Q&A法律相談

第1 遺産分割

遺産分割の禁止

私は、事業を営んでいますが、後継者として予定していた長男が早くに亡くなり、後継者は長男の子である私の孫に決め、本人も同意しています。
しかし、私亡き後、孫はまだ若年であり、孫が他の相続人である叔父叔母と遺産分割の交渉をしながら、事業を切り盛りしていくことは大きな負担であり、修行の妨げにならないかと心配です。
私の亡き後、遺産分割協議を一定期間先延ばしにすることは出来ませんか。

遺産分割の時期的制限

遺産分割は、相続開始後、いつでも行うことができると規定され、時期的な制限は存在しません。
しかし、被相続人において、相続人が若年であるため判断力が成熟するのを待ちたい場合、相続開始後すぐの分割を認めてしまうと相続紛争が深刻化することが予測されるような場合に、一定期間、遺産分割を禁止する実益があるといえます。
また、相続開始後なって、相続人資格や遺産の範囲という遺産分割の前提問題について民事訴訟が提起されたため、この解決を待って遺産分割を行うべき場面も存在するといえます。

遺言による遺産分割の禁止

被相続人は、 遺言によって、5年以内の期間を定めて、 遺産の全部又は一部についてその分割を禁止することができます。
遺産分割の禁止は、遺言によって行わなければならず、 それ以外の生前行為で指定することは認められません。

家庭裁判所による遺産分割の禁止

遺言によって、遺産分割が禁止されていない場合であっても、相続開始後に「特別の事由」がある場合には、家庭裁判所は、遺産の全部又は一部について、期間を定めて分割を禁じることができるとされています。
「特別の事由」とは、前記1のように、直ちに遺産分割を行うことがふさわしくない理由のことをいいます。

相続人間の合意による遺産分割の禁止

相続人全員が合意すれば、遺産分割を禁止することは可能です。
遺産分割は遺産共有状態の解消を目的とした各遺産の配分手続ですから、その共有者全員が、合意によって、共有状態の解消を先延ばしにすることを認めてもかまわないからです。