遺産相続トピックス
タワマン節税とは?2024年税制改正と最高裁判例で何が変わったのか
2017.09.22
1.はじめに
高層マンション(いわゆるタワーマンション)は、高層階になればなるほど相続税評価額と実際の市場価格との乖離が生まれる傾向があり、いわゆる「タワマン節税」として相続税対策に活用されてきました。
しかし、相続税評価額と実際の市場価格の乖離が大きいことが問題視され、税制改正(2024年1月施行)により、この節税効果は大きく見直されました。
ここでは、改正後の評価方法や実務上の影響を整理し、今後の不動産・相続対策で注意すべき点を解説します。
2.タワマン節税の仕組み
(1)評価額の仕組み
建物の相続税・贈与税における不動産評価は、「相続税評価額」を基準に行われます。
マンションの場合、土地は敷地全体の相続税評価額を持分按分で評価し、建物は1棟の固定資産税評価額を各戸の面積割合で案分して評価されます。このように、建物が階数や構造に関係なく一律の基準で評価されることとなるため、実際の市場価格(特に高層階・都心立地)と比べて相続税評価額が大幅に低くなる傾向がありました。
たとえば、
- 実勢価格:1億円
- 相続税評価額:4,000万円
のようなケースも多く、評価額が小さい分、課税対象資産が減少する=節税効果が生じていたのです。
(2)問題視された背景
この評価差を利用し、相続時に低い評価となることを見込んでタワーマンションを購入したり、購入してから間もなく贈与したりする「節税スキーム」が多用されました。
しかし、実際の経済的価値とかけ離れた課税が行われることから、政府は「著しい不公平」として制度見直しに着手しました。
3.税制改正(2024年施行)による見直し内容
(1)新たな評価方法の導入
2024年1月1日以降の相続・贈与においては、高層マンション等の区分所有建物について、実勢価格と相続税評価額の乖離を是正する新評価ルールが導入されました。
国税庁の「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」により、
- 建物の総階・所在階・築年数等に基づいて、補正率を乗じて評価額を引き上げる方式
が採用されています。
2024年以降は、取得時期にかかわらず、贈与や相続時点での相続税評価額が改正後ルールで計算されるため、旧来型の「タワマン節税スキーム」は事実上封じられました。
4.最高裁判決の影響
(1)最高裁判決(2022年〈令和4年〉)の概要
2022年4月19日の最高裁判決では、被相続人が死亡直前に高層マンションを購入して相続税評価額を引き下げたケースについて、実質的な租税回避行為として、路線価方式で行われた評価を否認し、不動産鑑定により算定した鑑定評価額を前提とする更正処分・賦課決定処分を認める判断が下されました。
(2)最高裁判決(2022年〈令和4年〉)の影響
上記最高裁判決は、いわゆる「タワマン節税」スキームに対し、従来の評価方法(財産評価基本通達に基づく路線価評価)であっても、節税目的が過度に顕著であれば、租税回避行為として否認できるという点を明確に示しました。
この判断は実務に極めて大きなインパクトを与え、先に紹介した税制改正へ繋がる契機となりました。
5.実務上の影響と今後の対応
(1)節税効果の縮小
2025年現在、タワーマンションを利用した従来型の節税スキームは制限され、評価乖離を前提とした節税効果は縮小しています。
今後は、居住・資産運用・相続対策を総合的に考慮した不動産戦略が求められます。
(2)他の不動産・資産への波及
タワーマンション以外の高額不動産についても、評価乖離が大きい場合には国税当局が同様の補正を行う可能性があります。
特に都心部の再開発エリアや、地価が急上昇している地域では注意が必要です。
(3)代替的な相続税対策の方向性
- 賃貸不動産の活用(貸家建付地の評価減)
- 生前贈与の計画的実施(暦年贈与・相続時精算課税制度)
- 生命保険の活用(非課税枠の有効利用)
- 事業承継税制の利用(非上場株式の承継時課税猶予)
これらを組み合わせることで、法令の範囲内で適正な相続税軽減を図ることが可能です。
6.まとめ
「タワマン節税」は、かつて有効な相続税対策の一つとされていましたが、2024年施行の税制改正および近年の判例・実務運用により、現在では実質的に封じられた制度となっています。
今後は、不動産の保有・相続を検討する際に、節税目的だけでなく、資産価値の安定・管理コスト・相続人の生活設計などを総合的に判断することが重要です。
当事務所では、不動産評価・相続税対策・事業承継などを総合的に検討し、法令に準拠した最適な相続プランをご提案しています。お気軽にご相談ください。







