被相続人の金銭債務その他の可分債務は、 法律上当然分割され、 各共同相続人が その相続分に応じてこれを承継します。 債務については、 遺産分割の前提となる共 有又は準共有という法律関係が存在しませんから、 原則として、 遺産分割の対象と ならないというほかありません。 また、 当事者の同意があっても、 これを分割の対 象とすることは、 債権者との関係を調整しなければならないので許されません。
ただし、 積極財産の分割に当たり考慮を要する消極財産であって、 その負担者を 定めることが相当と認められる場合があります。 例えば、 遺産である土地建物に住 宅ローンが設定され、 住宅ローンが残った状態で相続が開始した場合、 当該土地建 物を取得することになった相続人に住宅ローンを全て負担させるのが相当なときが あります。 このような場合、 債権者の同意を得た上、 当事者全員の同意があれば、 遺産分割とは異なる債権者及び全相続人の合意の効果 (債務の免責的引受) として、 相続人の一部に負担させることが合理的であると考えられます。
相続債務が性質上また契約上不可分である場合には、 相続によって債務者が複数 になった場合にも不可分債務に関する民法 430 条の適用があり、 相続債権者は分割 前に共同相続人に対して、 債権の全額について履行を求めることができます(民法 436 条)。
相続債務が性質上また契約上不可分である場合には、 相続によって債務者が複数 になった場合にも不可分債務に関する民法 430 条の適用があり、 相続債権者は分割 前に共同相続人に対して、 債権の全額について履行を求めることができます(民法 436 条)。