遺産相続レポート
葬儀と相続
2017.10.23
こんにちは。今回は、葬儀費用と相続との関係についてお話します。
人が一人亡くなると多くの人に影響を及ぼします。遺産分割の協議や遺言の執行など、様々なことを残された人達で行わなければなりません。その中でも、亡くなってすぐに、残された人がやらなければないことが、葬儀です。
日本消費者協会の「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」/2017年>によれば、葬儀にかかる費用の総額は195.7万円とのことです。香典等の収入があっても、葬儀会社への支払いのために、通常、当座のまとまった費用が必要となります。
そういったこともあってか、相続発生後、被相続人名義の預金口座が凍結される前に、相続人がATM等で現金を引き出して葬儀費用の支払いに充てたり、被相続人自身が生前に引き出しておいた手許現金を葬儀費用の支払いに充てたりするといった方法が取られることも少なくありません。
しかし、そのような払出しにつき、他の相続人が異を唱えるといった形でトラブルになるケースがあります。 また、反対に、喪主等が自身の手持ち財産から葬儀費用を支払った後、遺産の中から清算を受けたいと主張したところ、他の相続人がこれに応じず、争いになる場合もあります。
法律上、葬儀費用は遺産から支出できるものなのでしょうか?
この点については、諸説ありますが、特段の事情のない限り喪主が葬儀費用を負担するとする裁判例があります(東京地裁昭和61年1月28日)。つまり、相続人当事者間で合意がない限り、喪主として通夜、告別式を催し、その費用を支払った者が自己の債務として全額負担するということになります。このことは、最近の裁判例でも示されています(名古屋高裁平成24年3月29日判決)。
実際には、多くの場合、事実上、遺産分割の協議や調停の中で、葬儀費用の負担なども考慮して分割割合等を合意することが多いとはいえます。しかし、紛争状態が過熱し、話合いがまとまらない場合、審判や裁判などでは遺産分割の問題と葬儀費用の負担は別のものとして判断される可能性が高いと考えられます。
有効な対策としては、遺言の中で葬儀費用の負担者や負担割合を明記しておく方法や、ご本人を契約者・被保険者とし、将来喪主を務める予定の人を受取人とする生命保険契約に加入しておく方法などがあります。特に、生命保険は、全相続人の同意が必要な預金等の解約手続に比べて、短期間で受取ができることが多く、葬儀費用の準備には向いているように思います(生命保険にはリスクや注意点もあります。詳しい内容は必ず保険会社等にご確認ください)。