遺産相続トピックス

国による相続とは?相続人がいない場合の手続と国庫帰属の流れ

2025.12.10

国による相続とは?相続人がいない場合の手続と国庫帰属の流れ|遺産相続の専門的な情報

1.はじめに

 被相続人に配偶者や子、兄弟姉妹などの相続人が一人もいない場合、相続財産は最終的に「国庫に帰属」します。
 ここでは、相続人がいない場合の手続の流れ、特別縁故者への財産分与、そして相続財産が最終的に国庫に帰属するまでのプロセスを整理します。

2.相続人がいない場合の基本的な流れ

(1)相続財産法人の成立

 被相続人に相続人がいないと判明した場合(相続人全員が相続放棄した場合も含みます。)、相続財産は一時的に「相続財産法人」となります(民法第951条)。この時点で、被相続人の財産と債務は一体として管理・清算の対象となります。

(2)相続財産清算人(旧称:相続財産管理人)の選任

 家庭裁判所が利害関係人(債権者、特別縁故者など)又は検察官の申立てにより、「相続財産清算人(旧称:相続財産管理人)」を選任して手続が進められます(民法第952条、家事事件手続法第200条)。

(3)相続財産清算人の役割・選任後の流れ

 相続財産清算人が選任された後の手続きの流れは以下のとおりです。

  • 財産・債務の調査および管理
  • 債権者・受遺者への公告および弁済
  • 相続人の捜索・公告(6か月以上)
  • 特別縁故者への財産分与の検討

(4)公告・清算後の手続

 公告期間(相続人捜索期間)が経過しても、相続人が見つからなかった場合、清算人は残余財産を特別縁故者または国庫に帰属させるための手続きを行います(民法第958条の2〜959条)。

3.特別縁故者への財産分与

(1)制度の概要

 「特別縁故者」とは、被相続人と生前に特別な関係にあった人を指し、相続人ではないものの、一定の範囲で遺産の分与を受けられる可能性のある人です。
 該当するのは、たとえば次のような方々です。

  • 被相続人の生前に介護や生活支援を行っていた人
  • 被相続人と長期間同居していた内縁の配偶者
  • 被相続人の事業・家計を支えていた知人・親族

(2)申立てと認可手続

 特別縁故者は、家庭裁判所に対し「相続財産分与申立書」を提出し、家庭裁判所による公告期間満了後3か月以内に申し立てを行う必要があります。
 裁判所は、被相続人との関係性・貢献度・生活状況などを総合的に審査し、分与の可否や金額を決定します。

(3)実務上の注意点(2025年版)

  • 分与の対象となる財産は、清算手続が完了して残余がある場合に限られます。
  • 分与申立てには期限があり、公告期間終了後3か月を経過すると申立権を失います。
  • 分与申立前に特別縁故者自身が死亡した場合、特別縁故者の相続人は分与申立権を相続しませんが、分与申立後に死亡した場合は、相続人が特別縁故者の地位を相続するとされています。
  • 分与を受ける場合でも、課税関係(相続税または贈与税)が発生することがあるため、税務上の確認が必要です。
  • 裁判所が認めた金額の範囲内でのみ受け取ることができ、裁判所が清算人の意見を参考にすることはあり得ますが、清算人の裁量で分与額を決定できるわけではありません。

4.国庫への帰属

(1)相続人・特別縁故者がいない場合

 公告期間が満了しても相続人や特別縁故者が現れない場合、相続財産は最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。
 この時点で、被相続人の財産は国の財産として処理され、国がこれを取得します。

(2)国による取得の範囲

 国が取得するのは、相続財産のうち清算人の職務により処理されず残ったものです。
 債務・費用を差し引いた純粋な残余財産(不動産・預貯金・有価証券など)が国庫に帰属します。

(3)最近の実務動向

  • 2023年の法改正以降、清算人に関する規定整備が進み、名称も「相続財産管理人」から「相続財産清算人」に統一されました。
  • 実務上、公告手続や費用の負担が増加しており、清算完了までに1年以上かかるケースも見られます。
  • 2024年4月施行の「相続登記義務化」制度との関連でいえば、無登記のまま放置される不動産が国庫帰属の対象となる例も増加傾向にあります。

5.実務上の留意点(2025年10月時点)

(1)国庫帰属制度との区別

 2023年施行の「相続土地国庫帰属制度」は、相続人が土地を国に引き取ってもらう制度ですが、今回の「国による相続」とは性質が異なります。
 前者は「相続人が存在するが土地管理負担を放棄したい場合」の制度であり、後者は「相続人自体が存在しない場合」の制度です。

(2)清算人選任の費用と予納金

 相続財産清算人を選任する際には、家庭裁判所へ申立費用・公告費用・予納金(数十万円程度)が必要になります。
 実務では、利害関係人や金融機関、債権者が申立てを行うケースが多く見られます。

(3)特別縁故者の権利保全

 特別縁故者が申立てをしないまま国庫帰属となると、後から取り戻すことはできません。
 生前から被相続人との関係性を明確にし、遺言書や覚書などで立証できる証拠を残しておくことが重要です。

6.まとめ

 相続人が存在しない場合、相続財産は清算手続きを経て国庫に帰属します。
 ただし、被相続人に生前特別な関係を有していた人(特別縁故者)がいれば、一定の要件のもと財産分与を受けられる可能性があります。
 2025年現在、相続財産清算制度の運用はより厳格化・長期化しており、相続登記義務化や国庫帰属制度との関係も複雑化しています。
 このような場合には、早期に弁護士へ相談し、清算人申立て・特別縁故者申立て・税務対応までを一貫して検討することが不可欠です。
 当事務所では、相続人不存在・国庫帰属案件・特別縁故者申立てなどのご相談を幅広く承っております。お気軽にご相談ください。