相続問題の専門知識

遺産分割

遺産分割審判前の保全処分・調停前の処分

遺産分割審判前の保全処分

遺産分割が完了するまでに、遺産を事実上管理している相続人が、遺産を隠匿したり処分したりしてしまうケースがあります。隠匿や処分を放置しておいたのでは、せっかく遺産分割審判を経ても、その時点では分割すべき遺産が存在しないという事態にもなりかねません。

このような事態を防ぐ方法として、家事事件手続法では、遺産分割審判前の保全処分を定めています(家事事件手続法105条1項)。

1. 保全処分の種類

保全処分の種類としては、仮差押え、仮処分、財産の管理者の選任その他の必要な処分が規定されています。具体的には、財産管理者選任の仮処分によって管理者を定め、その管理者が遺産の管理を行う、不動産処分禁止の仮処分や不動産占有移転禁止の仮処分によって不動産の処分や移転を防止する、建物の増改築禁止の仮処分によって建物の現状を維持する、預金債権の仮差押えによって預金の引き出しや移転を防止する、というような手段が考えられます。

2. 保全処分の申立て時期

遺産分割審判前の保全処分は、本案の家事審判事件(家事審判事件に係る事項について家事調停の申立てがあった場合にあっては、その家事調停事件)が開始された以降でなければ申し立てることができません。

調停前の処分

遺産分割が完了するまでに、遺産を事実上管理している相続人が、遺産を隠匿したり処分したりしてしまうケースがあります。隠匿や処分を放置しておいたのでは、せっかく遺産分割審判を経ても、その時点では分割すべき遺産が存在しないという事態にもなりかねません。

このような事態を防ぐ方法として、家事事件手続法では、調停前の処分を定めています(家事事件手続法266条1項)。

1. 調停前の処分の例

調停委員会は、調停前に、調停のために必要であると認める処分を命じることができます。この調停前の処分の内容は法定されておらず、調停委員会の裁量に委ねられています。たとえば、不動産の処分や移転の禁止、現金の一定場所への保管、建物の増改築禁止、一部の相続人による債権取立ての禁止等の処分が考えられます。

2. 調停前の処分の申立て時期

調停前の処分は、遺産分割調停手続が開始された以降でなければ行われません。

3. 調停前の処分の限界

調停前の処分は、執行力を有しないとされています。調停前の処分として一定の禁止事項が定められたにもかかわらず、これに違反した場合、違反状態の排除や回復を強制することはできず、行政罰(過料)が下されるにとどまります。

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この記事の執筆
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
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