遺産相続トピックス

隠し子の相続について実務上のポイントを解説

2025.12.12

隠し子の相続について実務上のポイントを解説|遺産相続の専門的な情報

1.はじめに

 婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども(いわゆる「非嫡出子」)の相続については、かつて法制度上・実務上の格差が問題となってきました。例えば、父親が認知していない場合、相続人としての地位が確定せず、遺産分割協議から除外されるケースがありました。
 本稿では、最新の法制度及び実務運用状況を整理し、非嫡出子が遺産相続に関して知っておくべきポイントを解説します。

2.非嫡出子と法定相続人の関係

(1)非嫡出子とは

 「嫡出子」とは、法律上の婚姻関係の下で生まれた子どもを指します。一方、「非嫡出子」とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを指します。

(2)相続人となる要件

 非嫡出子が父(被相続人)の相続人として法定相続人の地位を得るためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 父親(被相続人)による「認知」がなされていること。
  • 相続開始時点で、当該認知が有効であること。死後認知(被相続人死亡後の認知)によるケースもあります。

 認知なしでは、法律上は父子関係が成立しておらず、法定相続人として扱われないため注意が必要です。

(3)相続分の平等化

 かつては、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされるなどの格差がありましたが、平成25年9月4日、最高裁判所において、民法の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分について、遅くとも平成13年7月当時において,法の下の平等を定める憲法14条1項に違反していたとの決定をしたことから、平成25年9月5日以降の相続においては、非嫡出子も嫡出子と同等の相続分を有することが法制度上明らかとなっています。
 もっとも、平成13年7月1日から平成25年9月4日(上記決定の日)までの間に開始した相続についても、上記決定後に遺産分割をする場合には、最高裁判所の違憲判断に従い、嫡出子と嫡出でない子の相続分は同等のものとして扱われることになります。他方、平成13年7月1日から平成25年9月4日(上記決定の日)までの間に開始した相続であっても、遺産分割の協議や裁判が終了しているなど、最高裁判所の判示する「確定的なものとなった法律関係」に当たる場合には、その効力は覆りません。

3.死後認知・遺産分割協議への影響

(1)死後認知のポイント

 父親が死亡した後であっても、非嫡出子が認知の訴えを提起し、認知が確定すれば相続人となるケースがあります。ただし、死後の認知の訴えの提起は、父親の死亡の日から3年以内に限られます。また、相続開始後に死後認知によって相続人になった者が遺産分割を請求しようとしても、他の相続人が既に遺産分割を済ませている場合、被認知者の請求は金銭請求に限定されます(民法910条)。なお、最判平成28年2月26日においては、民法910条に基づく価格支払請求における価格の算定の基準時について、請求時の時価を基準とする旨を判示しました。

(2)遺産分割協議のやり直し・追加の交渉

 認知が確定した非嫡出子が遺産分割協議に加わる必要が出てきた場合、既に成立した協議をやり直したり、新たな請求交渉を行ったりする必要があります。
 このような状況を避けるためには、遺産分割協議を行う際に、認知の有無・登記・戸籍上の子の状況を十分に確認しておくことが実務上重要です。

4.最新の実務上の留意点(令和7年10月時点)

(1)認知手続・相続権確定

 認知の訴えは被相続人の生前でも、死亡後でも請求可能ですが、証拠収集など立証上の問題が実務上のハードルとなっています。
 遺産分割協議を行う際には、弁護士等と連携して、戸籍・認知記録・家庭裁判所の手続を確認しておくことが望まれます。
 また、現行民法においては、父の認知により父子間に法律上の親子関係が生じた場合には、父母間の協議で父を親権者と定めることができるとされていたものの、父母双方を親権者と定めることはできませんでした。しかし、令和8年4月1日施行予定の改正民法においては、共同親権が可能となることから、上記の場合においても、父母の協議により、父母双方を親権者と定めることが可能となります。

(2)遺産分割協議・実務対応

 遺産分割協議において、非嫡出子が相続人として加わる可能性がある場合には、遺産分割協議書案を作成する段階から、当該非嫡出子の取得分を想定しておくことが推奨されます。
 既に遺産分割協議が終わっている場合であっても、後から認知が確定したことで取り分が増える可能性があるため、遺産分割協議書やその他の書類の保管・見直しも重要です。
 非嫡出子が加わったことで、他の相続人が支払うべき代償金など、金銭清算の負担が増えることが実務上多くあるため、事前に想定・準備しておくことが望まれます。

(3)相続税・評価・遺贈の観点

 非嫡出子が相続人となった場合、相続税・贈与税の課税関係・評価方法などにも影響を及ぼす可能性があるため、税理士等との連携も望まれます。
 遺言書を残す際、非嫡出子の位置付けを明確にしておかないと、他の相続人とのトラブルに発展するリスクが高まります。

5.まとめ

 非嫡出子がいる相続については、認知の有無・相続人としての地位・遺産分割協議のタイミング・相続手続・税務対応など、多角的な確認が必要です。
 特に以下の点をご留意ください。

  • 父親の認知があって初めて、非嫡出子も法定相続人になり得る。
  • 非嫡出子と嫡出子の相続分は、平成25年以降の制度改正により同等となっている。
  • 遺産分割協議の後に認知が確定した場合には、金銭請求等の対応が必要となる。
  • 認知・遺産分割・相続税・代償金支払いなど、多面的に専門家と準備・対応することが実務上の鍵となる。

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