遺産相続トピックス

法定相続情報証明制度の仕組みや申請手順、メリット・注意点を解説

2025.12.08

法定相続情報証明制度の仕組みや申請手順、メリット・注意点を解説|遺産相続の専門的な情報

1.はじめに

 相続が発生すると、銀行の預金払戻しや不動産の名義変更、証券口座の解約など、さまざまな手続が必要になります。これらの手続を進めるためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍や、相続人全員の戸籍・住民票といった多くの書類をそろえ、各機関にそれぞれ提出しなければなりません。こうした手続の煩雑さを解消するために創設されたのが「法定相続情報証明制度」です。この制度を利用することで、戸籍関係書類一式の代わりに、登記所が発行する「法定相続情報一覧図(認証文付)」を提出するだけで相続手続を進めることができるようになります。2024年からはオンライン申請にも対応し、より利便性が高まっています。
 本記事では、制度の仕組みや申請手順、利用する際の注意点を、最新の実務運用を踏まえてわかりやすく解説します。

2.法定相続情報証明制度の概要

 相続が発生すると、預貯金の払戻しや不動産の登記移転など、多くの手続で被相続人(故人)の戸籍関係書類一式の提出が必要になります。従来は、銀行・法務局・証券会社など、手続先ごとに戸籍謄本や住民票などを複数部用意しなければなりませんでした。
 こうした手続の負担を軽減するため、2017年5月から「法定相続情報証明制度」が開始されました。この制度を利用すれば、戸籍関係書類一式の代わりに、登記所(法務局)が発行する「法定相続情報一覧図(認証文付)」を提出することで、相続手続を進めることができます。
 すなわち、一覧図を一度作成して登記所に提出すれば、以後の相続手続ではその写しを複数回利用できるようになるため、

  • 同じ戸籍書類を何部も取得する必要がなくなる
  • 手続の効率化・書類紛失リスクの軽減

といった利点があります。

3.手続きの流れ

1.戸籍関係書類の取得

 相続人は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本および相続人全員の戸籍謄本・住民票を取得します。
 本籍地が転籍している場合には、すべての本籍地の市区町村役場へ照会が必要となるため、取得に時間を要することもあります。

2.法定相続情報一覧図の作成

 取得した戸籍関係書類に基づき、被相続人と相続人の続柄を一覧化した「法定相続情報一覧図」を作成します。
 一覧図には、被相続人の氏名・生年月日・死亡日・最後の住所および各相続人の氏名・続柄を明記します。

3.登記所への申出

 相続人(または代理人)は、次のいずれかの登記所に対して、戸籍関係書類と法定相続情報一覧図を提出し、「一覧図の保管および写しの交付申出」を行います。
 提出先は次の4種類のいずれでも可能です。

  • 被相続人の本籍地を管轄する登記所
  • 被相続人の最後の住所地を管轄する登記所
  • 申出人(相続人)の住所地を管轄する登記所
  • 被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所

4.登記官による確認と写しの交付

 登記所の登記官が、提出された戸籍関係書類と一覧図の内容を確認し、整合性が認められると「法定相続情報一覧図」を保管します。
 その上で、認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」を交付します。
 交付手数料は無料で、複数枚の交付申請も可能です。

5.各種相続手続での利用

 以後、銀行の預金払戻しや不動産の登記移転、証券口座の解約などにおいて、戸籍関係書類の代わりにこの一覧図の写しを提出できます。
 相続税申告や年金・保険手続など、他機関での提出にも広く利用されています。

4.制度導入後の実務ポイント

(1)戸籍書類の取得は依然として必要

 制度を利用するには、まず戸籍関係書類を正確に揃える必要があり、この部分の負担は変わりません。
 特に、被相続人の本籍地が複数回変更されている場合には、過去の本籍地すべてでの戸籍取得が必要です。
 戸籍収集に1〜2か月を要するケースも少なくありません。

(2)一覧図作成の注意点

 一覧図に誤りがあると交付されませんので、相続関係を正確に読み取るためには、戸籍の記載を適切に解釈する知識が求められます。
 養子縁組・再婚・代襲相続など、複雑な家族関係がある場合は、専門家(弁護士・司法書士)に依頼するのが確実です。

(3)オンライン申請への対応

 2024年からは、法定相続情報証明制度のオンライン申請が全国で順次拡大しています。
 法務省の登記情報提供システム(登記・供託オンライン申請システム)を利用すれば、一覧図の交付申請を電子的に行うことも可能になっています。

(4)他制度との連携

  • 相続登記義務化(2024年施行)により、不動産を相続した人は3年以内に登記が必要となりました。この際も一覧図を利用することで手続を簡略化できます。
  • 預金払戻し制度や法定相続情報の電子データ共有制度(法務省・金融庁連携)が整備され、複数の銀行手続をまとめて進められるようになっています。

5.まとめ

 法定相続情報証明制度は、相続手続における書類提出の負担を大幅に軽減する便利な制度です。
 ただし、制度を利用するためには、出生から死亡までの戸籍を完全に揃える必要があり、誤記や漏れがあると申請が受理されないこともあります。
 複数の金融機関・不動産を扱う場合や相続関係が複雑な場合には、弁護士・司法書士など専門家の支援を受けながら進めることが安全です。

 当事務所では、戸籍調査・法定相続情報一覧図の作成・不動産登記・預金払戻しなど、相続手続全般をワンストップでサポートしています。お気軽にご相談ください。