相続問題の専門知識

遺言書作成

公正証書遺言について

公正証書遺言について

1. 公正証書遺言の要件

公正証書遺言は、

  1. 証人2名以上の立会いがあること
  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、 これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
  4. 遺言者及び証人が公証人の筆記の正確なことを承認した後、 各自署名、 押印すること
  5. 公証人が適式な手続に従って公正証書を作成したことを付記して、 これに署名、 押印すること

によって作成される遺言です。

2. 公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は、法律の実務に精通した公証人の関与の下作成される遺言です。証人2人以上の立会いが必要で、公証人は遺言者の指示に基づき作成した遺言を遺言者に読み聞かせ、又は閲覧させ確認する方法により公正証書遺言を作成します。

公正証書遺言が作成されると、その原本は、作成の日から20年以上(通常、遺言者が140歳になるまで)保管されます。遺言者は、遺言者、証人及び公証人が署名、捺印した原本の写しである正本、謄本の交付を受けることができます。 遺言者の死後、家庭裁判所における検認手続は不要です。

なお、公正証書遺言では、公証人が遺言者の署名を代筆することができますので、手指が不自由で署名できない方でも公正証書遺言であれば作成が可能になります。

3. 公正証書遺言作成に必要な書類

公正証書という公文書の作成手続上、遺言者ほか遺言関係者及び遺言事項を特定するための以下のような資料、書類が必要となります。

  1. 遺言者の戸籍謄本
  2. 遺言者の印鑑登録証明書と実印
  3. 証人の住民票の写しと認印
  4. 財産をわたす方の戸籍謄本(法定相続人の場合)
  5. 財産をわたす方の住民票の写し(法定相続人以外の方の場合)
  6. 遺言執行者の住民票の写し
  7. 不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書(又は固定資産税納税通知書添付の課税明細書等)
  8. 通帳や証券会社の残高報告書の写し(金融資産の概要を記載したメモでも代替可能)
  9. 遺言書の原案

等が必要となります。

1、2は遺言者の特定と同一性の確認のため、3ないし6は遺言関係者の特定のため、7、8、9は遺言内容の特定のために必要となります。遺言の内容によっては、上記以外の書類が必要となることがありますので、公証人に事前に確認を行う必要があります。

4. 公正証書作成費用

公正証書遺言作成のために公証人に支払う費用は、遺言の目的たる財産の価額に対応する形で、下記のとおり定められています。

目的財産の価額:手数料の額
100万円まで:5,000円
200万円まで:7,000円
500万円まで:11,000円
1,000万円まで:17,000円
3,000万円まで:23,000円
5,000万円まで:29,000円
1億円まで:43,000円

1億円を超える部分については
1億円を超え3億円まで:5,000万円毎に 1万3,000円
3億円を超え10億円まで:5,000万円毎に 1万1,000円
10億円を超える部分:5,000万円毎に 8,000円

がそれぞれ加算されます。

上記の基準を前提として、次の方法で基本手数料が決定されます。

  1. 遺言により渡す財産を金銭評価します。
  2. 遺言により財産をわたす相続人又は受遺者(遺贈を受ける人)ごとに、渡す財産の金額を算出し、上記表の手数料額を求めます。
  3. 2により算出された各相続人、受遺者の手数料額を合算した金額が、公証人の基本手数料となります。遺言加算といって、全体の財産が1億円以下のときは、上記によって算出された基本手数料額に、1万1,000円が加算されます。

総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、基本手数料4万3,000円+総財産額1億円以下の加算1万1,000円の合計54,000円となります。妻に6,000万円、長男に4,000万円の財産を相続させる場合には、妻の基本手数料は4万3,000円、長男の基本手数料は2万9,000円となり、さらに総財産額1億円以下の加算1万1,000円を加えて、その合計額は8万3,000円となります。

さらに、遺言書は、通常、原本、正本、謄本を各1部作成し、原本は法律に基づき役場で保管し、正本と謄本は遺言者に交付しますが、原本についてはその枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算され、また、正本と謄本の交付にも1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。

遺言者が病気又は高齢等のために体力が弱り公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、ご自宅、老人ホーム等に赴いて公正証書を作成する場合には、上記の基本手数料が50%加算されるほか、公証人の日当(4時間以内1万円、1日2万円)と、現地までの交通費がかかります。

次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1,000円です。作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。

5. 証人費用

証人2名を自分で見つけることができない場合は、公証役場に証人を紹介してもらうことができます。この場合、証人への謝礼として、1人につき5,000円から1万円の費用が必要となります。

6. 自宅・病院等の公証役場以外の場所での公正証書遺言等の作成

公正証書遺言の作成や秘密証書遺言の封入には公証人の立会いが必要となるため、通常は遺言者の住所地を管轄する公証人役場に、遺言者及び証人が出向いて、遺言の作成ないし封入の手続がなされます。

このように公証人は、原則として公証人役場で職務を行うこととされていますが、遺言の作成の場合には出張が認められています(公証人法57条)。そのため、公証人が遺言者の自宅や入院先の病院等に出張して、公正証書遺言の作成や秘密証書遺言の封入に立ち会うことが可能です。もっともその場合、本来の公証人費用とは別に、出張費用や日当が加算されますので、事前に公証人役場に確認するとよいでしょう。

7. 公正証書遺言の長所と短所

以上のような公正証書遺言の長所と短所をまとめると次のとおりです。

長所

  1. 公証人が作成する遺言書ですので、法律が求める要件を満たし、また、遺言の内容が明確になります。
  2. 公証人に加え証人も参加して作成するので、本人の真意で作成されたものであることの保証があります。
  3. 作成された遺言書は公証役場で保管されるため、偽造・変造・紛失などの心配がありません。
  4. 検索システムがあり、遺言者の死後発見されないということはありません。
  5. 遺言者の死後、家庭裁判所での検認をする必要はなく、相続発生後ただちに遺言書を使って相続手続を進めることができます。

短所

  1. 2名以上の証人の立会いが必要です。
  2. 公正証書作成費用がかかります。

相続時のトラブルを防止するためには、費用が若干かかっても、自筆証書遺言より公正証書遺言の方をお勧めいたします。そして、当事務所の弁護士には、数多くの公正証書遺言書作成のお手伝いをした経験がございます。

公正証書遺言を検討している方は、当事務所にお問い合わせください。

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この記事の執筆
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は遺産分割紛争、遺留分紛争、遺言無効紛争などの相続紛争の解決実績は2018年以降、1,695件(内訳:遺産分割紛争635件、遺留分紛争89件、その他遺産相続紛争971件)にのぼり、多くの依頼者から信頼を獲得しています。