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不動産

相続税軽減マニュアル

第3

相続財産別の相続税の軽減方法

集合写真
2

不動産

(1)

居住用不動産等の配偶者への贈与

(イ)
対策の内容
相続財産のうち居住用不動産等については、生前に婚姻期間が 20 年以上である配偶者へ贈与すれば、贈与税の計算上 2,000 万円までは贈与税がかからないため、低い贈与税負担で相続財産を減少させることができます。
(ロ)
対策の内容
居住用不動産のうち 2,000 万円について、婚姻期間が 20 年以上である配偶者に贈 与した場合と、贈与しなかった場合の税負担の比較
(a)
前提事項
(b)
贈与税
2,000万円-2,000万円=0
     贈与税の配偶者控除
(c)
相続税軽減効果
(ハ)
留意点
(a)
この特例は過去にこの規定の適用を受けていないことが条件となります。
(b)
生前贈与により取得した居住用不動産 (又は、居住用不動産を取得するための金銭) について贈与税の配偶者控除の適用を受けた配偶者が、贈与を受けた 日から3年以内にその贈与をした配偶者が死亡したことにより相続財産を取得 した場合には、相続税法 19 条により、その受贈財産の価額を相続税の課税価格 に加算することとされていますが、この場合、贈与税の配偶者控除の適用を受け た受贈財産のうち控除を受けた配偶者控除額に相当する金額は加算しないでよ いことになっています。
また、居住用不動産の贈与があった年にその贈与をした者が死亡し、かつ、そ の財産の贈与を受けた者が相続財産を取得したときは、その居住用不動産の価額 を贈与税の課税価格に算入することとして相続税の申告時に一定の手続をした 場合に限り、贈与税の配偶者控除に相当する金額は、相続税の課税価格に加算さ れないことになっています。
(2)

小規模宅地の特例の活用

(イ)
対策の内容
小規模宅地の特例は、一定の要件のもとに 200 m²又は 240 m²又は 400 m²までの面 積について土地の評価額が 80%又は 50%まで減額されるという特例です。特例の詳 細については(ニ)で説明します。
(ロ)
具体例
(a)
前提事項
1)
対策前
相続財産の総額 20億円(うち、自宅面積300m²、評価額4,000万円)
相続人 子 3人
2)
対策
借入金にて、アスファルト敷等の設備を施工してある駐車場を購入します。 購入面積 200 m²、購入金額2億円、土地の相続税評価額2億円
(b)
相続税軽減効果
(ハ)
留意点
不動産の貸付け等については、下記(ニ)(a)1)の 「特定事業用宅地等」 には該当しません。 従いまして、被相続人の不動産の貸付け等に供されていた小規模宅地等 については、200 m²までの面積に適用され、減額割合は 50/100 になります。
(ニ)
特例の内容
(a)
公益法人等
(b)
上記特例の対象となる宅地等の説明
1)
特定事業用宅地等
相続開始の直前において、被相続人の事業の用 (生計一の親族の事業の用を 含む) に供されていた宅地等で、その宅地等を取得した人のうち、その宅地等 上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、申 告期限までその事業を営んでいる宅地等並びに、その申告期限まで保有してい る宅地等をいいます。 なお、親族とは、民法 725 条に定められた者をいいます (以下、同じ)。
2)
特定居住用宅地等
相続開始の直前において、被相続人の居住の用、又は生計を一にする親族の居住の用に供されていた宅地等で、その宅地等を配偶者が取得する場合か、又 は取得した人のうちに、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が存在し ていること。
イ.
相続開始の直前において、その宅地等の上に存する被相続人の居住の用に 供されていた家屋に居住しており、かつ、相続税の申告期限まで引き続きそこ に居住し、遺産分割によりその宅地等を取得し、申告期限まで保有しているこ と。
ロ.
被相続人の配偶者又は同居していた被相続人の法定相続人がいない場合で、 相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したこと がない親族が、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を遺産分割により 取得し、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
ハ.
被相続人と生計を一にしていた親族で、相続開始時から申告期限まで引き 続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地 等を自己の居住の用に供していること。
(注)
1棟の建物の敷地の一部が被相続人等の特定居住用宅地等に該当する場合には、その1棟の建物の敷地の全部が特定居住用宅地等とされます。
3)
国営事業用宅地等
特定郵便局の用に供されている宅地等で、その宅地等を取得した個人のうち に被相続人の親族がおり、その親族から相続開始後5年以上その宅地等を特定 郵便局の用に供するために借り受ける見込みであることにつき地方郵便局長に より証明されたもの。
4)
特定同族会社事業用宅地等
相続開始直前に被相続人の有する同族会社の事業用宅地等 (不動産貸付業等は除きます) で、その宅地等を取得した個人のうちに被相続人の親族で申告期 限においてその法人の役員である者がおり、その宅地等を取得した親族が相続 開始から申告期限まで引き続きその宅地を有し、かつ、申告期限まで引き続き その法人の事業の用に供されているもの。
(3)

特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例

(イ)
制度の概要
被相続人の親族が相続又は遺贈若しくは相続時精算課税の適用を受ける贈与によ り取得した財産のうちに、取引相場のない株式又は出資がある場合には、一定の要 件を満たすもののうち、この特例の適用を受けるものとして選択をしたものについては、通常の方法によって計算したその財産の価額から、その財産の価額に 10%を ………….乗じて計算した金額を控除した金額を、相続税の課税価格に算入するというもので す。(この制度の対象として森林死因贈施行計画の定められた区域内に在する立木又 は土地等も含まれますが、説明を省きます。)
(ロ)
特例の適用条件
(a)
特例の適用を受けられる人
以下のすべての要件を満たす人
1)
被相続人の親族で、相続又は遺贈により非上場の同族会社株式等(出資を含 む)を取得した人であること。
2)
株主及びその関係者で、取得後の持株割合が 5%以上となるものが取得した こと。
3)
相続税の申告期限において当該会社の役員等であること。
(b)
特例の対象となる資産
以下のすべての要件を満たす株式(特定株式)、出資(特定出資)
1)
国内外の証券取引所又は店頭市場に上場または登録されていないこと。
2)
出資とは、有限会社の出資、合名会社の出資、合資会社の出資又は医療法人 の出資をいう。
3)
上記特定株式等、特定出資者の 23 までの部分。
4)
相続開始の直前に、被相続人及びその親族等が所有していた株式等の総数又 は金額合計額がその株式等にかかる法人の発行済株式等の総数又は出資金額 の 50%を超えること。
5)
その株式等にかかる法人の評価額の総額が 20 億円未満であること。
(c)
選択の方法と手順
本特例の適用方法と留意点は以下のとおりです。
1)
本特例で選択できる金額は、当該同族会社株式等のうち 3 億円以下の部分に 限られます。
2)
相続税の申告期限までに、当該同族会社株式等について遺産分割ができてい ること。(申告期限後3年以内に分割が成立した場合の特例があります)。
3)
当該同族会社株式等、小規模宅地の特例対象宅地等を取得したすべての人が、 この特例の適用を受けようとする当該株式等の選択に同意していること。
4)
相続又は遺贈により取得した当該株式等を相続開始の時から相続税の申告 期限まで引き続きそのすべてを有していること。
5)
相続若しくは、遺贈又は贈与により財産を取得したいずれかのものが小規模 宅地等についての課税価格の計算の特例の適用を受ける場合には、特定事業用 資産についての相続税の課税価格の計算の特例は受けられないこととなって います。但し、この例外として、特定同族会社株式等、特例及び小規模宅地等 の特例には適用に限度額が設けられており、特例の適用を受ける選択特定事業 用資産(特定同族会社株式等及び小規模宅地特例対象土地)がこの限度額に満 たない場合には、他の特定事業用資産について特例が適用できます。
(d)
相続時精算課税制度との関係
相続時精算課税制度の適用を受けていて、被相続人の生前に特定同族会社株式等の贈与を受けている場合は、当該贈与株式等は「特定受贈同族会社株式等」と され本特例の対象となります。
(4)

土地の使用貸借から賃貸借への転換

(イ)
対策の内容
同族会社や親族に土地や家屋を使用貸借で貸付をしたり、又は固定資産税相当額 以下の地代により土地を貸し付けている場合には、貸地や貸家建付地としての評価 減や、(2)でご説明した小規模宅地の特例を受けられません。 例えば、同族会社の オーナーで、自己の土地を同族会社に使用貸借により貸し付けているケースは非常 に多いと考えられます。 特に、都心部など単価の高い土地を同族会社に使用貸借で 貸し付けているケースでは、使用貸借から賃貸借に契約形態を転換することで、貸 地の評価と小規模宅地の特例の適用とで大きな相続税評価額の軽減効果があります。
また、親族に無償で家屋を貸しているケースも多いと考えられますが、賃貸借に契 約形態を転換することで貸家建付地の評価が適用されます。
(ロ)
具体例
同族会社への貸付地を使用貸借から賃貸借に変更する対策案
(a)
前提事項
1)
対策前の相続財産
2)
相続人 子 3人
(b)
対策案
同族会社への貸宅地を、使用貸借から賃貸借に契約の変更を行います。 この契約の変更について、国税当局に 「土地の無償返還に関する届出書」 を提出し、同族会社に借地権の認定課税が発生しないようにします。
(c)
相続税軽減効果
(ハ)
留意点
(a)
賃貸借契約が国税当局に否認されないように、同族会社間や親族間であっても、契約書をきっちりと交すことが必要です。
(b)
賃料の授受についても、請求書や領収書等を発行し、預金通帳を通すなど、賃料授受の事実を明確にしておくことが必要です。
(c)
土地の借主が法人の場合、 「土地の無償返還に関する届出書」 を所轄税務署に提出しているときは、法人に対し借地権の認定課税はされません。
(5)

土地利用区分の変更

(イ)
対策の内容
土地の財産評価のところで述べましたように、土地は一方のみ路線に接する土地 よりも二方以上の路線に接している土地のほうが、同じ路線価なら評価は高くなり ます。
二方以上の路線に接した土地については、利用区分を2つに分けることにより、 土地の評価を確実に下げることはできます。
(ロ)
具体例
(a)
駐車場の一部を一般定期借地権に利用区分を変更する例
駐車場として使用している下記図 1 のAの土地について、図2のように駐車場 Bと一般定期借地権設定地 (期間50年、底地割合55%) Cとに利用を変更しま す。

(b)
利用区分変更等の主要例
1)
自己が使用している土地の一部を他に貸し付ける。
2)
自己が使用している土地の一部に貸家を建てる。
3)
貸家建付地を評価するときは、貸家の棟数ごとに評価するため、同一敷地内 に貸家を建築するときは複数建築する。
4)
貸地を評価するときは、借地権者ごとに評価するため、同一の敷地内に借地 権を設定するときは複数の相手に設定する。
(ハ)
留意点
(a)
利用区分ごとに分割した画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地で評価されます。
(b)
利用区分変更後の土地を将来物納用地として考えているときは、評価減後の金額により収納されるため、逆効果となります。
(c)
分筆登記は必ずしも必要ではありませんが、状況によっては分筆登記をしたほ うがよい場合もあります。 この場合、測量費用や登記費用がかかります。
(6)

賃貸用建物の建築

(イ)
対策の内容
自己所有の土地上に貸店舗、賃貸オフィスビル、賃貸マンションなどの貸付用の 建物を建築します。 資金は自己資金又は借入金にて調達します。
その効果として、建物の相続税評価額が建築価額よりも大幅に低くなります。 具 体的には、建物の相続税評価額は固定資産税評価額×(1-借家権割合)という算式 で計算された金額となります。 固定資産税評価額は、建築価額の5~6割程度の評 価額とされていますので、相続税上での大幅な評価減が可能となります。
また、土地の相続税評価額についても貸家建付地評価となります。 具体的には、駐車場や空地ですと更地として評価され、何の評価減もありません が、貸付用の建物の敷地となりますと、更地価額×(1-借地権割合×借家権割合) という算式で計算される貸家建付地の評価となり、相続税上での大幅な評価減が可 能となります。
(ロ)
具体例
(a)
駐車場にマンション (建築価額5億円) を全額借入金により建築いたします。
(b)
対策実行前と実行後の相続税額の比較
(ハ)
留意点
(a)
土地の立地に適合した建物を建てる
土地を所有しているからといって、相続税軽減効果だけをねらって賃貸用建物 を建築することはとても危険です。 立地に適合した建物を建築しなければ、空室 が多くなり、たちまち収支の合わない不良資産と化してしまうからです。
(b)
総合的な検討から、もっとも適切な規模の建物を建てる
相続税軽減対策を目的とする場合、全体の相続財産の評価額を把握のうえ、どれぐらいの規模の建築がもっとも適切であるかを決定することが必要です。
(7)

賃貸用不動産の購入

(イ)
対策の内容
賃貸用建物の建築に適した場所に土地を所有していない資産家の対策としては、賃貸用不動産の購入という手法があります。 その効果として、購入した不動産につ いて、土地は貸家建付地、建物は固定資産評価額×(1-借家権割合)という評価に なり、購入資金との差額が評価減として相続税の軽減になります。 その他、この手 法のメリットは賃貸用不動産の場所を選択できるということにあります。 すなわち、 駅から至近であるなど、賃貸需要の高い地域にある不動産の購入をするため、安定 した賃料収入が期待できます。
(ロ)
具体例
(a)
公益法人等
賃貸需要の高い地域にある高収益の賃貸マンション (4億円) を全額借入金で購入致します。 なお、土地と建物の比率は土地を3、建物を7とします。
(b)
対策実行前と実行後の相続税額の比較
(ハ)
留意点
(a)
購入する物件の選定がポイントとなります。
選定ポイントとして下記の項目があげられます。
(b)
総合的な検討から、もっとも適切な規模の建物を建てる
相続税軽減対策を目的とする場合、全体の相続財産の評価額を把握のうえ、どれぐらいの規模の不動産購入がもっとも適切であるかを決定することが必要です。
(8)

貸家、貸宅地の売却と賃貸用不動産への買換え

(イ)
対策の内容
この対策は、事業用不動産を購入するために手持ちの貸地、貸家などの事業用不 動産を売却して、売却資金により賃貸用不動産を購入する方法です。 また、譲渡所 得税について事業用資産の買換特例制度の適用が可能となり、少ない自己負担で、 又は借入金のリスクを抑えて賃貸用不動産の購入をすることができます。
この対策により相続税の軽減のほか、毎年の収支が大幅に向上します。
(ロ)
具体例
自己所有地である貸地を売却して、その売却金額により、賃貸需要の高い地域に ある賃貸用マンションを購入します。 なお、貸地は相続税評価額で売却したものと し、売却金額と同額の賃貸用マンションを購入するものとします。
(a)
売却買換に伴う資金収支
(b)
対策実行前と実行後の相続税額の試算

この対策を実行することにより、相続税額が 7,436 万円も軽減されることになります。
(ハ)
留意点
(a)
買換資産を購入する場合、税法の 「特定の事業用資産の買換え」 の特例の要件 等に合致する資産を購入する必要があります。買換物件の要件については 「参考 欄」 を参照して下さい。
(b)
事業用資産の買換特例を適用する場合、売却する事業用資産については、一般 的に事業用資産といわれるもののほか、次に掲げる資産も事業用資産として取り 扱います。
1)
事業と称するに至らない不動産の貸付けなどの場合で相当の対価を得て継 続的に行うものの用に供しているもの
この場合、「不動産の貸付けなど」 とは、不動産などの賃貸その他使用に関 する権利の設定をいい、「相当の対価を得て継続的に行うもの」 とは、相当の 所得を得る目的で継続的に対価を得て貸付け等の行為を行うことをいいます が、これに該当するかどうかは、次により判定されます。
イ.
相当の対価については、その貸付け等の用に供している資産の減価償却費 の額、固定資産税その他の必要経費を回収した後において、なお相当の利益が 生ずるような対価を得ているかどうかによって判断します。 したがって、単 に名目的な対価が支払われているにすぎないと認められる場合はこれに該当 しません。
ロ.
その貸付け等をした際に一時にその対価を取得し、その後は一切対価を受 けないような場合には、継続的に対価を得ていることにはなりません。
2)
生計を一にする親族の事業の用に供している資産
この特例は、自己の事業の用に供している特定資産を譲渡し、その者が自己の事業の用に供する特定資産を取得した場合に適用があるのですが、例えば譲 渡した特定資産は夫又は親が所有し、その妻又は子がその特定資産を事業の用 に供していた場合のように、譲渡した特定資産がその所有者以外の者の事業の 用に供されていた場合であっても、その事業を営む者がその譲渡した特定資産 の所有者と生計を一にする親族関係にあって、かつ、その事業が不動産所得、 事業所得又は山林所得を生ずべき事業である場合には、その特定資産は、所有 者にとっても事業の用に供していたものとして取り扱われます。この取扱いは、 譲渡資産についてのみでなく、買換資産についても同様の事情がある場合には、 同様とされています。
3)
事業の用と事業以外の用とに併用されていた資産
譲渡資産が事業の用と事業以外の用とに併せて供されていた場合には、その事業の用に供されていた部分についてのみ特例の適用を受けることができます。 ただし、事業の用に供されていた部分がおおむね 90%以上である場合には、そ の資産の全部について特例の適用が受けられます。
買換資産とすることができる資産についても上記と同様に取り扱われます。
4)
事業上の貸付資産
事業に関連して貸し付けている次に掲げるものは、相当の対価を得ていない 場合であっても、事業の用に供していたもの又は供したものとして取り扱うこ とになっています。
イ.
工場、事務所等の作業員社宅、売店等として貸し付けているもの
ロ.
自己の商品等の下請工場、販売特約店等に対し、その商品等について加工、販売等をするために必要な施設として貸し付けているもの
5)
土地区画整理事業等施行地区内の土地等
土地区画整理法による土地区画整理事業等、施行地区内にある従前の土地 等を譲渡した場合 (換地処分により譲渡した場合を除きます。) において、 次のいずれかに該当するときは、その従前の土地等は事業の用に供していた もの又は供したものとして取り扱われます。
イ.
従前の土地等の所有者が仮換地又は一時利用地をその事業の用に供してい る場合
ロ.
事業の用に供していた従前の土地等を、その事業の用に供さなくなった日 から1年以内に仮換地の指定があった場合 (仮換地の指定後においてその事 業の用に供さなくなった場合を含みます。) において、その事業の用に供さ なくなった日からその仮換地の指定の効力発生の日以後1年以内又は一時利 用地の指定の通知に係る使用開始の日以後 1 年以内にその従前の土地等を譲 渡したとき
(c)
原則として、売却した年の翌年中に買換資産を取得しなければなりません。
(d)
購入する物件の選定がポイントとなります。
選定ポイントとして下記の項目があげられます。
〔参考〕
主な事業用資産の買換え対象資産
事業用資産の買換えの特例の適用対象資産概要 (租税特別措置法 37 条1項)
(9)

貸農地の売却と賃貸用不動産への買換え

(イ)
対策の内容
この対策は市街地に低収益の貸農地を相続財産として所有している方に適した手 法で、相続税軽減と収益力向上を目的とするものです。
具体的には、(8)でも述べました事業用資産の買換制度を活用し、低収益物件の貸 農地の明渡しを行い、明渡し後の土地上に賃貸用不動産の建築又は明渡し後の貸農 地を売却し、賃貸用不動産を購入します。 低収益の貸農地を明渡して高収益賃貸用 不動産の建築や購入を行うため、対策実行後の収支も大幅に向上します。
(ロ)
具体例
(a)
市街地にある低収益の貸農地の明渡しを行い、その上に賃貸マンションを建築致します。
(b)
対策実行前と実行後の相続税額の比較

この対策を実行することにより、6,120 万円の相続税が 530 万円になり、相続税は 5,590 万円軽減されます。

(ハ)
留意点
(a)
貸農地が生産緑地法に規定する生産緑地に該当するときは、生産緑地を解除してからでないと建築や売却はできません。 なお、生産緑地の解除は、農業に従事 する人が、身体的に農業に従事することが困難になるなどの要件が必要になりま す。
(b)
買換えの特例を受けるための要件等は、前出の要件を参考にして下さい。
(10)

交換の特例の活用

(イ)
対策の内容
(a)
所得税法 58 条に規定する固定資産の交換の場合の課税の特例制度を活用し、固定資産の評価を引き下げる対策を講じます。 対策の例は次のとおりです。
1)
時価が同額でも、相続税評価の低い土地と交換することによって評価の引下 げを行う。
2)
底地と借地を交換し、完全な所有権の土地に組み替えをし、小規模宅地等の 特例を有効に生かす土地に整える。
3)
同じ相続税評価額でも、当たりの相続税評価額の単価が低い土地を、当たり の相続税評価額の単価が高い土地と交換し、交換により取得した資産について 小規模宅地等の特例をより効果的に活用する。
(b)
固定資産を交換した場合、次の要件をすべて満たせば、所得税法 58 条により譲 渡がなかったものとして、課税が繰り延べられます。
1)
交換する資産は同種の固定資産であること。 従って、例えば宅地と宅地どう しの交換は要件に該当しますが、宅地と農地の交換では要件に該当しません。
2)
交換による譲渡資産は、その者が、1年以上所有していたものであること。
3)
交換による取得資産は、交換の相手方が、その交換のために取得したものでは なく、かつ、1年以上所有していたものであること。
4)
交換による取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途に供すること。
5)
交換による取得資産と譲渡資産の時価の差額が、いずれか高い方の時価の20%以内であること。
(ロ)
具体例
(a)
時価が同じで、相続税評価額の低い土地と交換する場合
父所有の土地A (相続税評価額1億円) と、時価が同額の子所有の土地B (相続税評価額 7,000 万円) を交換しますと、父の財産は 3,000 万円評価が下がることになります。
(b)
底地と借地の交換の場合
父所有の土地Bの借地権と、地主所有地である土地Aの底地を交換し、土地A と土地Bをそれぞれ完全な所有権にします。

父については、土地Aが父の完全な所有権になり、m²当たりの単価が高くなり ます。 従って、例えば、土地Aが父の居住用宅地である場合、父の借地権の場合 と完全な所有権とでは、小規模宅地等の特例上、次のように交換をし、居住用土 地Aの単価を高くした方が有利になります。
(c)
相続税評価額のm²当たりの単価が低い土地を、m²当たりの単価が高い土地と交 換する場合
相続税評価額 (1億円) が同じ土地Aを土地Bと交換します。 但し土地Aの 地積は 500 m²、土地Bの地積は 200 m²とします。

(ハ)
留意点
(a)
時価の算定が重要です。 不動産鑑定士の鑑定価額であれば、通常課税問題は生じません。
(b)
所有資産と時価が全く同じ交換資産はなかなかありません。交換によっては時価の差額を補うため、交換差金の授受が行われます。
しかし、所得税法 58 条の交換の場合、交換差金を取得したとき、その取得した差金については、譲渡所得税が課されますので留意して下さい。
(c)
交換の場合には、登記費用等の費用が発生します。
(d)
底地と借地の交換の場合は、小規模宅地等の特例を有効に活用する以外に、交換により土地を完全な所有権にすれば、任意に売却もし易くなり、また、物納制 度を利用する場合も、貸宅地よりも物納条件はよくなるというメリットがありま す。 ただし、物納を目的として交換をする場合、交換の要件の一つである 「交換 による取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途に供すること」 に合致しないと認定 される危険があります。
(11)

土地の分割取得による評価の引下げ

(イ)
対策の内容
宅地の価額は、原則として利用の単位となっている一区画の宅地ごとに、また、 相続又は遺贈により取得した宅地については、原則としてその取得した宅地ごとに 評価を行います。 従いまして、次に掲げる宅地の場合には、相続人A、相続人Bが それぞれ分割して取得した宅地ごとに評価をするため、相続人Bの取得した宅地は、 正面路線のみ接する宅地として評価を行い、側方路線の影響は受けずに評価するこ とができます。

具体例の(c)のように、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができ ないと認められるときは不合理な分割となり、その分割前の画地を1画地として評 価します。
その他ここでいう不合理な分割とは、次に掲げるような場合が該当します。
(a)
分割の結果、無道路地又は帯状地となる場合
(b)
分割後の宅地の形状が不自然で、合理性がない場合
(c)
その他分割後の土地が有効に活用できない場合など
(ロ)
具体例
相続人A、BがそれぞれA、Bの土地を取得した場合
(ハ)
留意点
具体例の(c)のように、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないと認められるときは不合理な分割となり、その分割前の画地を1画地として評価します。
その他ここでいう不合理な分割とは、次に掲げるような場合が該当します。
(a)
分割の結果、無道路地又は帯状地となる場合
(b)
分割後の宅地の形状が不自然で、合理性がない場合
(c)
その他分割後の土地が有効に活用できない場合など