(1) 制限納税義務者と無制限納税義務者 相続や贈与により財産を取得した時に日本国内に住所地があるか否か、あるいは、日 本国籍を有するか否かにより、その納税義務の範囲が異なります。住所地とは、「相続税 基本通達 1 の 3・1 の 4 共-5」 で定義されており、それによると 「住所地とは各人の生活 の本拠をいう」 とされています。
(2) 相続税の課税 (イ) 無制限納税義務者の課税 (a) 居住無制限納税義務者 相続又は遺贈により財産を取得した個人で、財産取得の時において日本国内に住所を有しているときは、その取得した財産が国内にあると国外にあるとを問わず、その相続財産の全部について課税されます。 (b) 非居住無制限納税義務者 相続又は遺贈により財産を取得した個人が日本国籍を有するが、財産取得の時 において日本国内に住所を有していない場合(その個人又はその相続若しくは遺 贈に係る被相続人がその相続又は遺贈に係る相続の開始前 10 年以内のいずれか の時において日本国内に住所を有していたことがある場合に限ります。)は、そ の取得した財産が国内にあると国外にあるとを問わず、その相続財産の全部につ いて課税されます。 (ロ) 制限納税義務者の課税 相続又は遺贈により財産を取得した個人が、財産取得の時において、日本国内に住所を有していないときは、(イ)の(b)の非居住無制限納税義務者に該当する場合を除き、国内にある財産についてだけ課税されます。
(3) 贈与税の課税 (イ) 無制限納税義務者の課税 (a) 居住無制限納税義務者 贈与により財産を取得した個人で、財産取得の時において日本国内に住所を有 しているときは、その取得した財産が国内にあると国外にあるとを問わず、その 贈与財産の全部について課税されます。 (b) 非居住無制限納税義務者 贈与により財産を取得した個人が日本国籍を有するが、財産取得の時において日本国内に住所を有していない場合(その個人又はその贈与をした者がその贈与 前 10 年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある場 合に限ります。)は、その取得した財産が国内にあると国外にあるとを問わず、 その贈与財産の全部について課税されます。 (ロ) 制限納税義務者の課税 贈与により財産を取得した個人が、その財産を取得した時において、日本国内に住所がないときは、上記(b)の非居住無制限納税義務者に該当する場合を除き、その 者が取得した財産のうち、日本国内にあるものについてのみ、制限的に納税義務が あります。
(4) 相続税、贈与税について日本の税制と異なる税制の国 日本では相続、贈与により財産を取得した者に対して相続税、贈与税の課税が行われますが、国によっては相続税、贈与税の無い国や、財産を贈与した者に対して贈与税に 相当する税が課される国もあります。 例えば、香港やオーストラリアは相続税及び贈与 税はありません。 カナダも連邦政府の税金として相続税、贈与税の制度はありません。 唯一、ケベック州のみ州税として贈与税があります。 このような日本とは異なる税制 のしくみを研究し、相続税、贈与税の軽減に結びつけることも重要です。