Q&A法律相談

第4 寄与分

寄与分

私は、父が営んでいる小売業を助けてその営業に従事した結果、大いに繁盛して父の財産が増えました。
他方で、弟は他所で会社員として働いて給料をもらっています。
私の貢献を父の財産の相続に反映させることは出来ますか。

被相続人の財産の維持増加に特別の寄与がある相続人がいる場合に、具体的相続分の算定の際にその寄与を考慮する制度として、寄与分の制度があります。

ご相談のケースの場合、父親の遺産の増加に長男は貢献していますが、二男は貢献していません。父親と長男との間に雇用契約があれば、長男は自分の労働に対して対価を受け取ることになりますが、そのような契約関係がないと、父親の相続の際に長男の貢献は財産として評価されず、二男と同じ相続分となってしまいます。寄与分は、このような不公正を是正するための制度です。

但し、寄与分は相続人にのみ認められ、例えば相続人ではない長男の妻などには貢献があったとしても認められません。
また、寄与分が認められるためには、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与があることが必要で、扶養義務の範囲で貢献をしたとしても寄与分は認められませんし、寄与について既に相当の対価を得ている場合には、特別の寄与とは評価されません。

もっとも、相続人以外の被相続人の親族(特別寄与者)が、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合には、被相続人の相続開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができます。

寄与分が認められる相続のケースでは、(1) 寄与分に相当する財産額を算出し、(2) 残っていた遺産から寄与分を引いた財産額をみなし相続財産と考え、(3) みなし相続財産を法定相続分で除した上、(4) 寄与が会った相続人は(3) の相続分と寄与分の合計額を取得し、(5) その他の相続人は(3) の相続分だけを取得することになります。

寄与分の有無、その程度については、まず、共同相続人の協議で定めることになっています。共同相続人の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が審判で定めます。寄与分の審判の申立ては、遺産分割の手続の中で行うことが必要とされています。
尚、寄与分を遺言の中で定めることが出来るかという問題がありますが、寄与分は法定の遺言事項ではないので、寄与分を遺言に記載しても、法律上の意味はありません。但し、遺言者は、他の相続人の遺留分を害しない範囲で、特別の後見があった相続人に遺産を多めに配分することが出来、且つ、それが寄与分に基づくものであるかどうかを明示する必要はありませんから、遺言の中で特定の相続人の貢献に報いることは可能です。