遺産相続トピックス
休眠預金等活用法について
2025.12.09
1.はじめに
日本では長期間使用されていない預金が毎年1,700億円程度発生(その後520億円程度が払い戻し)しています(令和5年度)。
こうした預金を社会的に有効活用するため、2018年に施行されたのが「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(休眠預金等活用法)」です。
「休眠預金」は、各金融機関から預金保険機構に移管された後、毎年度、必要な額が「指定活用団体」に交付されます(休眠預金等活用法4条1項、8条)。
現在、「指定活用団体」として指定されているのは一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)になります(2019年指定)。
2023年の法令改正により、休眠預金を基とする資金については、被災地・子ども支援などに重点的に活用されるものとされ、より透明性の高い運用が図られています(休眠預金等活用法16条及び17条など)。
ここでは、相続との関係を含め、最新の実務運用に沿って休眠預金等活用法のポイントを解説します。
2.休眠預金とは
「休眠預金」とは、10年以上入出金や記帳等がされていない預金を指します(休眠預金等活用法2条6項及び同条4項、同法施行規則4条)。
預金者が引越しや死亡により連絡が取れないまま放置された口座が典型です。
特に相続において、被相続人名義の預金が遺産整理されず、口座の存在が忘れられているケースも少なくありません。
3.休眠預金が預金保険機構に納付されるまでの流れ
(1)通知と確認手続
残高が1万円以上ある場合、金融機関は電子公告(休眠預金等活用法3条1項)及び預金者の登録住所宛に原則として郵送により通知を行います(休眠預金等活用法3条2項、休眠預金等活用法施行規則7条1項及び同条4項)。
この通知が無事に預金者の元に届いた場合、その日から新たに10年間が起算されることになります(休眠預金等活用法2条5項3号)。
しかし、預金者が既に死亡している、転居しているなどで通知が届かない場合、当該預金は預金保険機構へ納付されます。
(2)1万円未満の場合
残高が1万円未満の場合、金融機関は電子公告は行いますが、通知は行わず、口座残高は自動的に預金保険機構に納付されます。
納付された資金は、法律に基づき、社会的課題に取り組む民間団体への助成や融資に活用されます。
(3)適用時期
休眠預金の対象となり得るのは、2009年以降に入出金等があった口座に限られ、2009年よりも前から継続的に入出金等が無い口座は休眠預金の対象とはならないとされています(休眠預金等活用法3条1項柱書)。
したがって、2019年より、休眠預金となった口座内預金は、JANPIAに移管され、その後、資金分配団体や実行団体、活動支援団体(2023年法令改正により新設)へ交付されています。
4.預金保険機構へ納付後の払戻しについて
休眠預金が預金保険機構に納付された後も、引き続きお取引のあった金融機関の窓口に、通帳やキャッシュカード、本人確認書類などを持参すれば、預金額を引き出すことが可能です(休眠預金等活用法7条2項、10条及び9条4号)。
ただし、法的な位置づけとしては、金融機関ではなく預金保険機構に対する請求となります(休眠預金等活用法7条1項)。
5.相続と休眠預金の関係
(1)放置されやすい理由
- 被相続人名義の預金が多数存在し、家族がその存在を把握していない
- 預金口座のある金融機関が遠方で、相続手続が後回しになる
- 相続人間の意見の不一致により遺産整理が停滞する
こうした理由から、相続放置=休眠預金化というケースが実務上多く見られます。
(2)実務上の注意点
休眠預金となっている預貯金口座は、相続人も把握していないことが多く、その存在を見落としてしまうおそれがあるため、
- 相続発生時にはすべての金融機関に対し残高照会を行う
- 相続人代表者が「取引履歴開示請求」を行い、未使用口座を把握する
- 相続時預貯金口座照会(2025年開始)を行う
ことが重要です。
6.まとめ
休眠預金等活用法により相続人の知らない被相続人の遺産であっても社会福祉の増進と国民生活の安定向上に活かされ、一定の有効活用が図られることとなりました。しかし、被相続人のたいせつな遺産は、たいせつな残される方々に引き継がれていくことこそ望ましい姿であると思われます。そうした観点からは、
- 生前中にご自身の財産を改めて確認してリストアップしておく
- 10年以上放置された預金がある場合、取引のあった金融機関への照会を行う
- 財産調査も含め、遺言書作成や遺言執行を専門家(弁護士・信託会社)に一括して依頼する
ことをお勧めいたします。
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