 行方不明者がいるケース

不在者財産管理人による方法

下記の手順により、不在者財産管理人が、行方不明者の代わりに遺産分割協議書に署名捺印することができます。この利用のためには、不在者財産管理人の選任の申立てと、権限外行為許可の申立てを行う必要があります。

概要

不在者財産管理人の選任申立て

法定相続人の中に行方不明者がいる場合、家庭裁判所に対し、行方不明者の代わりに遺産分割協議に加わる代理人(不在者財産管理人といいます)を選任するよう申し立てることができます。

権限外行為許可の申立て

上記申立ての結果不在者財産管理人が選任されたら、さらに家庭裁判所に対し、その管理人が特定の遺産分割協議を行うことについて許可を申立てなければなりません。これは、不在者財産管理人が行方不明者に不利な遺産分割をしないようチェックすることを目的としています。

注意点

  • 行方不明者が法定相続分より少ない財産しか取得できないような遺産分割協議については、特別の事情がない限り権限外行為許可がおりない。
  • 裁判所から、申立人において親族に所在を尋ねたり、住民票を調べたりして行方不明者の所在調査をすることを求められることがある。
  • 専門家が不在者財産管理人に選ばれやすいが、その場合報酬が発生し、申立人が予納金として数十万円を先払いしなければならないことがある。
  • 申立人から、親族や友人等を不在者財産管理人の候補者として提示することもできるが、遺産の規模等の事情によっては認められない。
  • 親族や友人等が一旦不在者財産管理人になると、原則として遺産分割協議後も辞任することができず、行方不明者が見つかるまで財産を管理し、管理状況を裁判所へ報告し続けなければならない。

失踪宣告による方法

家庭裁判所の失踪宣告により、行方不明者は死亡したものとみなされます。もっとも、行方不明者に代襲相続人や法定相続人がいる場合、それらの者の遺産分割協議書への署名捺印を求めなければなりません。そのため、行方不明者の代襲相続人や法定相続人も行方不明者であるという場合には、解決策としては利用しにくいといえます。

失踪宣告の種類

普通失踪

不在者の生死が7年間明らかでないときに、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告をすることをいいます。このとき、失踪期間である7年の期間満了時に死亡したものとみなされます。

特別失踪

戦地に臨んだ者、沈没した船舶の在船者など死亡の原因となる危難に遭遇した者の生死が、戦争が終了した後、船舶の沈没した後、その他危難が去った後1年間明らかでない時に、利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告をすることをいいます。危難が去った時に死亡したものとみなされます。

2. 未成年者がいるケース

未成年者がいる場合、その親権者等が法定代理人として遺産分割協議を行うことになります。もっとも、民法に定められた一定の場合には、親権者等による法定代理が許されず、家庭裁判所に対する特別代理人の選任が必要になります。

特別代理人が必要な場合の例

親権者と子の利益相反がある場合

妻はAの子の法定代理人ですが、同人を代理して遺産分割協議を行うと、同人の利益を無視して、自ら全ての財産を相続すると決めてしまうことも可能となってしまいます。このような事態が生じないように、特別代理人の選任が必要とされています。

同一親権に服する数名の子に利益相反がある場合

この場合、Bの義娘はBの法定相続人にはなりませんが、Bの孫2名(自分の子)の法定代理人です。もっとも、Bの義娘がBの孫2名を代理して遺産分割協議を行うと、一方の利益を無視して、他方に全ての財産を相続させることも可能となってしまいます。このような事態が生じないように、どちらか一方には特別代理人を選任することが必要とされています。

注意点
  • 未成年者が法定相続分より少ない財産しか取得できない場合、特別の事情がない限り、特別代理人による署名捺印を得られない。
  • 専門家が特別代理人に選任され報酬が発生するおそれがある。

3. 精神障碍者・認知症患者等がいるケース

精神障碍者・認知症患者等が、意思能力のない状態で合意し署名捺印した遺産分割協議書は、原則として無効になります。そのため、家庭裁判所に対し、精神障碍者・認知症患者等の成年後見人選任申立てをしなければなりません。

注意点

  • 精神障碍者・認知症患者等が法定相続分より少ない財産しか取得できない場合、特別の事情がない限り後見人による署名捺印が得られない。
  • 専門家が後見人に選任され報酬が発生するおそれがある。
  • 後見人は遺産分割協議後も原則として辞任できず遺産分割後の業務が発生する。
  • 既に後見人が選任されている場合でも、上記2のケース同様、後見人と被後見人の利益相反がある場合や同一の後見に服する数名の被後見人に利益相反がある場合には、特別代理人の選任が必要となる。

4. 一部の相続人が遺産を横領している疑いがあるケース

相続の開始時から相続紛争解決までの間に、相続人の一部が遺産の一部を処分したり費消したりする場合があります。民法では相続財産は相続人の共有に属するものと規定されているので、自己の相続分について、民事訴訟にて返還請求を行なうことが考えられます。また、刑事事件としても横領罪が成立する余地があります。但し、横領したのが配偶者、直系血族又は同居の親族である場合には刑が免除され、それ以外の親族であれば告訴が必要となります。

5. 相続税問題が絡むケース

平成27年1月1日以後の相続では、遺産額が(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税が発生します。相続税の申告期限は、相続開始から10ヶ月以内と定められています。相続開始から10ヶ月以内に遺産分割協議ができない場合、一応は法定相続分の割合に従って財産を取得したものとして相続税を計算し、申告と納税することができます。もっとも、この場合、相続税を軽減する様々な特例が適用できず、より高額の納税をしなければならなくなります。

相続税には、上記の他にも様々な期限や手続の定めがあります(相続税ついて、詳しくは「相続税」のカテゴリをご参照ください)。これらの注意を怠ると、予期せず重大な不利益を被るおそれがあります。そのため、同一グループ内に税理士法人を有する等、相続税問題にも強い弁護士に相談しながら協議や裁判を進めることをおすすめします。

6. 裁判確定後に強制執行が必要なケース

相続人が調停合意や審判の結果に従わない場合には、差押え等の民事執行手続を検討することになります。そのためには、家庭裁判所の調停・審判手続とは別に申立てを行う必要があります。