相続問題の専門知識

相続税

相続税の課税価格計算で差し引くことのできる債務金額と葬式費用

8. 相続税の課税価格の計算で、取得した財産の価額から差し引くことができる債務の金額と葬式費用にはどのようなものがありますか

相続又は遺贈により財産を取得した一定の者(下記(1)参照)については、その者に係る相続税の課税価格の計算上、相続又は遺贈により取得した財産の価額(相続時精算課税の適用を受ける場合は、相続時精算課税適用財産の価額を含む。以下同じ。)から被相続人の債務と被相続人に係る葬式費用のうちその者の負担に属する部分の金額が差し引かれます。

これを債務控除といいますが、差し引くことができる債務・葬式費用としては、下記(2)のようなものが挙げられます。

(1) 債務・葬式費用を差し引くことができる者

相続又は遺贈により取得した財産の価額から被相続人の債務・葬式費用を差し引くことができるのは、相続人・包括受遺者でその債務・葬式費用を負担するものです。 ただし、その者が制限納税義務者(「相続税のかかる人と課税される財産の範囲の(3)」参照。)又は特定納税義務者(「相続税のかかる人と課税される財産の範囲の(4)」参照)で相続開始時において日本国内に住所を有しないものである場合には、債務のうち下記(2)の2に掲げるものしか差し引くことができません(その場合、葬式費用を差し引くことはできません)。

(2) 差し引くことができる債務・葬式費用

相続又は遺贈により財産を取得した相続人・包括受遺者は、次の1又は2の納税義務者区分に応じ、それぞれのものを差し引くことができます。

なお、納税義務者の区分については、「相続税はどのような人に課税される税金か」をご覧下さい。

1. 居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者又は特定納税義務者で相続開始時において日本国内に住所を有するもの

これらの者は、下記イとロに掲げるものを差し引くことができます。

  1. 被相続人の債務で相続開始の際、現に存するもの
    例)未納公租公課、未払医療費、銀行借入金等
  2. 被相続人に係る葬式費用
    例)葬儀(通夜・本葬等)・火葬・埋葬・納骨に係る費用及び付随費用(飲食代等)、遺体運搬費用、お寺へのお布施・読経料・戒名代

2. 制限納税義務者又は特定納税義務者で相続開始時において日本国内に住所を有しないもの

これらの者は、下記のイ~ホに掲げるものしか、差し引くことができません。

  1. その者が取得した財産に係る公租公課
  2. その者が取得した財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
  3. 上記イ~ロを除く、その財産の取得、維持又は管理のために生じた債務
  4. その財産に関する贈与の義務
  5. 上記イ~ニを除き、被相続人が死亡の際日本国内に営業所又は事業所を有していた場合には、その営業上又は事業上の債務
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弁護士法人朝日中央総合法律事務所
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