Q&A法律相談

第9 相続の承認・放棄

相続放棄と意思能力

今年、私の長兄が90才で亡くなりました。長兄夫婦に子供は無く、法定相続人は長兄の妻、姉と私の3人です。
問題は相続人の1人である姉の事です。姉は常々、長兄が死んだら、遺産は長兄の妻がもらえばいいと言っていましたが、現在、寝たきりで改めて相続放棄するのか確認出来ない状態です。遺産分割協議も出来ません。認知症の診断を受けたわけではありませんが、そろそろ、相続放棄の3ヶ月の期限が迫っています。どうしたら良いのでしょうか。

「姉」が意思無能力等である場合

相続放棄の期間3か月の起算点は、「相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時」になります(民法915条1項本文)。したがって、「姉」が、こん睡状態にある等、意思無能力等であった場合には、そもそも、自己のために相続の開始があったことを「知らない」ので、相続放棄の期間は開始していないことになります。
「姉」に後見人が選任された段階で、相続放棄の期間が進行します。但し、「姉」が従前から相続放棄を望んでいたことをもって当然に、後見人も相続放棄するとは限りません。

「姉」が意思能力を有する場合

相続放棄の期間は、家庭裁判所において延長することができますので、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立をすべきです(民法915条1項但書)。

遺産分割について

本件の状況において、遺産分割手続を開始するためには、「長女」が意思無能力者である場合には、後見人、意思能力を有する場合には、代理人を立てる必要があります。