遺産相続トピックス
配偶者居住権の概要や要件について
2021.04.14
1 はじめに
「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)は、2018年7月に成立し、その配偶者居住権に関する規定は2020年4月1日より施行されました。同制度は、以降に開始した相続に適用されます。
2025年9月現在、配偶者居住権制度はすでに実務で定着していますが、相続登記の義務化(義務化は2024年4月1日施行)など関連法令の整備も進められており、運用にあたっては注意が必要です。
2 配偶者居住権とは
⑴ 意義と制度の概要
配偶者居住権とは、被相続人が所有していた建物に相続開始時点で居住していた配偶者が、相続発生後も無償で居住し続ける権利です。所有権とは別の権利として分離され、居住権のみを取得することが可能です。
これにより、配偶者は住まいや老後資金を確保しやすくなり、相続分配の柔軟性が高まります。
⑵ 適用対象と要件
配偶者居住権は以下の相続に適用されます。
- 遺産分割によって配偶者居住権を取得することが定められた場合
- 遺言により「配偶者居住権」が遺贈された場合
- 家庭裁判所の審判で配偶者居住権の取得が認められた場合
ただし、被相続人と配偶者以外の者との共有名義であった居住建物については適用除外となります。
居住期間は原則として配偶者の死亡まで(終身)ですが、遺産分割協議や遺言で一定期間に制限することも可能です。
3 具体例(評価の分離による遺産分割のイメージ)
例:自宅(評価5,000万円)+預貯金(3,000万円)、相続人:配偶者と子
⑴ 従来
配偶者が自宅を所有権として取得すると、法定相続分(配偶者2,000万円+子2,000万円)を超えるため、代償金支払いが必要となる可能性があります。
⑵ 改正後
自宅の所有権を「配偶者居住権(価値2,000万円)」と「負担付き所有権(価値3,000万円)」に分けることができ、配偶者は居住権+預貯金2,000万円、子は所有権+預貯金1,000万円と分割できるため、配偶者の安定した居住と資金確保が容易になります。
4 配偶者居住権制度のメリット・注意点
メリット
- 配偶者は住居を取得せずとも月々の費用負担を抑えて住み続けられる
- 自宅を売却せずに住み続けながら生活資金を確保できる
- 配偶者が死亡した時点で居住権が消滅し、所有権者(他の相続人)が完全所有へ――二次的な紛争防止にも有効です。
注意点
- 譲渡・賃貸など、配偶者居住権を第三者に譲渡したり貸したりすることは禁止されています。
- その効果を法律的に確保するためには、登記が必要です。登記免許税は固定資産評価額の0.2%(2/1000)です。
- 登記しない場合、対抗要件を満たさず、第三者に対して主張できなくなる恐れがあります。
- 2025年時点で、相続登記の義務化により、不動産の相続登記を相続開始から3年以内に行わなければならず、怠ると過料の対象となります。
5 制度活用の手続きと留意点
- 遺産分割協議または遺言書作成の際に「配偶者居住権の設定」を明示する
- 必要に応じ、家庭裁判所の審判により取得を求めることも可能
- 居住権の登記を確実に行うことで、法律上も保護を受ける
- 配偶者居住権の設定後も、相続登記義務(3年以内)を忘れず手続きすることが重要です
6 まとめ
配偶者居住権は、相続開始後も配偶者が自宅に無償で住み続けられるよう創設された制度です。所有権と切り離して評価・分割できるため、住居の確保と生活資金の両立が可能になります。一方で、設定方法や登記、相続登記義務化への対応など実務上の注意点も多く、適切な手続きが重要です。
| 項目 | 内容(2025年9月時点) |
|---|---|
| 制度創設 | 2020年4月1日施行(平成30年改正法) |
| 権利内容 | 生存配偶者が無償で居住継続できる権利(終身・一定期間) |
| 要件 | 遺産分割・遺言・家庭裁判所審判による取得 |
| 特徴 | 登記により対抗要件を備える/譲渡・賃貸不可/配偶者死亡で消滅 |
| 関連制度 | 相続登記義務化(2024年4月施行)に要注意 |







