Q&A法律相談
第6 相続財産
遺産である不動産の評価額
昨年、母が亡くなりました。相続人は姉と私です。姉は母と同居しておりました。
姉の説明では、遺産は、自宅土地建物1,500万円、有価証券1,500万円、預貯金4,000万円ということでしたので、私は有価証券1,500万円と預貯金2,000万円を受取ることで合意しました。
ところが、後日、姉が言っていた自宅土地建物の1,500万円という評価は、固定資産税評価額というもので、市場価格で見ると立地もよいので敷地だけで3,800万円はすると不動産業者から聞きました。
姉が老母の面倒を見てくれたことについては感謝していますが、どうも納得できません。
どのように考えればいいでしょうか。
不動産の評価額には、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)、公示価格、時価があり、それぞれに制度上の目的が異なっています。
そして、遺産分割協議は、全法定相続人の合意により行われるものであり、個々の遺産をどのように評価するかについても全法定相続人の合意によって決めることが可能です。ただ、不動産の評価方法の選択について、相続人間で合意が得られず、事案が裁判所に持ち込まれた上、それでも評価方法について合意が無い場合は、裁判所において時価が採用されることになります。相続に関する問題ですから、相続税評価額によるべきであるようにも見えますが、これは飽くまで課税上の評価基準であって、遺産分割もこれによるべきであるという必然性はありません。
本件の場合において、法定相続人全員が自宅土地建物の評価額を1,500万円とすることを認め、これを前提として全産の分割協議を成立させた場合には、原則としてその遺産分割協議は法律上有効であり、これを覆すことはできません。
但し、先の遺産分割協議を無効とさせ、遺産分割協議のやり直す可能性も無いわけではありません。
このようなケースで遺産分割協議が法律上無効であると言えるためには、(1) あなたが遺産分割協議時点で自宅土地建物の評価額が1,500万円であると認識し、それを他の相続人に明確に示して本件遺産分割協議を成立させたこと。(2) 後日当該自宅土地建物の遺産分割協議成立時点での真の評価額が3,800万円以上であることが判明したこと。(3) もしもあなたが(1) の協議成立時に(2) の事実を知っていたならば、(1) のような遺産分割協議を成立させなかったことが客観的に明らかであること。という三つの要件が揃わなければなりません。
事例としては、遺産分割協議成立時に各相続人が、個々の不動産の評価額がいくらであるかを殊更問題とせずに遺産の分割を行うというケースも多々あります。本件がそのようなケースであると認定されるおそれもないとは言えません。