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財産評価基本通達による取引相場のない株式の評価方法

事業承継マニュアル

第4章

事業財産の承継と税

集合写真
<参考>
1

財産評価基本通達による取引相場のない株式の評価方法

相続・贈与に関連して自社株の評価をする場合の評価方法は、財産評価基本通達(以下「財基通」)に取引相場のない株式の評価として定められています。
(1)
原則的評価方式と配当還元方式
取引相場のない株式の評価方法として、「原則的評価方式」と、「配当還元方式」の 2つの方法があります。このうちいずれの方法によるかは、株式を相続又は贈与により取得した者のその取得後の議決権割合などに応じて決定されます。その株式取得後の議決権割合と評価方法の関係は次の表のとおりです。

上記表で使われている用語の意義等は、以下のとおりです。
(注1)
「同族株主」とは、株主の 1 人及びその同族関係者の有する評価会社の議決権の合計数が 30%以上を占める場合のその株主とその同族関係者をいいます。ただし、評価会社の株主のうちに株主の 1 人とその同族関係者の有する議決権の合計数が、評価会社の議決権総数の 50%超を占めるグループがある場合には、その 50%超を占めるグループの株主だけが「同族株主」となり、その他の株主はたとえ 30%以上のグループに属する場合であっても「同族株主」とはなりません。
なお、「同族関係者」とは、法人税法施行令 4 条(同族関係者の範囲)に規定する者をいい、親族(配偶者、6 親等内の血族又は 3 親等内の姻族)や関係法人(その株主等の議決権割合が 50%以上の法人)等がこれに含まれます。
(注2)
「中心的な同族株主」とは、同族株主の1人及びその配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1 親等の姻族(これらの者の特殊関係法人を含みます)の有する評価会社の議決権の合計数がその会社の議決権総数の 25%以上である場合におけるその株主をいいます。
(注3)
「中心的な株主」とは、株主の1人及びその同族関係者の有する評価会社の議決権の合計数がその会社の議決権総数の 15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独でその会社の議決権総数の 10%以上の議決権を有している株主がいる場合におけるその株主をいいます。
(注4)
評価会社が自己株式を有する場合には、その自己株式に係る議決権の数は0 として計算した議決権の数をもって評価会社の議決権総数となります。(評基通 188-3)
(注5)
評価会社の株主のうちに商法第241条の規定により評価会社の株式につき議決権を有しないこととされる会社があるときは、当該会社の有する議決権の数は 0 として計算した議決権の数をもって評価会社の議決権総数となります。(評基通 188-4)
(2)
原則的評価法
会社の判定で、原則的評価方法と判定されますと、次にその評価する会社の規模を判定いたします。その会社の規模に応じて原則的評価方法は類似業種比準方式、純資産価額方式、そして類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式の 3 つの評価方式に分類されます。会社の規模とこれら 3 つの評価方式の関係は、下記の表のとおりに決められています。
(イ)
会社の規模による評価方法

上記表中Lの割合は、会社の従業員数、業種、規模等に応じて変動します。具体的には、次頁(ロ)以降の判定表を参照して下さい。
(ロ)
会社の規模の判定と、中会社のLの判定
従業員数が 100 人以上の会社は、大会社となります。
従業員数が 100 人未満の会社は、それぞれ次によります。
(a)
卸売業の場合、取引金額、総資産価額、従業員数で判定しますが、該当するも ののいずれか上位で判定します。
(b)
卸売業以外の業種の場合
(3)
類似業種比準価額の評価方式
(イ)
類似業種比準価額の計算について
類似業種比準価額は、事業内容が類似する複数の上場会社からなる類似業種の平均株価に比準して計算した金額であり、具体的な計算方法は次によります。

[符号の説明]
A
課税時期の属する月以前 3 ヶ月間の各月の類似業種の平均株価及び前年 1年間の同平均株価並びに課税時期の属する月以前 2 年間の同平均株価のうち最も低いもの
B
課税時期の属する年分の類似業種の 1 株当たりの配当金額
C
課税時期の属する年分の類似業種の 1 株当たりの年利益金額
D
課税時期の属する年分の類似業種の 1 株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
(B)
評価会社の直前期末における 1 株当たりの配当金額
(C)
評価会社の直前期末 1 年間(又は 2 年間の年平均)における 1 株当たりの年利益金額
(D)
評価会社の直前期末における 1 株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)
なお、この場合に評価会社の 1 株当たりの資本金の額(直前期末の資本金額を直前期末の発行済株式数で除した額)が 50 円以外の金額であるときには、上記算式により計算した価額を次のように修正することとなります。
(ロ)
1 株当たりの配当金額
(B)評価会社の 1 株当たりの配当金額の計算は以下のとおりです。
直前期末以前 2 年間のその会社の利益の配当金額(特別配当、記念配当等の名称による配当で、将来毎期継続することが予想できない金額を除きます。)の合計額の 2分の 1 に相当する金額を、直前期末における 50 円換算発行済株式数(直前期末の資本金額を 50 円で除して計算した数をいいます。以下(C)、(D)において同じ。)で除して計算した金額とします。
(ハ)
1 株当たりの年利益金額
(C)評価会社の 1 株当たりの利益金額の計算は以下のとおりです。
法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除きます。)に、その所得の計算上益金に算入されなかった利益の配当等の金額及び損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額を、直前期末における 50 円換算発行済株式数で除して計算した金額とします。この金額は直前期末以前 1 年間について求めた金額と直前期末以前 2 年間について求めた金額の 2 分の 1 相当額とのうちいずれか納税者の選択した金額によります。
(ニ)
1 株当たりの純資産価額
(D)評価会社の 1 株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)の計算は以下のとおりです。
直前期末の資本金額、法人税法 2 条《定義》17 号に規定する資本積立金額及び同条 18 号に規定する利益積立金額(法人税申告書別表五(一)「利益積立金額の計算に関する明細書」の差引翌期首現在利益積立金額の差引合計額)の合計額を、直前期末における 50 円換算発行済株式数で除して計算した金額とします。
(注)
利益積立金額がマイナスである場合には、資本金額と資本積立金との合計額からそのマイナス金額を控除した金額が純資産価額となりますが、その控除後の金額が、なおマイナスになるときは 0 とします。
(4)
純資産価額の評価方式
(イ)
純資産価額の評価方式は課税時期現在において評価会社が所有する資産を相続税評価額に評価し、その合計金額から課税時期現在における負債の金額の合計額を控除した金額(相続税評価額による純資産価額)から、評価差額に相当する金額(相続税評価額による純資産価額から帳簿価額による純資産価額を控除した金額)の37%相当額(評価差額に対する法人税相当額)を控除した金額を発行済株式数で除して計算します。
純資産価額の計算は以下のとおりとなっています。
(ロ)
評価の留意点
(a)
同族株主等の議決権総数が 50%以下の場合には、この価額の 80%を評価額とします。
(b)
課税時期現在で仮決算して求めるのが原則ですが、直近の決算を基準にすることも認められています。但し、直近の決算日から課税時期までの間に資産の増減が著しくない場合に限ります。
(c)
繰延資産など財産性のないものは除きます。
(d)
純資産の計算上、負債の額に加えるもの。
確定した前期分の法人税、事業税等
前期分の配当金
未納の固定資産税
課税時期後に支給される死亡退職金
(e)
純資産の計算上、負債の額から差し引くもの
準備金及び引当金
(退職給与引当金以外のもの)
(f)
相続税評価額による純資産価額の計算上、評価会社が課税時期 3 年以内に取得した土地等、建物等は、課税時期における通常の取引価額で評価します(評基通185)。
(g)
相続税評価額による純資産価額の計算上、評価会社が取引相場のない株式を所有しているときは、その取引相場のない株式を純資産価額方式で評価するときは、評価差額に対する法人税等相当額は控除しない。
(h)
評価会社が自己株式を保有している場合は、その自己株式は発行されていないものとして取扱います。また、自己株式に相当する発行株数は発行済株式総数から除きます(評基通 185)。
(5)
原則的評価方法のうちの適用される評価方式の判定
株式取得後の議決権割合に応じた評価方法が原則的評価方法となった場合でも、次のフローチャートにより、特別な評価方法に該当するかどうか判定し適用される評価方式を決定します。
(イ)
開業後 3 年未満の会社等に該当するかどうかの判定
開業後 3 年未満の会社等には、

の 2 つがあります。
(a)
開業後 3 年未満の会社
開業後 3 年未満の会社の場合には、その会社が大会社、中会社、小会社のいずれであろうとも、すべて純資産価額で評価しなければなりません。
設立後 3 年未満ではなく、開業後 3 年未満ということになっていますので、設立は古くても、会社の本来の売上げがほとんどなく、預金や有価証券の運用益だけの会社などは税務当局から開業していない状態だと判定される可能性があります。
(b)
類似業種比準要素のうち 3 要素ゼロの会社
類似業種比準価額算出の 3 つの要素である、評価会社の 1 株当たりの配当金額、1 株当たりの年利益金額、1 株当たりの純資産価額のいずれもゼロの場合、類似業種比準価額は使うことはできず、純資産価額で評価することになります。
なお、上記比準要素のうち配当については、2 期間の平均値を取ることになっていますので、前期の配当がゼロであっても前々期の配当があれば、結局 2 期間の配当はプラスになります。したがって、過去 2 期間の配当がいずれもゼロの場合に 1 株当たりの配当要素ゼロとなります。同じように、1 株当たりの年利益金額も、原則は直前期末の利益によることになっていますが、直前期末と直前々期末の 2 年間の平均額を取ってもよいことになっていますので、直前期末の利益がゼロの場合、直前々期末に利益があれば、平均額を出してプラスとすることができます。
したがって、過去 2 期間とも利益が赤字の場合にゼロとなるということになります。
(ロ)
土地保有特定会社に該当するかどうかの判定
土地保有特定会社に該当するかどうかの判定は次の表のとおりです。

この判定にあたっての留意事項は次のとおりです。
(a)
大会社、中会社、小会社の判定は前述の(2)原則的評価方式の(イ)会社の規模の判定と中会社のLの判定を参照して下さい。
(b)
分母・分子の金額は相続税評価額によります。
(c)
課税時期前において合理的理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が土地保有特定会社と判定されることを免れるためのものと認められるときには、その変動がなかったものとして上記の判定をします。
(d)
土地等の保有割合を判定する場合における「総資産価額(相続税評価額による)」及び分子の「土地等の価額(相続税評価額による)」の計算に当たって、3 年以内取得不動産は、購入金額から減価償却費相当分を差引いた金額で評価します。
(e)
保有する取引相場のない株式の 1 株当たりの純資産価額の計算に当たっては、「法人税額等相当額の控除の不適用」が適用されます。
(ハ)
株式保有特定会社に該当するかどうかの判定
株式保有特定会社に該当するかどうかの判定は下記の表のとおりです。

この判定に当たっての留意事項は次のとおりです。
(a)
大会社、中会社、小会社の判定は前述の(2)原則的評価方式の(イ)会社の規模の判定と中会社のLの判定を参照して下さい。
(b)
分母・分子の金額は相続税評価額によります。
(c)
課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が株式保有特定会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動がなかったものとして上記の判定をします。
(d)
株式等の保有割合を判定する場合における「総資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たって、3 年以内取得不動産は、購入金額から減価償却費相当分を差引いた金額で評価します。
(e)
株式等の保有割合を判定する場合における「株式等の価額の合計額(相続税価額によって計算した金額)」については、その株式等の発行会社を評価会社とみなして会社の規模等に応じて財産評価基本通達にしたがって評価した金額によりますから、その株式の評価上の区分、発行会社の規模等及び特定の評価会社に該当するかどうかにより、その評価方法が違ってきます。
(ニ)
比準要素数 1 の会社に該当するかどうかの判定
類似業種比準価額算出の 3 つの要素である、直前期の評価会社の 1 株当たりの配当金額、1 株当たりの年利益金額、1 株当たりの純資産価額のうちいずれか 2 つがゼロであり、かつ、直々前期において 2 つ以上の比準要素がゼロである会社をいいます。この場合において、直前期の評価会社の 1 株当たりの配当金額は、直前期と直前々期の配当金額の平均をとることになっており、1 株当たりの年利益金額の計算については直前期と直前々期の配当金額の平均をとることが可能となっています。
同様に直前々期の評価会社の 1 株当たりの配当金額については、直前々期と直前々期の前期の配当金額の平均の金額となり、1 株当たりの年利益金額については直前々期と直前々期の前期の年利益金額の平均を選択することが可能となります。
(6)
特別な評価方法
(イ)
株式保有特定会社に該当する場合の評価方法
純資産価額方式か又は「S1+S2 方式」(国税当局では簡易評価方法と呼んでいます。)のいずれかを選択します。
(a)
純資産価額方式・・・1、(4)を参照して下さい。
(b)
「S1+S2 方式」(簡易評価方法)
株式保有特定会社の評価上、選択的適用が認められる簡易評価方法は以下のとおりです。
評価の概要
簡易評価方法は、株式等とその他の財産に区分して、株式等は株式等だけで評価(S2)し、その他の財産はその他の財産だけで評価(S1)して、両者を合計する方式。
(計算方法)
1)
S1(株式等及び受取配当金を除いて計算した場合の原則的評価方法による評価額)
イ.
評価方法
会社の規模により分類されるそれぞれの原則的評価方法において、株式等と受取配当金だけを除いて原則的評価方法を適用して算出する方法。
ロ.
評価上の留意点
a.
S1 算出のための類似業種比準価額の算式
1、(3)で説明した類似業種比準価額の算式のうち、(B)(1 株当りの配当金額)と(C) (1 株当りの利益金額)については、受取配当金収入に相当する部分を差引き、(D) (1株当りの簿価純資産価額)については簿価純資産価額のうち株式等に相当する部分と、利益積立金のうち受取配当金に相当する部分の合計額を差引いたものにより計算します。

(b)=(B)×受取配当金収受割合(*)
(c)=(C)×受取配当金収受割合

(d)>(D)の時は(d)=(D)
(*)受取配当金収受割合
b.
S1 算出のための 1 株当り純資産価額の計算

(※1)「課税時期のその他の資産」とは、株式および出資以外の資産をいう。
(※2)

なお、S1 算出のための 1 株当りの純資産価額においては、同族株主等の議決権割合が 50%未満でも、80%評価を適用しません。
2)
S2(株式及び出資の相続税評価額)
イ.
評価方法
株式等の相続税評価額から評価差額の 42%を引いた金額を発行済株式数で除した金額
ロ.
S2 の算式

なお、株式等に取引相場のない株式が含まれており、当該株式を純資産価額により評価する場合には、評価差額に対する法人税等相当額を控除しないで計算した純資産価額の金額を「株式等の相続税評価額」とします。
(7)
配当還元法
取得後の議決権割合に応じた評価方法が配当還元法となった場合には、配当還元価額として評価し、次の<算式>により計算する。
<算式>
この<算式>における年配当金額は次のとおりに計算します。
(注1)
配当金額の計算上、特別配当は除きます
(注2)
配当還元価額が(2)の原則的評価法により計算した金額を超える場合には、原則的評価方式により計算した金額が評価額となります。

目次