相続問題の専門知識

相続とは

相続とは?基礎知識や手続き、注意点などをまとめて解説

人が亡くなったときには、亡くなった人の財産を子、配偶者などの相続人が引き継ぐ必要があります。相続は簡単にできることではなく、相続人の確定や遺産の評価などさまざまな手続きを踏まなければなりません。相続をスムーズに進めるためには、事前に相続に関する知識を身につけておくことが大切です。

今回は、相続の基礎知識や手続きの流れ、相続税の計算方法などを解説します。また、相続に関するトラブルと解決策についても紹介するため、相続に関する知識を深めたい人はぜひ参考にしてください。

相続とは?基礎知識をわかりやすく解説

相続は、簡単にいうと「亡くなった方の財産を受け取る」という意味ですが、受け取れる人や相続が始まるタイミングなど細かい決まりがあります。まずは、相続の定義や相続のタイミングなどの基礎知識を見ていきましょう。

相続の定義とは?

相続とは、人の死亡により被相続人の権利義務が他の人に承継されることをいいます。亡くなった人のことを「被相続人」、権利義務の承継者のことを「相続人」と呼びます。人の死亡によって、権利義務の主体がいなくなるため、新たな主体へと権利義務を承継させる必要があるでしょう。

相続の範囲・順位は、民法で以下の通り定められています。

  • 常に相続人:配偶者
  • 第一順位:子
  • 第二順位:直系尊属(父母や祖父母)
  • 第三順位:兄弟姉妹

被相続人よりも被相続人の子(相続人)が先に亡くなっていた場合は、相続人(子)の代わり(代襲)に孫が相続人となります。孫もすでに亡くなっていた場合は、ひ孫が再代襲して相続人となります。直系卑属(子や孫など自身よりもあとの世代で直通する系統の親族)は下の世代がいる限り、無制限に代襲相続することが可能です。

兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていた場合は、甥や姪にあたる子に代襲相続されますが、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りです。なお、兄弟姉妹の孫(甥や姪の子)が相続人となることはありません。

以上の相続人のことを「法定相続人」と呼びます。法定相続人でなくても、被相続人によって遺言で財産の受取人として指定された人は、遺産を取得することができます。遺言によって遺産を引き継ぐ人のことは「受遺者」と呼びます。

相続が開始するタイミング

相続が開始するタイミングは、人が死亡したときです。死亡には、自然死のほか失踪宣告による擬制死亡も含まれます。自然死とは、医学的に死亡が確認された状態のことで、医師が死亡と診断した瞬間に相続が開始します。

一方で失踪宣告は、生死不明となっている人が一定の要件を満たしているときに死亡したものとみなす制度です。失踪宣告は家庭裁判所が行い、死亡したものとみなされると相続が開始します。なお失踪には「普通失踪」と「危難失踪」とがあり、以下のように失踪を宣告されるまでの期間が異なります。

  • 普通失踪:不在者の生死が7年間明らかでないとき
  • 危難失踪:戦地に臨んだり、沈没した船舶中にいたりした人、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した人の生死が、危難の去ったあと1年間不明であるとき

相続財産の範囲

相続の対象となるものは、積極財産だけでなく消極財産も含みます。積極財産とは、金銭的価値がプラスの財産のことです。一方で消極財産とは、金銭的価値がマイナスの財産のことを指します。

相続の対象となる積極財産と消極財産の具体例は、以下の通りです。

積極財産

・現金、預貯金
・動産(自動車、家財、船舶、貴金属類、書画、骨董品など)
・不動産(土地、建物、借地権、借家権など)
・債権(有価証券、貸付金、売掛金など)

消極財産

・負債(借入金、クレジットカードの利用代金、買掛金などの未払分)
・未払税金(所得税、住民税、固定資産税、健康保険税など未払分)
・未払費用(水道光熱費、家賃、医療費、介護費などの未払分)

なお、「一身専属的権利義務」は相続の範囲に含まれません。一身専属的権利義務とは、その性質上特定の人のみに帰属し、他者に移転しない権利義務のことです。例えば、以下が挙げられます。

  • 労働者としての地位
  • 国家資格
  • 生活保護受給権
  • 親権
  • 親族としての扶養請求権、扶養義務
  • 身元保証人の地位
  • 罰金の支払い義務 など

そのほかにも、以下は相続の対象にはなりません。

  • 仏壇や位牌などの祭具
  • 墓地や墓石
  • 弔慰金や香典
  • 生命保険金
  • 死亡退職金

ただし、生命保険金と死亡退職金は、相続税法上「みなし相続財産」として、相続税の課税対象とされていることに注意が必要です。みなし相続財産とは、被相続人が生前から持っていた財産ではなく、被相続人の死亡をきっかけに受け取れる財産のことを指します。法律上は相続財産に含まれないものの、相続税の計算に含めなければなりません。

相続財産については以下で詳しく解説していますから、参考にしてください。

相続人とは

相続の手続きの流れ

相続が開始したら、さまざまな手続きが必要となります。ここでは、相続開始後に行うべき手続きについて、流れに沿って解説します。

相続開始の確認(死亡届提出)

被相続人が死亡すると死亡届の提出が必要です。死亡届は、死亡の事実を知ってから7日以内に親族や同居者などの届出人が、届出人の所在地、死亡者の本籍地、死亡者の死亡地のいずれかの市区町村役所へ届けます。なお、死亡届の用紙は、病院や市区町村役所で取得することが可能です。

併せて家族や親族などへ電話にて訃報を伝えるとよいでしょう。葬儀の予定が決まっていない場合、追って連絡する旨を伝えます。事前に訃報の連絡を行う人と電話番号をリストにしておくと、遺族の負担も軽減されるでしょう。

遺言書の有無確認

被相続人が遺言書を作成している場合、相続においては、遺言書の内容が最優先されます。そのため、遺言書の有無を早めに確認しておくことが大切です。

自宅の金庫や金融機関の貸金庫、仏壇、机やタンスの引き出しなどに保管されていないか、確認してみましょう。なお、自筆の遺言書を発見したとしても、すぐに開封してはいけません。

自筆の遺言書の開封は、家庭裁判所での検認の手続きにより行う必要があります。なお、誤って開封してしまった場合は、「5万円以下の過料」を課せられる可能性があります。

遺言書の破棄や書き換えなどが目的で開封したと認められれば、相続人の資格を失うケースもあるため、自筆の遺言書を見つけても開封しないようにしましょう。

相続人の確定

被相続人が死亡し、遺言書がないケースもあるでしょう。また、遺言書で分割方法が決められていない相続財産が存在する可能性もあります。

このようなケースでは、法定相続人の協議によって遺産の分割方法を決めなければなりません。これを「遺産分割協議」といいます。遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となるため、協議を行う前に「誰が相続人となるのか」を調査して確定させる必要があります。

相続人の調査を行うには、まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍謄本も含む)を被相続人の本籍地の役所で取得することが必要です。戸籍謄本の記載から被相続人の子どもや両親、兄弟姉妹など、相続人の候補となる人を確認していきます。

また、相続人の候補者の生存を確認するために、相続人候補者の戸籍謄本も取得しなければなりません。なお、相続人候補者がすでに亡くなっており、代襲相続が発生している場合には、代襲相続人の戸籍謄本も取得する必要があります。

被相続人から現在生存している相続人候補者までの、連続した戸籍謄本をすべて取得できましたら、相続人の範囲が確定します。相続人の範囲は調べなくても分かると考える人も多いですが、戸籍をたどると、被相続人と離婚した配偶者との子どもや、養子縁組した子ども、認知した子どもなど、見知らぬ相続人が見つかることも考えられます。そのため、相続人の調査は必ず行わなければなりません。

なお、相続人は必ずしも財産を相続できるわけではありません。被相続人や他の相続人の生命や遺言行為に対して故意に侵害した場合は、相続権を失わせる「相続欠格」の対象となる可能性もあります。相続欠格については、以下で詳しく解説しているため、参考にしてください。

相続対象財産とは

遺産の評価・調査

相続人が確定したら、相続の対象となる財産の範囲と各財産の評価額を調査して、確定させる必要があります。遺産の範囲が曖昧なままでは、公平に遺産を分割することは難しいでしょう。さらに、あとで新たな遺産が見つかった場合には、遺産分割協議をやり直さなければならないときもあるため、慎重に進めることが大切です。

また、各財産の評価額が曖昧な場合も、公平な遺産分割が難しくなります。このような場合には「相続するか」「相続放棄をするか」の決定や、相続税の申告の要否を適切に判断できない可能性もあるでしょう。例えば、相続の対象となる以下の財産を調査・評価する必要があります。

評価・調査すべき遺産 調査・評価方法

預貯金

被相続人の通帳やキャッシュカード、金融機関から届いた郵便物などから、利用していた金融機関を特定する。特定した金融機関で残高証明書の発行を依頼する。

不動産

被相続人が居住していた自治体の役所で名寄帳を取得する。名寄帳には同一市区町村内で被相続人が所有していた不動産が記載されているため、被相続人の所有不動産が判明できる。被相続人の所有不動産が判明できたら各物件について、登記簿謄本(登記事項証明書)と固定資産評価証明書を取得する。

株式といった有価証券

被相続人の自宅に証券会社から送られてきた郵便物が見つかれば、その証券会社へ取引残高報告書の発行を依頼する。証券会社がわからない場合は、株式会社証券保管振替機構へ登録済加入者情報開示請求を行うことにより、被相続人が口座を開設していた証券会社名が判明する。

自動車

車検証を確保して中古車買い取り業者に買い取り価格の査定を依頼する。ほかにも相場価格を基に評価する方法や売却代金を基に評価する方法などがある。

貴金属や書画・骨董品などの動産

買い取り業者へ査定を依頼する。

負債

金融機関や貸金業者、クレジットカード会社などへの債務は、以下の信用情報機関へ情報開示請求を行う。
・CIC(株式会社シー・アイ・シー)
・JICC(株式会社日本信用情報機構)
・KSC(全国銀行個人信用情報センター)
債権者名が判明したらその会社に対して利用残高証明書の発行を依頼する。

税金・社会保険料の滞納

被相続人の住所地を管轄する税務署や市区町村の役所、年金事務所へ照会する。

ただし、個人間の借金や買掛金などは、信用情報機関に登録された情報を照会しても判明しません。そのため、被相続人の自宅に残された郵便物やメモ、そのほかの書類を綿密に調査して確認する必要があります。

相続するかどうかの検討

相続人は、被相続人の財産を必ずしも相続する必要はありません。そのため、相続人と相続財産の調査が完了したら、相続するかどうかを検討しましょう。具体的には、次の3つの選択肢から1つを選ぶことになります。

  • 単純承認…被相続人に属していた財産や権利義務のすべてを無条件に引き継ぐこと
  • 相続放棄…被相続人に属していた財産や権利義務を一切引き継がないこと
  • 限定承認…被相続人に属していたプラスの財産の範囲内のみ、マイナスの財産を引き継ぐこと

例えば、プラスの財産が1,000万円ありマイナスの財産が1,500万円ある場合、相続放棄を選択すれば、これらすべての財産は相続されません。限定承認を選択した場合は、1,000万円分のプラスの財産と1,000万円のマイナスの財産を相続することになります。

一方で、単純承認を選択した場合は、1,000万円のプラスの財産と、1,500万円のマイナスの財産を相続しなければなりません。このことからマイナスの財産がプラスの財産よりも多いケースでは、相続放棄もしくは限定承認を選択し、プラスの財産が多いケースは単純承認を選択する人が多いでしょう。

遺産分割協議

先述した通り、遺産の分け方は遺言書に記載されている内容が優先されますが、遺言書がない場合は相続人による遺産分割協議で決める必要があります。遺言書がある場合でも、原則として、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、別の方法で遺産を分けることが可能です。各相続人が取得する相続分も、遺産分割協議で自由に決められます。

なお、遺産分割協議が整わない場合は、基本的に法定相続分に従って遺産を分けることになります。法定相続分とは、民法で定められた各相続人の相続分のことであり、具体的には以下の通りです。

法定相続人 相続分

配偶者と子が相続する場合

・配偶者:2分の1
・子:2分の1

配偶者と直系尊属が相続する場合

・配偶者:3分の2
・直系尊属:3分の1

配偶者と兄弟姉妹が相続する場合

・配偶者:4分の3
・兄弟姉妹:4分の1

※参考:国税庁│No.4132 相続人の範囲と法定相続分

同順位の相続人が複数いる場合は、その人数で相続分を均等に分けます。相続分については、こちらの記事でより詳しく解説しているため参考にしてください。

相続分

相続税の申告と納税

相続税は、相続した財産に必ずしも発生するわけではありませんが、遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納付を行う必要があります。その際には相続開始の翌日から10か月以内に、申告だけでなく納税まで行う必要があるため、手続きが遅れないように注意しましょう。

なお、相続税の「納税」が10か月以内に間に合わなかった場合は、「延滞税」が、相続税の「申告」が10か月以内に間に合わなかった場合は、「無申告加算税」が発生します。無申告加算税とは、期限内に申告をせず、申告期限を過ぎてから初めて申告したときや、税務調査もしくは事前通知後に申告したときに課税される税金のことです。相続税の額に応じて5~30%の課税が発生します。

相続税の基礎知識と計算方法

先述した通り、遺産総額が一定の金額を超える場合には、相続税がかかります。ここでは、相続税に関する基本的な仕組みや計算方法、節税方法について詳しく解説します。

相続税の基礎控除とは?

相続税の基礎控除とは、遺産総額が一定の金額に達するまでは相続税が課せられない「非課税枠」のことです。基礎控除額は、次の計算式で算出されます。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、父親が亡くなり、母親と子ども2人が相続する場合は法定相続人が3人なので、基礎控除額は4,800万円となります。そのため、遺産総額が4,800万円を超えなければ、相続税は発生しません。

なお、ここでいう遺産総額とは、「被相続人が死亡時に所有していたプラスの財産の価額からマイナスの財産の価額を差し引いた金額」のことです。負債や葬儀費用などは、プラスの財産から差し引けます。ただし、生命保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」は、相続の対象にはなりませんが、相続税の計算においては遺産総額に加算されることを覚えておきましょう。

相続税の計算方法

相続税の計算は、以下の手順で行います。

(A)課税価格の合計額の算出
(B)課税遺産総額の算出
(C)法定相続分に従い相続税総額の算出
(D)各相続人が負担すべき相続税額の算出
(E)各種税額控除や加算の適用

例えば、父親が亡くなり母親と子ども2人が相続するケースで、父親が所有していた財産から負債や葬儀費用を差し引き、みなし相続財産を加算した金額が7,000万円あるとします。この金額が(A)の「課税価格の合計額」となります。

次に、(B)の課税遺産総額は、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて算出します。このケースでは基礎控除額が4,800万円であるため、課税遺産総額は2,200万円(7,000万円-4,800万円)です。

課税遺産総額を算出できたら、一旦法定相続分に従って相続したものと仮定して、(C)の相続税の総額を算出します。このケースにおける法定相続分は、母親が2分の1、子が1人あたり4分の1ずつであるため、各相続人の取得金額は母親が1,100万円、子が1人あたり550万円ずつです。これらの取得金額を相続税の速算表に当てはめると、各相続人の仮の相続税額は以下のようになります。

母親:1,100万円×15%-50万円=115万円
子ども:550万円×10%=55万円
子ども:550万円×10%=55万円

3人分の税額を合計すると、相続税の総額は225万円となります。相続税の総額を計算できたら、その金額を実際の相続分で按分し、(D)の各相続人が負担すべき相続税額を算出します。ここでは、法定相続分とは異なり、母親が3分の2、子が1人あたり6分の1ずつ相続したとしましょう。この相続分に従って先ほど算出した相続税総額を按分すると、以下のようになります。

母親:225万円×3分の2=150万円
子ども:225万円×6分の1=37万5,000円
子ども:225万円×6分の1=37万5,000円

最後に、税額控除や加算で適用すべきものがあれば適用し、実際の相続税額を算出します。このケースでは、母親には配偶者の税額軽減が適用できます。また、子どものうち1人が未成年者(18歳未満)であれば、未成年者控除を適用することが可能です。ここでは、子どもが18歳と15歳であるとしてこれらの控除を適用すると、各相続人の実際の相続税額は以下のようになります。

母親:0円(取得財産額1億6,000万円までは配偶者には相続税がかからない)
子ども(18歳):37万5,000円(控除なし)
子ども(15歳):7万5,000円(37万5,000円-(18歳-15歳)×10万円)

3人分の相続税の合計は45万円となります。

相続税を軽減する方法(生前贈与や生命保険の活用)

相続税は、税額控除を活用することで軽減できます。税額控除は次の6種類あり、申告の際に漏れなく適用しましょう。

  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 贈与税額控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

また、生前贈与を活用して相続税を軽減できることもあります。例えば、暦年贈与によって遺産総額を少しずつ減らしておくことで、相続税の軽減が可能です。暦年贈与とは、年間110万円までの贈与税の基礎控除額を利用して、毎年少しずつ生前贈与する方法のことです。ただし、死亡前の7年間に行われた贈与は、相続財産に加算されるため注意しましょう。

そのほかにも、生命保険を活用することで相続税の軽減が可能です。生命保険金はみなし相続財産ですが、「500万円×法定相続人の数」までは、一定の条件の下に非課税とされているため、その範囲内で生命保険に加入して掛け金を支払うのもよいでしょう。

相続紛争解決のご相談は、下記のとおりお電話かメールでお申込みください。

電話で相談受付に申し込む

0120-956-251 受付時間:平日9:00~17:00

※通話料は無料です

メールで相談受付に申し込む

ご相談受付

通常1~2営業日以内に担当の弁護士から
ご連絡させていただきます。

相続に関するトラブルとその解決策

複数の相続人で被相続人の財産を分割する際には、多くの財産欲しさに相続人の間でトラブルが発生するケースもあるでしょう。トラブルが起きたときに備えて、事前に解決策を把握しておくことが大切です。ここからは、相続に伴う代表的なトラブルと、解決するための対処法について解説します。

遺産分割の争い

遺産分割においては、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。代表的なトラブルとして以下が挙げられます。

  • 一部の相続人が遺産を独り占めしようとする
  • 一部の相続人が多額の生前贈与を受けている
  • 遺産を使い込んだ相続人がいる
  • 遺産の評価額をめぐって揉める
  • 不動産の分け方をめぐって揉める
  • 相続人の嫁が遺産分割内容に口を挟む
  • 内縁の配偶者が遺産の取得を主張する

このようなトラブルが起きたときは、なるべく関係者全員が納得するまで話し合うことが望ましいです。しかし、お金の問題となると感情的な対立に発展し、話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。

その際には、弁護士を間に入れて遺産分割協議を行うことで、冷静な話し合いによる解決も期待できます。任意交渉による歩み寄りが難しい場合は、家庭裁判所における調停または審判で解決を図ることもできます。

このように遺産分割では、さまざまなトラブルに発展する可能性があります。こうしたトラブルに対応するために、遺産分割について知識を深めておくことが大切です。以下で遺産分割について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

遺産分割

遺言書がない場合の対策

先述した通り、遺言書がない場合は、法定相続人で遺産分割協議を行う必要がありますが、遺産を巡ってトラブルに発展するケースもあります。話し合いでまとまらない場合は、法定相続分に従って分割するとよいでしょう。先述した通り、民法で、法定相続分が定められています。

例えば、配偶者と子ども1人で相続する場合は、配偶者と子どもでそれぞれ2分の1ずつ分割して受け取ることが可能です。このように法定相続分に従って分割すれば、遺産を巡ったトラブルを回避できる可能性があります。ただし、法定相続分はあくまで割合を示しているため、自身が欲しい財産を必ずしも受け取れるわけではありません。

相続放棄の方法と注意点

相続トラブルに巻き込まれたくない場合は、相続放棄をすることも選択肢の1つです。相続放棄をすると、はじめから相続人にならなかったものとみなされるため、遺産分割協議から脱退できます。

ただし、相続放棄をするためには相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述しなければなりません。申述が受理されると、一切の遺産を受け取れないため慎重に決定しましょう。

なお、家庭裁判所への申述が、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行われてない場合は、原則としてプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続されます。どうしても間に合わない場合は、家庭裁判所に申し立てれば、期間を伸ばすことが可能です。期間を延ばす方法について、詳しくは以下を参考にしてください。

相続の承認・放棄とは

専門家(弁護士や税理士)に依頼するタイミング

相続問題で困ったときは、弁護士や税理士といった専門家への相談がおすすめです。専門家へ依頼するタイミングは、早ければ早いほど望ましいといえます。

遺産分割でトラブルに発展した場合には、なるべく、感情的な対立がエスカレートする前に弁護士へ依頼した方がよいでしょう。感情的に激しく対立してしまうと調停や審判を申し立てなければ解決が難しくなります。対立し始めた段階であれば、弁護士を通じた、任意の話し合いで解決できる可能性も高いです。

普段から親族間の仲が悪いような場合は、相続開始後すぐに弁護士へ相談しておくことをおすすめします。

また、税理士への依頼も早いほど望ましいです。相続開始後、遺産総額を簡単に見積もってみて、相続税がかかる可能性がある場合は相談しておきましょう。早い段階で相談した方が相続税の節税対策に関する選択肢の幅が広がります。相続税の申告期限間近になって税理士に依頼しても、申告が間に合わない可能性があるため、早めに相談しておくとよいでしょう。

相続放棄とは?そのメリットと注意点

先述した通り、相続放棄とは相続人としての権利義務の一切を放棄することです。プラス・マイナスを問わず一切の財産を取得しません。ここからは、相続放棄を行うメリットや注意点を詳しく解説します。

相続放棄の具体的手続き

先述した通り、相続放棄をするには相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所で申述の手続きを行う必要があります。申述する場所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申述する際は、「相続放棄の申述書」を作成して800円分の収入印紙を貼り、戸籍謄本や住民票などの必要書類を同封して家庭裁判所の窓口に提出するもしくは郵送します。その際には、連絡用の郵便切手の提出も必要です。郵便切手の種類や組み合わせについては、事前に申述先の家庭裁判所でご確認ください。

申述書を家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所から「相続放棄に関する照会書」が送付されるため、回答を記載して返送します。問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この通知書が届けば、相続放棄が認められたことになるため手続きは完了です。

相続放棄する際のメリットとデメリット

相続放棄には、メリット・デメリットがあります。それぞれを理解しておかなければ、プラスの財産があるのに相続放棄してしまったり、マイナスの財産が多いのに相続してしまったりするなど、損をしてしまう可能性があります。

相続放棄のメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット

・借金などマイナス財産の相続を回避できる
・プラス財産でも不要な財産の相続を回避できる
・相続トラブルに巻き込まれないで済む
・特定の相続人に相続分を集中させられる

デメリット

・プラスの財産も一切受け取れない
・相続放棄の申述が受理されたあとは撤回できない
・事案の内容によっては申述の手続きが複雑なことがある
・相続税の計算において、生命保険金や死亡退職金の非課税枠を使用できない
・相続権が次順位の人に移行するため、他の相続人が知らない間にマイナス財産を相続することがある

遺産がプラスの状態であっても、相続するかはメリット・デメリットを考慮して十分に検討しましょう。相続放棄するのならば、一定の期間内に行う必要があります。期間内に手続きが行えずに相続放棄が認められないといった事態になる可能性もあります。相続放棄を行うまでの期間については、以下で詳しく解説しているため、参考にしてください。

相続の承認・放棄とは

遺言書の種類

遺言書には、以下のような種類があります。

  • 自筆証書遺言…遺言者自身が本文を手書きして作成する遺言書
  • 公正証書遺言…公証人が遺言者から遺言内容を聞き取って作成する遺言書
  • 秘密証書遺言…遺言者が作成し、その内容を秘密にしたまま、公証役場でその存在について認証を受けた遺言書

実務上、秘密証書遺言が作成されるケースは少なく、自筆証書遺言または公正証書遺言が作成されるケースが一般的です。自筆証書遺言にて作成している場合、自宅内や貸金庫で自筆の遺言書が見当たらない際には、法務局に保管されている可能性もあります。法務局から通知がない場合は、最寄りの法務局で「遺言書保管事実証明書」の交付を申請すれば確認することが可能です。

また、公正証書遺言に関しては、最寄りの公証役場に連絡を取って必要書類を持参し、遺言書の有無を確認しましょう。

なお、自筆証書遺言または秘密証書遺言を見つけた場合は、開封する前に家庭裁判所で検認の手続きをとる必要があるため注意が必要です。(法務局で保管している自筆証書遺言の場合、検認は不要です。)

また、遺言書の偽造や変造、破棄、隠匿などを行うと相続欠格に該当するため、相続権を剥奪されます。遺言書を見つけたら、適正に取り扱わなければなりません。

まとめ

親族の方が亡くなったら、まずは死亡届を提出するとともに、遺言書の有無を確認しましょう。それから遺産相続のために、相続人の調査と相続財産の調査・評価を行う必要があります。そして、相続するか相続放棄するかを検討し、相続する場合、遺言書があれば遺言書の内容に従い、遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。

また、遺産総額が基礎控除額を超える場合には、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。これらの相続手続きについて、疑問や不安があれば弁護士や税理士に相談し、必要に応じてサポートを受けることをおすすめします。

「朝日中央綜合法律事務所」では、相続や遺産分割などに関する多くの実績とノウハウを持つ弁護士事務所です。相続問題でお困りの方は、ぜひ朝日中央綜合法律事務所にお気軽にご相談ください。

その他の相続に関連する記事

相続の事前準備について

弁護士法人朝日中央綜合法律事務所ロゴ
この記事の執筆
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は遺産分割紛争、遺留分紛争、遺言無効紛争などの相続紛争の解決実績は2018年以降、1,901件(内訳:遺産分割紛争687件、遺留分紛争94件、その他遺産相続紛争1,120件)にのぼり、多くの依頼者から信頼を獲得しています。