相続問題の専門知識
遺産の名義変更
有価証券(株式・投資信託等)の相続手続き
有価証券(株式・投資信託等)の相続手続きについて
3. 被相続人の株式や投資信託の名義を変更したいのですが、どのように手続きをすればよいですか。
4. 被相続人が上場会社の株式を保有していました。どのように名義変更の手続きをすればよいですか。
相続が開始した場合、被相続人から株式を相続する人に株式の名義を変更し、相続人の口座に移管する手続きが必要です。 現在、すべての上場株式は電子化されているため、上場株式は、証券会社に有する口座で管理されているのが一般的です。 したがって、株式を相続する場合、被相続人名義の証券会社の口座から、株式を相続する人の証券会社の口座に名義変更した株式を移管する手続きが必要になります。
相続する人が証券会社の口座を持っていなければ、新たに口座を開設する必要があります。 また、被相続人名義のA証券会社の口座から、相続する人のB証券会社の口座に株式を移管することもできますが、同一種別の口座である必要があり(特定口座から特定口座、一般口座から一般口座)、また、移管できるのは株式(単元株)に限られ、被相続人が株式以外に投資信託や外貨MMFなどを保有していたとしても、移管できないことがあります。 必要書類については、Q5をご参照ください。
5. 株式の名義変更手続きを行う際の必要書類を教えてください。
代表的な必要書類は以下のとおりです。 相続手続きは、金融機関により取扱いが異なるため、必要書類も金融機関によって異なる可能性があります。
手続きの際は、事前に金融機関で必要書類をご確認ください。
必要書類等(代表的なもの)
共通して必要なもの
1. 「株式名義書換請求書」等、各証券会社・株式発行会社等所定の書類
2. 被相続人の除籍謄本
3. (株券がある場合)名義変更を希望する株式の株券等
遺言がある場合に必要なもの(1~3に加えて)
4. 遺言書
5. 検認済証明書(自筆証書遺言の場合。自筆証書遺言についてはQ9をご参照ください。)
遺言がない場合に必要なもの(1~3に加えて)
6. 遺産分割協議書(相続人全員の実印による押印)
7. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍謄本
8. 代襲相続人がいる場合は、被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本、改製原戸籍謄本
9. 相続人全員の実印
10. 相続人全員の印鑑証明書
6. 被相続人の株式が証券会社ではなく信託銀行の特別口座にあるようです。この場合の手続きはどのようになりますか?
現在、上場株式の株券は電子化されており、紙の株券は存在しないのが通常です。電子化された株式は、通常、証券会社の口座で管理されており、証券会社で名義変更や移管の手続きを行います(Q4参照)。
一方、株券電子化の際に証券会社に預けられなかった株式の中には、証券保管振替機構(ほふり)へ預託されず、そのまま株券として残っているものがあります(いわゆる「タンス株」等)。 このような株券は、電子化に伴い無効となりましたが、株主としての権利を保護するために、株式自体は、その時点の株主名義で開設された信託銀行等の口座で暫定的に管理されており、この口座を「特別口座」と呼んでいます。 特別口座で管理されている株式については、まず株券の電子化をし、その後、相続する人の証券会社の口座に当該株式を振り替える手続きを取ります。また、相続開始日が平成21年1月5日以前か以降かなどにより手続きが異なります。
具体的な手続については、特別口座のある信託銀行等にご確認ください。
7. 被相続人が非上場会社の株式を保有していました。どのように名義変更の手続きをすればよいですか。
非上場株式は、上場株式と異なり、証券会社による管理はなされません。したがって、株式発行会社に直接相続手続きを依頼する必要があります。 通常であれば、株式発行会社で株主名簿が保管されているため、株主名簿の書換えを請求することになります。 また、会社によっては、信託銀行等が株主名簿管理人となっている場合もあります。その場合は、当該株主名簿管理人に対して株主名簿の書換えを請求することとなります。株主名簿管理人については、株式発行会社の定款で確認することが可能です。また、定款の確認が困難な場合は、直接株式発行会社にご確認ください。
必要書類については、Q5をご参照ください。
8. 被相続人が所有していた株式が譲渡制限株式のようです。相続人が株式を引き継ぐことは可能でしょうか。
相続は売買などの場合とは異なるため(一般承継といいます)、原則として相続人が株式を引き継ぐことは可能です。 もっとも、そもそも株式に譲渡制限を付す理由は、株式発行会社にとって好ましくない株主を排除するためです。 相続の場合においても、相続人に株式を引き継がせることが会社にとって好ましくない場合も考えられます。そのような場合に備えて、会社法では、譲渡制限株式について相続が生じた場合、会社が相続人に対して買取を求めることもできるようになっています(会社法174条)。 会社から買取請求がなされた場合、相続人は株式を引き継ぐことはできず、対価としての代金を受け取ることとなります。
9. 被相続人が投資信託を保有していました。どのように名義変更の手続きをすればよいですか。
投資信託は、預貯金の場合と同様、取り扱っている金融機関に相続手続きを依頼することとなります。遺言の有無や遺言執行者の定めの有無により、手続きや必要書類が異なります。 詳細は、「相続開始後の預貯金の相続手続き」をご参照ください。 また、投資信託の商品によっても異なりますが、被相続人と同一の金融機関の口座への移管が一般的であり、相続人が同一の金融機関に口座を有していない場合、口座開設やリスク説明などのために窓口への来店を求められる場合もあります。
手続きの詳細については、各金融機関にご確認ください。
10. 株式を運用する相続人はおらず、換金して相続したいと思っています。どのように手続きをすればよいですか。
被相続人名義の口座にある株式をそのまま売却することはできないため、通常は、一度、代表相続人の証券会社の口座に株式を移管したうえで、代表相続人が売却を行い、相続人間で売却代金を分配することとなります。 そのため、相続人が証券会社に口座を持っていない場合は、相続人名義の口座を新たに証券会社に開設する必要があります。 また、代表相続人の口座に株式を移管する際には、証券会社所定の書類に法定相続人の署名と実印による押印を求められることが一般的です。売却後の売却代金の分配方法については、遺産分割協議で決めることとなります。
手続きの詳細については、証券会社にご確認ください。
11. 被相続人名義の株式の配当の通知が信託銀行から届きました。どのように手続きをすればよいですか。
株式会社が、株主に対して配当を行う場合、配当の金額や配当の効力が生じる日等を株主総会決議で定める必要があります。 その決議の後、一定の期間が経過した時点で、実際に配当金が株主に振り込まれます。 したがって、株主総会決議の日と実際に配当がなされる日はズレが生じます。
配当を受ける相続人や配当を受ける割合については、遺産分割協議が成立した日と、株主総会決議の日との先後で変わります。
(1) 株主総会決議前に遺産分割協議が終了していた場合
遺産分割協議により、配当を受ける権利があるとされた相続人が配当を受けることとなります。 したがって、配当を受ける人や割合については、遺産分割協議の内容をご確認ください。
(2) 株主総会決議時点で遺産分割協議が終了していない場合
株式の配当金は法定果実と解されています。遺産分割が終了していない場合、法定果実は遺産に含まれず、当然に法定相続分に応じて分割されると解されています。 したがって、遺産分割協議が株主総会決議時点で終了していない場合、各相続人は、配当総額のうち、法定相続分に相当する割合の配当金を受領することができます。
なお、(1)のように株主総会決議の前に遺産分割協議が終了していたとしても、証券会社や株式発行会社の手続き上、配当に関する通知や書類は被相続人の名前で、被相続人のもとに届くのが通常です。
相続人が配当を受けるための手続きについては、証券会社や株式発行会社にご確認ください。
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