Q&A法律相談
第3 特別受益
特別受益証明書
亡父の相続に際し、特別受益証明書というものを書くように言われました。
亡父の遺産を相続しないことは納得していますが、他に何か影響はありませんか。
特別受益証明書とは、「自分は、被相続人から特別受益を受けたため相続分がありません」という趣旨の文書です。「相続分のないことの証明書」「相続分不存在証明書」「相続分皆無証明書」とも呼ばれています。
特別受益証明書は、相続登記の申請や相続税の申告などで用いることが実務上認められています。
相続登記の申請の例でいうと、相続人が複数いる場合に、ある相続人が、他のすべての相続人に特別受益証明書に署名押印してもらい、これらの特別受益証明書を添付して相続登記の申請を行い、被相続人名義の土地を自己単独の名義にするやり方です。特別受益証明書を使えば、正式な相続放棄の手続や遺産分割の手続を経ることなく簡易に特定の共同相続人に相続財産を集中させ、相続登記の申請等をすることができます。このように特別受益証明書は、事実上、相続放棄と同じ結果をもたらすことがあるので、「事実上の相続放棄」と呼ばれることがあります。
但し、特別受益証明書の問題点も無いわけではありません。
特別受益証明書は正式な相続放棄をあらわす書面ではありません。したがって、特別受益証明書を作成した相続人も消極財産(マイナス財産)を被相続人から引き継ぐので、後日債権者から取立てを受けることがあります。特別受益証明書の意味や内容を知らないまま署名押印してしまったり、実際には特別受益を受けた事実がないのに署名押印したりした結果、後にその効力を巡って相続人間で紛争が生じることがあります。
特別受益証明書は、その意義や内容をよく理解して作成、利用すべきといえるでしょう。