ご相談受付

0120-956-251 受付時間:平日9:00~19:00

Q&A法律相談

第6 相続財産

死亡退職金

先月、父が死亡しました。
父は、まだ退職前だったので、勤務先から退職金が出るようです。
相続人は、母と私を含む子供2名ですが、兄は母と折合いが悪く、話合が難しい情況です。
これは、遺産分割の対象になりますか。

まず、労働者が労働契約継続中に退職し、退職金を受領してから死亡した場合には、通常の相続財産として扱われます。
問題となるのが、労働者が労働契約継続中に死亡し、退職金が遺族に支給される、いわゆる死亡退職金の場合です。
この問題について、判例は、「受給権者が法律・条例等で定まっている場合、退職金は、その者固有の権利となり、相続財産には包含されない」、としています(最高裁昭和55年11月27日判決)。

まず、例えば、亡くなった労働者が公務員であれば、死亡退職金の性質は、その支給を定めた法令により決まることになります。
国家公務員退職手当法には,死亡退職金が支給される遺族の範囲・順序について,以下のように定められております。

  1. 配偶者(内縁の配偶者も含む。)
  2. 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していたもの
  3. 職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族
  4. 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で(2) に該当しないもの

同法によれば、たとえ子であっても、当該公務員の収入に頼らず生活していた場合には、第4順位となってしまい、他に当該公務員の収入に頼って生活していた者がいる場合などは受給資格がない、ということになります。
しかし、反対に、第1ないし第3順位の者がいない場合は、第4順位の者にも受給資格がある,ということになります。

私企業に勤務していた労働者であれば、当該企業の退職金規定により定められた受給者の固有の権利となり、相続財産とはなりません。
退職金規定に死亡退職金の受給者の定めが無い場合が問題となりますが、判例は、会社の理事会が死亡退職金を受給すべき者を決めた場合、その受給者の固有の権利であるとしています。
死亡退職金は死亡した労働者と生計を一にしていた者の生活費を確保するという配慮が不可欠であり、退職金規定に定めが無い場合も、一律に受給者の範囲を決定することは困難な場合もありますが、上記の理事会決定のような運用が望ましいといえます。