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遺言無効確認訴訟事例

相続紛争の予防と解決マニュアル

第3

相続紛争の事例研究

集合写真
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遺言無効確認訴訟事例

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事案の概要

遺言者 A には、 別居している子 X、 Y がありました。 A は資産家であり、 多くの不動産 を所有していました。 A は、 各所有不動産について、 X に Y より多く配分する旨の公正 証書遺言 (第一遺言) を作成していました。 A は、 その後、 一旦は脳梗塞で倒れました が、 1人で外出する程度には回復していました。 しかし、 再び寝たきりとなりました。 Y は、 後日の紛争を防ぐため、 A に遺言を作成させなければならないと考え、 公証人を 手配して、 Aの自宅においてA横臥の状態で公正証書遺言 (第二遺言) を作成させまし た。 その内容は、 以前の遺言を取り消した上、 Yに多くの不動産を配分するものでした。
A死亡後、 Xは公正証書遺言が二通存在することを知り、第二遺言無効確認を求めて提 訴しました。
(2)

解決

訴訟においては、 A の第二遺言作成当時の意思能力が問題となりました。
第二遺言作成に立ち会った証人や医師の診断等から、 第二遺言作成当時、 A は老人性痴呆が進行し、 「こんにちは」 「いらっしゃい」 等の簡単な挨拶はできましたが、 それ以 外は相手の言うことに誘導されて 「はい」 と言うのみであったことが分かりました。 ま た、 第二遺言作成時においても、 公証人が遺言の内容を読み聞かせても、 同意するまで にかなりの時間を要していたことが明らかとなりました。 第二遺言の内容は、 多数の不 動産の相続に関するものであり、 隣接する数筆の土地について、 X、 Y 間で複雑な分け 方を定めている部分もありました。
裁判所は、 A は第二遺言作成当時、 この複雑な内容を理解し、 判断する能力があった とは考えられないとして、 第二遺言を無効とする判決を下しました。
(3)

コメント

高齢化社会においては老人性痴呆が増加し、 遺言の効力が争われる例も少なくありません。 遺言書の作成は、 遺言者が健康な状態で早めに済ませるべきですし、 形式も公正 証書によるべきでしょう。 自筆遺言と異なり、 公正証書であれば、 公証人が遺言者本人 と面談し、 その際に遺言者の意思能力を確認していますから遺言の無効ということは通 常起こりません。 しかし、 場合によっては、 遺言者がにこやかに公証人に接していたり、 あるいは公証人の質問が理解できないけれども理解していないことを悟られまいとして「そうです」 と答えている場合もあります。 このような場合に、 数分の面接をしただけ の公証人には、 遺言者の意思能力の有無・程度を正確に判断できないこともあります。
判例上も公正証書遺言が意思能力の欠如により無効とされた例があります (東京高裁昭 和52年10月13日判決、 大阪地裁昭和61年4月24日判決、 名古屋高裁平成5年6月 29 日判決)。