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遺産相続トピックス

遺言制度に関する改正案

2018.01.08

遺言制度に関する改正案|遺産相続の専門的な情報

法制審議会、民法(相続関連)部会は、平成30年1月16日、民法(相続関連)改正案の要綱案を取りまとめました。同要綱案の中では遺言制度に関する見直し案が提言されています。以下、この見直し案の内容について概説いたします。

1.自筆証書遺言に関する方式緩和

現状、自筆証書遺言は【1】遺言書の全文【2】日付【3】氏名を自署し、押印を行うことで有効なものとなります(民法第968条1項)。
遺言書にはしばしば財産目録を添付することがありますが、これまでの制度ですと、その目録も「自署」にて行わなければ有効なものとなりませんでした。ただ、それは迂遠な方法であるとして、今回の要綱案では、財産目録に関しては自署であることを要せず、当該目録の毎葉に署名・押印することで有効なものと取り扱うことにしました。

自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度

(1)従来の自筆証書遺言での相続手続

ア.自筆証書遺言を使うには

自筆証書遺言は、1.形式要件を満たしていること、2.遺言書が遺言者の死亡時まで適切に保管されていること、3.遺言者の死亡後、相続人が遺言書を発見し、4.家庭裁判所での「検認」手続を経ること、というプロセスを全て経ることにより、初めて相続手続に用いることができます。

イ.従来制度のデメリット

遺言書が、形式要件を満たしたものであるかどうかは一般の方には判断できないことがあります。せっかく書いた遺言書が形式要件を満たしておらず無効となってしまう場合があります。
また、自宅で作成し、家のどこかに保管された遺言書は、埋もれてしまい、遺言者の死後、結局発見されないという危険があります。
例えば遺言書を銀行の貸金庫などに保管してしまうと、遺言者の死後、相続人による貸金庫開扉のためには、通常、相続人全員の同意を得る必要がありますので、協力を得られない相続人がいる場合、そもそも貸金庫の中身を確認できず、結局、遺言書が発見されないという恐れもあります。
検認の手続も、家庭裁判所への申立てが必要ですので、一般の方には負担が大きく、また、裁判所による検認が行われるまでには一定の期間を要することになります。

(2)要綱案

ア.要綱案の内容

今回、自筆証書遺言について、法務局にて保管するという制度の創設が提案されています。
要綱案によりますと、遺言者は、作成した自筆証書遺言を持参して法務局に自ら出頭し、その保管を申請することができます。遺言書保管の申請がされた際、法務局は民法第968条に定める方式への適合性を外形的に確認し、遺言書を画像情報として保存することとなっています。
相続人ないし受遺者は、遺言者の死後において、法務局に対し、遺言書を保管している法務局の名称等に関する証明書面の交付、遺言書の閲覧、画像情報等の証明書の交付等を請求することができます。
また、保管された遺言書については家庭裁判所による検認の手続を経る必要はないとされています。

イ.展望

これらの要綱案は、前述したような自筆証書遺言の各デメリットを緩和し、遺言者・相続人がより自筆証書遺言を利用しやすい制度を目指しているといえるでしょう。
もっとも、要綱案において法務局が行うとされるのは、自筆証書遺言の形式要件のチェックと外形情報の保存です。現時点では、遺言書の内容の適法性、解釈の仕方や妥当性までを確認するとまではされていません。
自筆証書遺言に不明確な文言がある場合、返ってその解釈をめぐって紛争となるケースも見受けられます。やはり、専門家の関与の下、遺言内容を吟味し、公正証書遺言の形で残しておく方法が、形式的にも内容的にも問題がなく、適切な遺言を残すことができるといえるでしょう。