相続問題の専門知識

遺産の名義変更

不動産の名義変更手続きについて

被相続人が不動産を所有していた場合、その不動産の名義を変更する手続きが必要になります。 ここでは、いくつかの場合に分けて不動産の名義変更手続きについて説明します。

詳しくは、以下のフローチャートをご覧下さい。

※ 未登記の不動産については、Q1をご参照下さい。

1. 登記されているか未登記か

不動産には、登記されている不動産と未登記の不動産があります。土地については、基本的に登記されているので、ここでは建物について説明します。

建物が登記されているかどうかを確認するためには、以下のような方法があります。

(1) 固定資産税課税明細書を確認する

登記されている建物の場合、家屋番号が記載されています。他方、未登記建物の場合、家屋番号が空欄になっているか、未登記と記載されています。

(2) 登記情報提供サービスを利用して建物の登記情報を取得する

登記されている建物の場合、登記情報を取得できます。他方、未登記建物の場合、登記情報を取得することができません。 登記情報は、土地の所在及び地番を確認し、その土地上の建物の登記情報を請求するという方法で取得できます。

(3) 法務局に登記事項証明書の交付を請求する

登記されている建物の場合、登記事項証明書を取得できます。他方、未登記建物の場合、登記事項証明書を取得することができません。 登記事項証明書は、土地の所在及び地番を確認し、その土地上の建物の登記事項証明書を請求するという方法で取得できます。

登記されている不動産の名義を変更するには、被相続人から不動産を承継する人への「所有権移転登記」の手続きが必要になります(詳しくは2. 以下)。

他方、未登記の不動産の名義を変更するには、相続人名義での表題登記と所有権保存登記をする必要があります(Q1)。

1. 未登記の不動産の名義変更をするためには、どのような手続きが必要ですか。

まずは、不動産を取得する者の名義で登記をする必要があります。遺言で不動産を取得する者が指定されていない場合、遺産分割協議によって不動産を取得する者を決定します。

次に、建物表題登記を申請します。表題登記の申請には、遺言書又は遺産分割協議書の他に所有権証明情報が必要です。なお、表題登記には、登録免許税がかかりません。

建物表題登記が完了すると、次に所有権保存登記を申請し、登記は完了となります。なお、所有権保存登記には、不動産価額(固定資産税評価額を言います。以下同じ。)の0.4%の登録免許税がかかります。

2. 遺言があるか遺言がないか

不動産の名義変更手続きを行う場合、遺言がある場合と遺言がない場合とで大きく手続きが異なります(Q2)。 遺言がある場合については、さらに遺言書の文言によって具体的な手続きが異なります(詳しくは3. 以下)。

なお、遺言にはいくつかの種類がありますが、詳しくは「遺言の要式性と遺言の方式の種類について」をご参照下さい。

2. 遺言がない場合、不動産の名義変更をするためには、どのような手続きが必要ですか。

まずは、法定相続人全員による遺産分割協議を行い、誰が不動産を取得するかを決めたうえで、その内容を記した遺産分割協議書を作成して下さい。 遺産分割協議書には、法定相続人全員の実印による捺印が必要になります。

なお、遺産分割協議については、「遺産分割」をご参照ください。

その後、遺産分割協議により不動産を取得する者が、単独で登記手続きを行うことになりますが、具体的には、不動産を管轄する法務局に登記を申請し、手続書類に不備等がなければ登記手続は完了します。

登記申請をする場合、司法書士に依頼するのが一般的です。登記申請に必要な書類についてはQ4をご参照ください。

3. 「相続させる」とされているか「遺贈する」とされているか

遺言によって特定の人に財産を取得させる場合、「相続させる」とされている場合と「遺贈する」とされている場合があります。 一般的に、法定相続人に財産を取得させる場合には「相続させる」、法定相続人以外の第三者に財産を取得させる場合には「遺贈する」と記載されることが多いため、これを前提として具体的な手続きを説明します。なお、「相続させる」と「遺贈する」の文言について、詳しくは下記Q3、Q4をご参照下さい。

3. 不動産をXに「相続させる」という遺言があります。不動産の名義を移転するためには、どのような手続きが必要ですか?

Xは、他の法定相続人の協力なく単独で登記申請を行うことができます。 具体的な登記申請手続きについては、司法書士に依頼するのが一般的です。

登記申請手続きに必要な書類については、Q5を参照してください。

4. 不動産をXに「遺贈する」という遺言があります。不動産の名義を移転するためには、どのような手続きが必要ですか?

「相続させる」旨の遺言がある場合と異なり(Q3)、「遺贈する」という内容の遺言がある場合、受遺者であるXは、単独で登記申請をすることはできません。 この場合、さらに遺言執行者がいる場合(A1)と、遺言執行者がいない場合(A2)とで手続きが異なります。

-1. 遺言執行者がいる場合、受遺者であるYと遺言執行者が共同して登記申請を行うこととなります。 そのため、Yと遺言執行者が共同して登記申請を行うこととなります(一般的には、司法書士に依頼することとなります。)。登記申請に必要な書類についてはQ4を参照してください。

-2. 遺言執行者がいない場合、受遺者であるYは単独で登記手続きをすることはできず、受遺者と法定相続人全員が共同して登記申請を行うこととなります(一般的には、司法書士に依頼することとなります。)。そのため、法定相続人全員の協力が必要となります。 また、法定相続人がいない場合は、裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てることによって、遺言執行者を選任することができます。遺言執行者が選任された後については、上記A-1と同様に手続きを進めることとなります。

なお、遺言執行者については、「遺言執行者の資格」のページをご参照ください。

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弁護士法人朝日中央総合法律事務所
弁護士法人朝日中央綜合法律事務所は遺産分割紛争、遺留分紛争、遺言無効紛争などの相続紛争の解決実績は2018年以降、1,695件(内訳:遺産分割紛争635件、遺留分紛争89件、その他遺産相続紛争971件)にのぼり、多くの依頼者から信頼を獲得しています。