遺産相続トピックス
同性パートナーの相続対策について実務上のポイントを解説
2025.12.11
1.はじめに
近年、同性カップルの法的地位について、日本全国で「パートナーシップ制度」を導入する自治体が増えてきました(※2025年5月時点における導入自治体数は530)。しかし、相続の分野においては、同性パートナーについて、通常「配偶者」に認められる相続権や配偶者居住権などの法律上の権利行使が認められないケースが依然として多くあります。
本稿では、同性パートナーの相続に関する最新の法制度・実務の動向を整理し、パートナー間で資産承継を考える際に押さえておくべきポイントを解説します。
2.同性パートナーの法的地位と相続の現状
(1)同性パートナーと相続権
日本では、同性婚は未だ民法上認められていないため、同性パートナーは「配偶者」には含まれません。
その結果、死亡したパートナーの遺産を法定相続人として承継できず、相続人としての権利行使(相続分・遺留分・配偶者居住権など)も認められません(※2025年12月時点)。
(2)特別縁故者制度の限定的活用
同性パートナーであっても、相続人がいない場合や所在不明の場合には、一定の要件を満たせば、特別縁故者制度(民法958条の3)を活用して、遺産の全部または一部を受け取ることができる可能性があります。
ただし、特別縁故者制度を利用するためには、同性パートナーが被相続人と生計を同じくしていた、療養看護に努めたなど、被相続人と特別密接な関係性にあったことが要件となるため、同制度を活用できる場面は限定されています。
(3)パートナーシップ制度導入と実務的効果
2025年12月現在、日本全国において多くの自治体がパートナーシップ制度(あるいは類似の宣誓制度)を導入しています。パートナーシップ制度とは、自治体が、同性カップルを法律上の婚姻関係に相当する関係と認め、パートナーシップ証明を付与する制度です。
同制度によって自治体ごとに様々な行政・民間サービスが認められているものの、同制度は「配偶者」としての地位を付与するものではありません。
そのため、実務的には、「パートナーだから相続できる」と考えるのではなく、代替的な承継手段(遺言・生前贈与・信託契約等)を併用して設計することが重要です。
3.同性パートナーが遺産承継を考える際の実務ポイント
(1)遺言書の作成が第一の対策
同性パートナー間で安心して資産を承継させたい場合、被相続人が「パートナーに遺産を承継させる」内容の遺言書を作成することが最も基本かつ有効な対策です。遺言書の作成により、法定相続人ではないパートナーでも、財産を承継することが法律上可能となります。
遺言書作成時には、パートナー関係の実態(同居期間・扶養・共有財産等)を考慮し、必要に応じて専門家による支援を得ることが望ましいです。
(2)生前贈与・信託契約等の補完策
遺言だけでは、被相続人死亡後の税務・登記・共有関係などの課題をすべて解消できない場合もあります。そのため、次のような対策を併用することが実務上有効です。
- 生前贈与:被相続人が生前にパートナーへ財産を移すことで、相続開始時の承継リスクを軽減
- 信託契約:被相続人が信託会社や信託銀行と信託契約を締結し、パートナーを受益者に指定することで、被相続人の死亡後も資産が安定的にパートナーに承継される仕組みを構築
(3)実務上の注意点
遺言作成時には、署名・押印・日付など方式要件を厳守しつつ、できれば公正証書遺言または法務局保管制度(自筆証書遺言書保管制度)を活用する方法が安心です。
贈与・相続に関しては、贈与税・相続税・登録免許税・不動産取得税など複数の税務・登記義務が発生します。パートナーへの資産移転では、専門家(税理士・司法書士・弁護士)との連携が不可欠です。
不動産については、パートナー死亡後の持分整理・遺産分割・登記手続が複雑化するため、あらかじめ遺言執行者・代償金・債務承継を遺言に盛り込むなどの準備が望まれます。
4.最新の法制度・実務動向
(1)法改正の状況
2025年12月時点では、同性婚を法制化する民法改正はまだ成立しておりません。多くの自治体では、同性パートナーに対してパートナーシップ証明書を付与しているものの、それ自体に相続人としての権利を付与する制度的効力は付されておらず、遺言等による補完が必要です。
一方で、相続関連制度(たとえば、公正証書遺言、遺言書保管制度など)は整備が進んでおり、パートナー間の資産承継設計においても、従来以上に実務的な対応が求められています。
(2)実務運用の傾向
相続手続の場面で、同性パートナーが遺言により資産を承継する設計を行っているケースが増えています。
遺言だけでなく、生前贈与・信託契約等をセットで検討することで、パートナーに安心して承継できる仕組みを構築する動きが広がっています。
相続税申告・不動産登記などの準備段階において、パートナー間でトラブルになりやすい「遺言執行者・代償金・債務承継」などをあらかじめ定める設計が実務上推奨されています。
遺言や贈与による承継設計を怠ると、パートナーが後から財産を確保できない可能性が高いため、早期の対策開始が重要です。
5.まとめ
同性パートナー間で資産を承継・残したいとお考えの場合、現状(2025年12月時点)では、次の点を特に重要視することをおすすめします。
- 法定相続人ではないため、遺言・贈与・信託等を通じて自らの意思で承継設計を行うこと
- 遺言・贈与契約・信託契約等において、パートナー関係の実態・承継目的・税務・登記に関する整理を行うこと
- 専門家(弁護士・税理士・司法書士)を早期に交えて、遺言執行者・代償金・税務申告・登記等を含めたトータル設計を行うこと
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