相続問題の専門知識
遺産の名義変更
その他の遺産の名義変更手続き
その他の遺産の名義変更手続きについて
これまで、遺産として代表的な、不動産、預貯金、有価証券、生命保険について、相続が生じた場合の名義変更手続きをご案内しました。 これら以外にも、被相続人の遺産となる財産があります。以下では、その名義変更手続きについてご紹介します。
1. 被相続人が死亡した時点で支払われていない債務が残っていました。債務はどのように相続されるのでしょうか。
A. 相続手続きにおいては、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続対象の財産(遺産)となります。 通常、債務については、相続と同時に、法定相続分にしたがって各相続人に分割して相続されると考えられています。 つまり、被相続人の債務のうち、自身の法定相続割合に相当する部分については当然に承継されるのが原則となります。 しかし、不動産を担保とした借入れや被相続人が生前行っていた事業に関する借入れが残存している場合などは、当該不動産や事業を承継する相続人が借入れをともに承継するのが自然です。 したがって、実務上の運用では債権者(金融機関など)との協議のうえ、不動産や事業を承継する相続人がそれに伴う債務も全て相続するなど、上記法律上の見解とは異なる割合で債務を相続するケースも一般的にみられます。
また、遺言や遺産分割協議書の中で、債務の承継方法について記載がある場合、その記載に従って債務を相続するのが通常です。債権者も、遺言や遺産分割協議書の中に債務の承継方法について記載がある場合は、その割合での負担に同意するケースが多いようです。(但し、債権者の同意がない限り、法定相続人のみの合意により、一部の相続人が債務を免れることはできません。)
具体的な手続きについては、債権者との協議となると思われますので、債権者に連絡をとり、ご確認ください。
2. 被相続人が、貸金庫を借りていたようです。相続にあたってどのような手続きが必要ですか。
A. 被相続人が貸金庫を借りていた場合、死亡により契約は終了し、解約手続きを行うのが通常です。 具体的な手続き及び必要書類については、預貯金の解約と同様となりますので、「具体的な預貯金の解約手続き」をご参照ください。
貸金庫解約手続きの特徴として、解約の際に開扉手続き(貸金庫を開け、中身を移動する手続き)が必要となります。 貸金庫開扉手続きにおいては、通常、相続人の立ち会いが求められます。貸金庫には、土地の権利証や通帳等の重要書類や現金が入っていることが多いため、相続人の一部のみしか立ち会わなかったような場合などは、他の相続人との間でトラブルが生じるケースもあります。
一部の相続人のみによる貸金庫の開扉手続きが可能かどうかは、金融機関の判断によって異なりますが、貸金庫の開扉手続きの際は、できる限り相続人全員での立ち会いが望ましいと思われます。
3. 被相続人が所有していた家財道具や貴金属等、家の中にある動産類の相続にあたっては、どのような手続きが必要ですか。
A. 家の中にある動産類も、被相続人の所有物は全て相続財産(遺産)となります。 したがって、原則として、遺言や遺産分割協議書に基づいて、相続人及び受遺者に分配することとなります。 遺言や遺産分割協議において、高価な動産(例えば、美術品や貴金属等)については具体的に明記する場合もありますが、家財道具等あらゆる動産を遺言や遺産分割協議書の中で列挙するのは大変困難です。 これらの家財道具は、まとめて一人が相続したうえで、改めて、相続人をはじめとする親族間で、いわゆる「形見分け」の形で分配するのが通常です。
4. 被相続人が所有していた自動車や船舶について、名義変更するにはどのような手続きが必要ですか。
A. Q3のとおり、動産については、遺言や遺産分割協議書に個別具体的に明記せず、いわゆる「形見分け」を行って事実上分配することも少なくありません。 しかし、動産の中でも、自動車や船舶等は、登録制度がとられているため、不動産登記の名義変更と同様の手続きが必要となります。
自動車の場合は陸運局、小型船舶の場合は日本小型船舶検査機構、大型船舶の場合は国土交通省にて名義変更手続きを行うことになります。
具体的な手続き、必要書類については、各機関にご確認ください。
5. 被相続人の財産が海外にあります。名義変更にはどのような手続きが必要ですか。
A. 海外にある財産を、「在外財産」といいます。在外財産の名義変更手続きについては、財産が存在する地域、財産の種類(不動産、預貯金、その他)、手続きに適用される法律はどの国の法律なのか、といった点によって、手続きが大きく異なってきます。 したがって、在外財産の名義変更については、弁護士等専門家のアドバイスを受けられることをお勧めします。
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