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遺産相続トピックス

隠し子と相続

2017.12.11

隠し子と相続|遺産相続の専門的な情報

今回は、隠し子がいる人が亡くなった場合、相続に与える影響について考えてみます。

1.戸籍の記載には要注意

夫を亡くした妻が、その相続の手続のために亡夫の戸籍を収集していたところ、亡夫の戸籍に「認知」という欄があり、「認知日」「認知した子の氏名」「認知した子の戸籍」といった記載を発見したとします。これは夫に婚姻外の子がいることを示しています。
上記の記載が現在の戸籍にはなく、改製前の戸籍にのみに載っていることもあるので、夫の出生から死亡まで、全ての戸籍を見なければ明らかにならないと言えます。

非嫡出子(婚姻外の子)も、父に認知された場合、父親と法律上の親子関係が生じるため、父の相続に関して相続権が生じます。そして、法定相続割合は、婚姻中の子(「嫡出子」といいます。)と同じです(最判平成25年9月4日民集76巻6号1320頁を受け、民法が改正されました。参考:民法第900条4号)。 したがって、妻としては自分の子と同じ、相続分を持つ子が他にいることを前提として遺産分割協議を行わなければなりません。認知されている非嫡出子抜きで行った遺産分割協議は、無効ということになります。

2.戸籍に記載がなくても

戸籍に「認知」の欄がないからといって安心はできません。
原則として、亡夫に認知をされていない非嫡出子については、夫と法律上の親子関係が成立していないので、戸籍には載りませんし、相続分もありません。
しかし、例えば、夫が遺言によって子を認知した場合、これも認知として効力を有するため、非嫡出子にも相続分が発生します(民法第781条2項)。
また、父親による認知がされていない子供(戸籍に載っていない子供)から、父親の死後に認知請求が行われることがあります。死後の認知請求自体は、父親の死後、3年以内であれば可能です(人事訴訟法第42条1項)。
遺産分割前に死後認知の請求をされ、認知の決定が出た場合、他の相続人は、当該非嫡出子も被相続人の相続人の一人として、遺産分割協議に加えなければなりません。
遺産分割協議が終了した後に、死後認知請求によって認知された非嫡出子が登場した場合は、当該非嫡出子は、不動産などの持分を主張することはできず、価格のみの賠償を求めることができます(民法第910条)。もっとも、ここでいう遺産の「価格」については、「支払請求時」を基準時とするという判例があります(最判平成28年2月26日民集70巻2号195頁)。したがって、例えば、遺産の額が目減りしていた場合は、各相続人は非嫡出子から請求された時点における目減りした遺産の額をベースに法定相続分の価格を支払えば足りることになります。

3.非嫡出子の相続分について

非嫡出子の相続分については、平成7年の最高裁判決は相続分が嫡出子の2分の1とする規定は合憲であるとしていましたが、先述の平成25年の最高裁判決は、その後の社会情勢の変化などを理由に同規定は違憲であると判断しました。婚姻外の子の存在を知らなかった妻の立場からすると、相続時に晴天の霹靂といった事態になることもあるかもしれません。しかし、子の立場からすると、親がどのような事情で自分を生んだのかといったことは選択のできないことです。そこで、父親の相続に関しては、認知された非嫡出子も、嫡出子と同じように相続をする権利があると判断したのです。家族の在り方に関する価値観が多様化しつつあることの現れかもしれません。
非嫡出子の地位や、価格賠償の基準時など、近年、子供の相続に関して重要な判決が出ています。今後も、子の相続に関する判例、法律改正についての動向を注視していく必要があります。