遺産相続レポート

特別縁故者について

2018.09.17

特別縁故者について|遺産相続の専門的な情報

1 特別縁故者の概要

遺産を相続できる権利は、配偶者には常に認められており、それ以外に、第1順位として、子(孫)、第2順位として、親(祖父母)、第3順位として、兄弟姉妹(甥姪)に認められております。もっとも、これらの法定相続人が全くいないケースが存在しますが、そのような場合、遺産はどこにいってしまうのでしょうか。

被相続人が遺言書等を作成していれば、このような法定相続人が全く存在しないケースにおいても、遺言の中で遺産の受取人が指定されている場合には、遺言によって遺産の承継先が決定します。しかし、法定相続人が全く存在しないケースで、遺言もない場合には、誰もこの遺産をもらうことはできないのでしょうか。

 

実は、民法において、このようなケースを想定して、以下に定める基準を充たしている場合には、仮に、法定相続人に当たらない者であったとしても、「被相続人と特別な縁故があった者」(民法958条の3)として、家庭裁判所が相当と認めた場合には、相続財産の全部又は一部をその者に与えることができるとされております。

2 特別縁故者の要件

それでは、具体的にどのような要件を充たした場合、特別縁故者と認めてもらうことができるのでしょうか。

 

⑴ 被相続人と生計を同じくしていた者

    

まず、被相続人と生計を同じくしていた者、すなわち、実際は婚姻届を提出していないものの、夫婦関係同等の生活を送っていた内縁関係にあった者や、事実上の養子関係にある者、法定相続人の配偶者、認知をしていない子等がこれにあたります。

⑵ 被相続人の療養看護に努めた者

次に、被相続人の看護や介護に努めた者も特別縁故者にあたります。療養看護に努めた者は、親族に限らず広い範囲で認められています。また、個人だけではなく法人でも認められる場合があります。

⑶ その他被相続人と特別の縁故があった者

   

最後に、字義通り,「その他被相続人と特別な縁故があった者」も,特別縁故者に該当するとされています。裁判例上、「生計同一者、療養看護者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な交渉があり、相続財産の全部又はその一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係にあった者」をいうと定義されていますが、結局のところは、個々の事案に応じて判断されることになります。

3 特別縁故者に選定されるまでの流れ

特別縁故者の要件を充たしている人が家庭裁判所に申立てをしても、すぐに特別縁故者としての認定を受けられるわけではありません。実際に遺産を受け取るまでには、次のような手続きが必要になります。

(イ)相続財産管理人の選任

(ロ)相続財産管理人による相続人の捜索

(ハ)特別縁故者による相続財産分与の申し立て

(ニ)特別縁故者の認定

4 まとめ

特別縁故者が遺産を受け取るための一連の手続きは、家庭裁判所への申立てや相続財産管理人とのやりとりが必要になります。また、単に、特別縁故者の申立てをするだけでなく、自分が特別縁故者にあたり得ることを、過去の裁判例も参照しながら、具体的かつ詳細に述べることが必要になります。そのため、ご自身が特別縁故者にあたる可能性があるとお考えの方は、弁護士などの法律の専門家に相談することをお勧めします。

このレポート執筆の弁護士

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