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遺産であることの確認請求事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
2

遺産であることの確認請求事例

(1)

事案の概要

Aの相続人X1、 X2及びY1、 Y2は、 Aの死亡後A所有の不動産について遺産分割協議 を行い、 問題なく分割を終えました。 しかし、 その後になって X1、 X2 は Y1、 Y2 が A の 危篤状態の時期に株式を売却し、 その代金を取得していることを知りました。 そこで、 X1、 X2 は、 Y1、 Y2 に対し、 上記株式は A の遺産であるとして代金の返還を求めました。
Y1、 Y2 は、 上記株式は自己の所有であると主張したため、 X1、 X2 は上記株式売却代 金が A の遺産であることの確認を求め、 訴えを地方裁判所に提起しました。
(2)

解決

X1、 X2 の主張は認められず、 本件株式はもともと Y1、 Y2 の所有であり、 したがってその売却代金も Y1、 Y2 固有の財産であると認定されました。
(3)

コメント

(イ)
本件の X1、 X2 のように、 遺産分割が終了した後であっても、 その後、 被相続人 の遺産とすべき財産の存在が判明したとして、 遺産であることの確認を求めること ができます。 これは、 その後判明した財産について、 さらに遺産分割を行う前提と してなされるものです。 したがって、 遺産確認の訴えは、 原告及び被告が共同相続 人であって、 右共同相続人間で特定財産が遺産であることにより原告が相続分に応 じた持分権を有する場合に限り認められるとされています (東京地裁昭和 62 年 2 月 23 日判決)。
(ロ)
本件においては、 株式の売却が証券会社の A 名義口座において行われていたため、 X1、 X2はY1、 Y2がAの財産を勝手に売却したものと決めつけ、 Aの遺産に属する と主張し、 その確認を求めました。
そこで、 Y1、 Y2 は、 a.本件株式を取得するために要した資金の調達方法、 b. A 名義口座を開設した理由 (Y1、 Y2 は、 知人から株式取引が増えると課税されると 聞かされ、 株式を分散させる必要があると思っていました)、 c.Y1、 Y2 は A 死亡 のかなり前から株式取引を行っていたこと、 d.Y1、 Y2 名義口座からの出金と A 名 義口座への入金が一致すること、 e.A 名義口座管理料を Y1、 Y2 が支払っているこ となどを詳細に主張し、 本件株式の売却が単に A 名義口座を利用して行われたもの にすぎないことの立証に成功しました。
(ハ)
家族間では、 名義に余りこだわらずに取引を行うことも多々ありますが、 本件の ように相続が発生した際に間違いなく自分のものであるのに故人の遺産であると、 思わぬ言いがかりをつけられる可能性もありますから、 日頃から十分配慮しておく べきでしょう。