遺産相続トピックス

遺言制度に関する改正と現在のポイント(2025年版)

2018.01.08

遺言制度に関する改正と現在のポイント(2025年版)|遺産相続の専門的な情報

1.はじめに

 従来、遺言制度において多く用いられてきたのが「自筆証書遺言」でした。これは、遺言者自身が遺言書の全文・日付・氏名を自書して押印することで効力を生じるものでした(民法第968条1項)。
しかし、自宅保管による紛失・改ざん・発見遅延などのリスクが問題視されており、制度の見直しが議論されてきました。2018年1月に法制審議会民法(相続関連)部会が「遺言制度に関する改正案」を取りまとめたのもその一環です。

 さらにその後も、実務上の信頼性を高めるための制度整備が進み、現在では「自筆証書遺言書保管制度」が導入され、遺言制度全体を見直す潮流が定着しています。
本稿では、改正案の概要を踏まえつつ、2025年現在における遺言制度の実務運用上のポイントを整理します。

2.自筆証書遺言制度の見直し

(1)自筆証書遺言の方式緩和

 従来の方式では、遺言書に添付する財産目録も「全文自書」が原則とされており、記載漏れ・誤字・形式不備等による無効化のリスクが高かったです。
 改正案では、この点について「財産目録をパソコン作成・コピー添付可」とするなどの方式緩和が提言されていました。
 現在、実務上では法務局保管制度において、こうした緩和が制度化され、目録などの添付資料は手書きでなくても認められるケースが増えています。

(2)遺言書保管制度の創設

 改正案では、遺言書の埋もれ・改ざん・破棄といったリスクに対応するため、法務局に遺言書を保管できる制度の創設が提案されました。
 その後、2020年7月10日から正式に「自筆証書遺言書保管制度」が施行され、遺言者が自筆で作成した遺言書を所定の法務局「遺言書保管所」に申請・提出することで、安全に保管できる仕組みが整備されました。
 この保管制度により、家庭裁判所での検認手続が不要となり、遺言書の発見・執行のスムーズ化が実務上において進んでいます。

3.最新の制度運用ポイント(2025年10月時点)

(1)利用対象・方式

  • 対象となるのは「自筆証書遺言」のうち、手続要件を満たしたものです。公正証書遺言・秘密証書遺言は保管制度の対象外です。
  • 遺言者本人が直接、遺言書と必要書類を持参して法務局遺言書保管所へ出向く必要があります。代理申請や郵送申請は認められていません。
  • 遺言書作成時の主な注意点:全文自書、署名・押印、年月日を具体的に記載、用紙・余白・ページ番号等形式要件。添付目録はパソコン作成可、その際も各ページに署名・押印などが求められます。

(2)メリット

  • 遺言書を法務局で保管することで、遺言書の紛失・改ざん・隠匿リスクが大幅に低減されます。
  • 遺言者死亡後、相続人は法務局から「遺言書保管証」または「遺言書情報証明書」を取得でき、遺言書の存在・内容を迅速に確認できます。
  • 保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が不要となり、相続手続きが円滑化されます。

(3)注意点・リスク

  • 保管制度を利用しても、遺言書の「内容の有効性(解釈・遺言者の遺言能力等)」までは法務局が保証するものではありません。内容に不安がある場合は専門家の助言が必要です。
  • 遺言書を提出する際、ホチキス止め・封筒封入・消せるインク使用・ページ番号記載漏れなど形式的な不備があると申請が受理されない可能性があります。
  • 遺言書保管制度を用いず自宅等で保管する場合、発見されずに遺言が執行されなかったり、改ざん・破棄されたりするリスクが残ります。

(4)実務上の留意点

  • 遺言書作成時には、財産内容・法定相続人・遺言執行者の指定・相続税や登記手続なども併せて検討することが重要です。
  • 遺言内容が複雑なケース(事業承継・不動産共有・多くの相続人がいる場合等)では、公正証書遺言の併用検討・専門家チェックが推奨されます。
  • 遺言書保管制度を利用した後も、相続登記義務化(2024年4月施行)など最新の相続関連制度との整合性を意識しておく必要があります。

4.まとめ

 遺言制度は、被相続人の意思を確実に実現し、相続トラブルを未然に防ぐための重要な手段です。
 近年、自筆証書遺言を取り巻く制度が大きく進化し、特に「自筆証書遺言書保管制度」の導入によって、安全性・実務性が格段に向上しています。
 ただし、遺言内容の妥当性・方式の適合性・関連手続きとの連携(相続税・登記・遺産分割等)を考えると、遺言作成段階から専門家に相談し、安心できるかたちで遺言を残すことが非常に重要です。

 当事務所では、遺言書の作成支援・保管手続・相続開始後の執行・紛争予防まで一貫してサポートいたします。お気軽にご相談ください。