遺産相続レポート

渉外相続について

2018.09.24

渉外相続について|遺産相続の専門的な情報

1 国際裁判管轄

被相続人が在日外国人の場合、被相続人が日本人の場合と同様に、日本において相続手続を行うことはできるのでしょうか。 在日外国人の相続手続を日本で行うにあたっては、日本の裁判所において当該相続案件を扱うことができるという「国際裁判管轄」があることが大前提となります。すなわち、日本に国際裁判管轄が認められて初めて、日本の国際私法に基づき、当該相続案件を解決するにあたり、どこの国の法が適用できるかという結論を導くことができるのです。

国際裁判管轄が認められた国を「法廷地」といいますが、法廷地が決定した場合には、法廷地の国際私法のみが適用され、他の国・地域の国際私法を選択することはできません。 在日外国人の相続・遺言関係事件に関する国際裁判管轄権については、明文の規定はありませんが、被相続人の死亡当時の住所地国又は遺産所在地国の裁判所に管轄があると解されております。そのため、日本国籍を有しない外国人であっても、日本に財産を遺して死亡した場合、当該外国人の相続人は、日本の家庭裁判所にて、遺産分割の調停や審判等を行うことができます。

このように、日本の家庭裁判所にて遺産分割手続を行うことができるとしても、相続人の範囲、順位、相続分、寄与分、遺留分といった相続に関する諸問題を日本法に基づいて処理できるか否か、いわゆる準拠法の問題は別個に検討することが必要です。

2 準拠法

   

国際裁判管轄があるとなれば、どこの国の法が適用されるのかを規定するのが国際私法ですが、日本の国際私法、相続関連の法令としては、「法の適用に関する通則法」、「遺言の方式の準拠法に関する法律」などが存在します。

3 反致

   

国際裁判管轄が、例えば、日本と中国のいずれにも認められる場合、日本の国際私法によれば、中国法が準拠法とされ、中国の国際私法によれば日本法が準拠法となる場合があります。

このように、法廷地(日本)の国際私法(法の適用に関する通則法)が指定した準拠法所属国(中国)の国際私法規定が、法廷地法(日本法)を準拠法として指定している場合には、当該法廷地法(日本法)を準拠法とするような取扱いを「反致」といい、法の適用に関する通則法第41条において、「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」とし、この反致の取扱いが規定されています。

4 先決問題

   

相続は、被相続人の本国法によりますが(法の適用に関する通則法第36条)、法定相続人を確定するにあたり、被相続人と配偶者の婚姻関係や親子関係が有効に成立している否かについては、相続に先立って、解決されるべき独立した法律関係であり、先決問題と呼ばれています。この先決問題がいかなる準拠法によって解決されるかについては、法令の規定がありませんが、法廷地の国際私法によって定める準拠法によって解決すべきとするのが通説です。

5 まとめ

   

在日外国人の相続問題や海外に遺産が存在する場合には、まず、国際裁判管轄の問題や準拠法の問題を検討することが必要となります。そして、これらの点を的確に判断するためには専門的な知見が必要となりますので、上記のような渉外相続問題でお悩みの方は、一度、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

  
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この記事の執筆
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は遺産分割紛争、遺留分紛争、遺言無効紛争などの相続紛争の解決実績は2018年以降、1,695件(内訳:遺産分割紛争635件、遺留分紛争89件、その他遺産相続紛争971件)にのぼり、多くの依頼者から信頼を獲得しています。

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