Q&A法律相談

第9 相続の承認・放棄

熟慮期間の伸長

事業をしていた父が亡くなりましたが、どこにどのような財産があるのか、借金の有無や金額について調査の時間が足りません。
3か月の期間を徒過すると、単純承認といって、遺産も債務も相続されると聞きました。
対処する方法がありますか。

相続の承認や放棄は、 相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならないと規定されています。この期間を熟慮期間といいます。通常は、被相続人の死亡時が熟慮期間の起算点となります。民法が熟慮期間を3か月以内と定めた理由は、 相続関係の早期確定を配慮したためであり、相続人は、 この熟慮期間内に相続財産の内容を調査した上で、相続を承認するか放棄するかの選択を行うことになります。
熟慮期間の法的性質は、 除斥期間と考えられていますので、 相続人が何もしないまま3か月の期間が経過すると、 放棄や限定承認の選択権は失われて、 単純承認をしたものとみなされます。

但し、熟慮期間は、 例外的に、家庭裁判所の審判によって伸長することができます。期間の伸長は、 3か月の期間だけでは、 相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができない場合に認められます。 具体的には、 相続財産の種類、複雑性、評価の困難性、所在地に加え、限定承認を行う上での共同相続人全員の協議期間及び財産目録の調製期間などの諸事情が考慮されることになります。

なお、熟慮期間伸長の申立ては、熟慮期間内に行わなければならず、 期間経過後の申立ては許されないことに注意する必要があります。