相続問題の専門知識
遺産分割
遺産分割審判をうまく進めるために大切なこと
遺産分割審判をうまく進めるために大切なこと
1. 作戦立案能力の重要性
遺産分割審判を有利に運ぶためには、作戦立案能力が極めて重要となります。まず最初に、目指すべき着地点に向けて、どのような筋道を辿るべきなのか、ベストな作戦を立てなければなりません。
ただし、ベストな作戦を立てるためには、常日頃から幅広い関係法令に精通し、数多の裁判例を分析していなければなりません。また、相手方の出方を何手も先まで予測し、有利に事を進められるよう、法的知識に限らず、あらゆる方面での研鑽を積んでおくことが必要不可欠です。
そうでなければ、行き当たりばったりの対処に終始し、闇雲に時間と費用を無駄にしてしまうことになり、クライアントの正当な権利を実現することができないのです。
たとえば、遺産分割審判においては、厳密な意味で、遺産の範囲の確定が必要となります。ある財産が遺産に含まれるか否かという問題は、遺産分割審判ではなく、通常の民事訴訟によって確定的に決せられるものとされているからです。
そこで、実務上は、調停や審判手続の進行中であっても、遺産の範囲についての争いが根深く複雑である場合は、その問題について遺産分割審判とは別途民事訴訟を提起させ、民事訴訟の結果が出るまでは、遺産分割をしない旨の審判(遺産分割禁止の審判)をしておくという方法もとられるところです。
また、遺産分割の協議の時点で、遺産の範囲についての争いが既に顕著な場合には、遺産分割調停や審判の申立を留保して、まずその争いのある点について、民事訴訟を提起するという方法を選択することも有用です(例えば、ある財産が遺産であることの確認の訴えや、ある財産の所有権が特定の相続人にあることの確認の訴え等。)。
本丸である遺産分割審判を後回しにして、個々の争点についてひとつひとつ民事訴訟で決着をつけることを優先した方がかえって解決が早いという場合が多々あります。
2. ワンストップチームを構成できる組織であることの重要性
審判官が適正な遺産分割審判を出すためには、個々の遺産の評価を明らかにする必要があります。遺産の評価において特に問題になりやすい財産としては、たとえば不動産や非上場株式が挙げられますが、不動産や非上場株式の評価方法について当事者間で合意が形成できない場合には、原則として、不動産は不動産鑑定士、非上場株式は公認会計士による客観的な評価を行う必要があります。
このように、遺産分割審判等の紛争案件の実務では、弁護士のみで解決できない場面が多々あります。特に遺産分割審判との関係では、不動産鑑定士、公認会計士だけでなく、税理士、司法書士その他の専門家との「連携」が極めて重要となります。ここでいう「連携」とは、個々の局面で個々の専門家に丸投げすることではありません。あらゆる局面において、各専門家の知見を組み合わせながら、ひとつの事件に総力をもって取組むことが、真の「連携」と呼べるのです。
そのためには、ひとつのグループ内でチームを構成し、各専門家が互いに意見を交換しながら、膨大な資料を共有し、チーム一丸となって検証を繰り返すことができる体制をあらかじめ構築しておくことが重要です。
3. 弁護士が高度な能力を有していることの重要性
相続紛争をリードすべき弁護士は、主要な争点を見極め、その争点の主張立証を迅速かつ集中的に行っていかなければ、早期の解決はあり得ません。
特に相続紛争においては、審判の段階になっても各相続人の言い分が激しくぶつかり合うため、ともすると水掛け論に火が付き、お互いの誹謗中傷合戦が過熱してしまい、本質的な争点を見失って迷走する事態になることが多々あります。
本質的な争点を常に見失うことなく、一回一回の期日で繰り広げられる相手方との激しい交渉を優位に進めるには、事案を広く深く把握し、持てる知識と経験を総動員し、瞬時に対応することが求められます。
また、期日対応のみならず、裁判所に提出する書面でも、審判官の心証を強烈に引き寄せることが必要です。 そのためには、弁護士個人が常日頃から研鑽を重ね、また多数の経験と実績を積み、高度な能力を培っていることが極めて重要です。
相続問題の専門知識