相続問題の専門知識

相続税

相続や遺贈によって取得したものとみなされて課税される財産対象

2. 相続や遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税される財産には、どのようなものがありますか

相続や遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税される財産(みなし相続・遺贈財産)としては、下記(1)~(9)があります。

(2) 退職手当金等

被相続人の死亡により支払われた、その被相続人に支給されるべきであつた退職手当金等で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続又は遺贈により取得したものとみなされます。 いわゆる死亡退職金が、このみなし相続・遺贈財産に該当します。 なお、弔慰金等の名目で支払われた金銭のうちその実質が退職手当金等に該当するものも、これに含まれます。

(3) 生命保険契約に関する権利

相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約(掛捨てのものを除く。)で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者がその生命保険契約の契約者であるものについて、次の算式により計算した金額は、相続又は遺贈により取得したものとみなされます。

相続や遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税される財産 生命保険契約に関する権利の算出計算式

例えば、被相続人が自身以外の者のために保険料を負担していた生命保険契約(被保険者・契約者ともに被相続人ではないもの)がこれに該当します。

なお、生命保険契約に関する権利の評価については、「生命保険契約に関する権利の評価」をご覧下さい。

(4) 定期金給付契約に関する権利

相続開始の時において、まだ定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)で被相続人が掛金又は保険料の全部又は一部を負担し、かつ、被相続人以外の者がその定期金給付契約の契約者であるものについて、次の算式により計算した金額は、相続又は遺贈により取得したものとみなされます。

相続や遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税される財産 定期金給付契約に関する権利の算出計算式

例えば、被相続人が自身以外の者のために掛金・保険料を負担していた個人年金契約(契約者が被相続人ではないもの)で、まだ定期金の支給開始時期が到来していないものがこれに該当します。

なお、定期金給付契約に関する権利の評価については、「定期金給付契約に関する権利の価額の評価」をご覧下さい。

(5) 保証期間付定期金に関する権利

定期金給付契約で定期金受取人に対しその生存中又は一定期間にわたり定期金を給付し、かつ、その受取人が死亡したときはその死亡後遺族等に対して定期金又は一時金を給付するものに基づいて、その遺族等がその受取人であった被相続人の死亡後にその定期金の受取人となったものについて、次の算式により計算した金額は、相続又は遺贈により取得したものとみなされます。

相続や遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課税される財産 保証期間付定期金に関する権利の算出計算式

例えば、被相続人が既に受給を開始していた個人年金契約に基づく継続受給権がこれに該当します。

なお、継続受給権の評価については、「定期金給付契約に関する権利の価額の評価」をご覧下さい。

(6) 契約に基づかない定期金に関する権利

被相続人の死亡により相続人その他の者が取得した定期金(これに係る一時金を含む。)に関する権利で契約に基づくもの以外のものは、相続又は遺贈により取得したものとみなされます。 例えば、被相続人が既に受給を開始していた退職年金契約に基づく継続受給権がこれに該当します。

なお、継続受給権の評価については、「定期金給付契約に関する権利の価額の評価」をご覧下さい。

(7) 特別縁故者が取得した財産

民法第958条の3第1項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により、特別縁故者(※)が相続財産の全部又は一部を与えられた場合の、その与えられた時におけるその財産の時価に相当する金額は、遺贈によって取得したものとみなされます。

※ 特別縁故者とは、相続人ではないものの、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者で、一定の手続を経て家庭裁判所により相続財産を取得することが認められたものをいいます。

(8) 低額譲受による利益

遺言に基づいて著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合の、その対価とその譲渡時における財産の時価との差額に相当する金額(そのうち一定の金額(※1)を除く。)は、遺贈により取得したものとみなされます。

※1.一定の金額とは、次の金額をいいます。

その財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときにおける、その遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額。

例えば、負担付遺贈により土地の譲渡を受けた場合における、その土地の時価と負担額との差額がこれに該当します。

(9) 債務免除等による利益

遺言に基づき対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合における、その免除、引受け又は弁済に係る債務の額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その対価の額を控除した金額とし、そのうち一定の金額(※2)を除く。)は、遺贈により取得したものとみなされます。

※2.一定の金額とは、次の金額をいいます。

その債務の免除、引受け又は弁済が次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合における、その遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額。

  1. 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
  2. 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によってその債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。

上記(7)~(9)の他にも、遺言に基づいて享受した利益がある場合には、その利益の額に相当する金額が遺贈によって取得したものとみなされます。

弁護士法人朝日中央綜合法律事務所ロゴ
この記事の執筆
弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は遺産分割紛争、遺留分紛争、遺言無効紛争などの相続紛争の解決実績は2018年以降、1,695件(内訳:遺産分割紛争635件、遺留分紛争89件、その他遺産相続紛争971件)にのぼり、多くの依頼者から信頼を獲得しています。