遺産相続トピックス
空家等対策特別措置法とは?2024年改正のポイントと相続空き家の注意点
2025.12.09
1.はじめに
全国的に空き家が増加するなか、老朽化による倒壊や防災・衛生面での危険、景観の悪化などが社会問題化しています。
こうした状況を受けて、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家法)」は、2023年12月に改正され、2024年4月から新たな制度運用が始まりました。
本稿では、相続と関連が深い「空家法改正のポイント」と「相続した空き家を放置した場合のリスク」について、2025年12月時点の最新情報を踏まえて解説します。
2.空家等対策特別措置法の概要
(1)法律の目的
空家法は、空き家の「発生の抑制」「適正管理」「利活用」「除却」を総合的に推進することを目的としています。
市町村が主体となって、空き家の所有者に対して指導・勧告・命令を行い、必要に応じて行政代執行や固定資産税特例の解除を行うことができます。
(2)対象となる「空家等」
空家法でいう「空家等」とは、建築物またはこれに附属する工作物で、居住その他の使用がなされていないことが常態にあるものを指します。
また、使用されていない状態が長期化し、倒壊・衛生・景観などに支障をきたすおそれがある場合には、「特定空家等」として扱われ、より強い行政措置の対象になります。
3.2023年改正のポイント(2024年施行)
2023年12月に改正され、2024年4月に施工された改正空家法では、相続や地方移住など現代的課題に対応するため、次のような重要な改正が行われました。
(1)「管理不全空家」制度の新設
従来は「特定空家等」に該当するほど危険な状態にならない限り、行政の指導・勧告などの介入が困難でした。
改正後は、劣化が進行しつつある段階の空き家でも「管理不全空家」として市町村が指導・助言を行えるようになりました。
この段階で改善しなければ、将来的に「特定空家等」と判断され、固定資産税の住宅用地特例(1/6軽減)が解除されるおそれがあります。
(2)「特定空家」への措置強化
特定空家に指定された場合、市町村は次のような措置を講じることができます。
- 所有者への改善命令
- 勧告に従わない場合の固定資産税軽減措置の解除
- 行政代執行による解体・撤去(費用は所有者負担)
近年では、全国的に行政代執行の件数が増加しており、相続手続の放置によって生じた空き家が対象となる事例も目立ちます。
(3)「利活用促進区域」制度の創設
改正法では、市町村が地域の実情に応じて空き家の活用を促すための「利活用促進区域」を設定できるようになりました。
この区域では、リフォームや売却、賃貸活用を行う所有者に対して、税制優遇や補助制度が用意される場合があります。
4.相続と空き家の関係
(1)相続による所有者不明化の問題
相続登記が放置されると、空き家の所有者が特定できず、行政が対策を取れないケースが増加しています。
この問題を受け、2024年4月から相続登記が義務化され、相続により不動産を取得した人は3年以内に登記申請を行わなければなりません(改正不動産登記法第76条の2)。
怠ると過料(最大10万円)の対象となる可能性があります。
(2)相続放棄をしても管理義務は残る点に注意
相続放棄をしても、他の相続人や相続財産管理人が選任されるまでの間は、相続人に財産の管理義務が残ります(民法第940条)。
そのため、相続放棄をしたからといって空き家の放置が完全に許されるわけではありません。
(3)固定資産税の負担増加リスク
「特定空家」に認定されると、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1軽減)が解除され、税額が最大6倍に増えることがあります。
相続で取得した家屋をそのまま放置すると、思わぬ税負担が発生するおそれがあります。
5.相続した空き家への対応策
(1)売却・解体・活用の検討
空き家を放置せず、早めに対応を取ることが最善のリスク回避策です。
主な対応方法には以下のようなものがあります。
- 売却:相続登記後に不動産会社または専門家を通じて売却する。
- 解体:危険性が高い場合は解体を検討し、自治体の補助制度を活用する。
- 賃貸・リフォーム:活用可能な場合は、賃貸住宅や地域施設として利用する。
(2)相続空き家の譲渡所得特別控除
相続により取得した空き家を売却した場合、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法第35条の2)。
2024年の改正により、対象となる要件や期限が延長され、適用対象が拡大されています。
ただし、耐震基準を満たすリフォームや更地化が必要な場合があるため、事前に確認が必要です。
(3)行政支援・補助制度の活用
市区町村によっては、空き家の解体・リフォーム費用の一部を補助する制度があります。
また、空き家バンク制度を通じて移住希望者や事業者に貸し出すことで、地域活性化につながる事例も増えています。
6.まとめ
2025年現在、空き家対策は行政指導から制裁型へと変化しています。
特に相続で取得した不動産を放置した場合
- 固定資産税の大幅増
- 行政代執行による解体
- 相続登記義務違反による過料
といったリスクが現実的に生じます。
空き家の管理・活用・処分を適切に行うためには、法的・税務的な観点を踏まえた早期対応が不可欠です。
当事務所では、相続登記、相続放棄、空き家処分、税務対応などをワンストップでサポートしています。お気軽にご相談ください。







