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所有権確認請求事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
1

所有権確認請求事例

(1)

事案の概要

被相続人 X の死亡後、 X の子である A、 B、 C の三名の間で、 X 名義の土地 (以下、 本件土地といいます) を含む X の遺産をめぐり、 遺産分割審判手続が行われました。 この手続の中で、 B は、 本件土地を X の遺産であるとして、 本件土地も含めた遺産分 割を求めましたが、 A は、 本件土地が X の遺産ではなく、 A の固有財産であるとの主張をしました。
なお、 C は、 A の主張を認め、 本件土地を除く X の遺産を基に、 遺産分割の審判を求める意向でした。
(2)

解決

A は、 B・C を被告として、 管轄地方裁判所に対し、 本件土地の所有権が A に属すると の確認を求めて、 訴えを提起しました。
この訴えの審理中、 家庭裁判所における遺産分割手続は事実上中断されましたが、 地 方裁判所における審理の結果、 A の主張が認められ、 本件土地の所有権が A に属する旨 の判決を得ることに至りました。
この判決が確定後、 X の遺産について、 遺産分割審判手続が再開され、 本件土地を除 いた X の遺産について、 審判がなされました。
(3)

コメント

本件の場合、 C のみならず、 B も A の主張を認めていたのであれば、 本件土地は X の遺産ではないことを遺産分割審判手続の中で所与の前提として、 遺産分割審理を行うこともできます。
しかし、 本件では、 B が本件土地を X の遺産であると主張しています。 しかも、 審判 手続においてなされたこのような前提事項に関する判断には既判力が生じないとされて います。 そのため、 これを争う A または B は、 別に民事訴訟を提起してこの前提たる権 利関係の確定を求めることは妨げられないのです。
そうすると、 遺産分割の前提である遺産の範囲について相続人間に争いがある場合、 遺産分割審判手続を進めたところで、 その後、 A または B から改めて本件土地が X の遺 産であるか否かについて、 訴えが提起されるかもしれないというリスクが存在します。
そこで、 遺産の範囲について、 相続人間に争いがある場合には、 遺産の範囲を確定さ せる訴えを提起すべきです(本件の場合、B は本件土地が X の遺産であることの確認を 求める訴えを提起することができます。遺産確認の訴えについては、次の事例2を参照。)。