相続問題の専門知識

相続税

相続税の計算において税額控除できるもの

13. 相続税の計算において税額控除できるものにはどのようなものがありますか

各人(納税義務者)の納付すべき相続税額の計算に当たり控除される項目(税額控除項目)には下記(1)~(7)があり、相続税額の加算後の算出相続税額より、下記(1)~(7)の順序で適用することとされています。

(1) 暦年課税分の贈与税額控除

相続又は遺贈により財産を取得した者が生前贈与加算(「相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産がある場合の取扱い」参照。)の適用を受ける場合において、その生前贈与により取得した財産につき課された贈与税があるときは、その者の納付すべき相続税額の計算上、下記の算式により算出した金額が控除されます。 これは、相続税と贈与税の二重課税を調整するための措置です。

上記算式における各記号の意味するところは、下記の通りです。

A:生前贈与により財産を取得した日の属する年分の贈与税額(※)

※ その贈与税額については、贈与税の外国税額控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。

B:生前贈与により財産を取得した日の属する年分の贈与税の課税価格に算入された贈与財産の価額の合計額

C:Bのうち、相続税の課税価格に加算された財産の価額の合計額

(2) 配偶者の税額軽減

被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した配偶者の納付すべき相続税額については、次の1~2に掲げる場合の区分に応じ、それぞれの通りに取り扱われます。 これは、配偶者の相続後における生活や相続財産の維持形成に対する貢献等の事情に配慮して設けられている措置です。

1. 下記1の金額が2の金額を超える場合

この場合には、配偶者の納付すべき相続税額の計算上、2の金額が控除されます。

  1. その配偶者にかかる算出相続税額(暦年課税分の贈与税額控除額があるときは、それを控除した後の金額)
  2. 次の算式により計算した金額

イ. 下記(イ)と(ロ)のうちいずれか多い金額

(イ)課税価格の合計額に配偶者の法定相続分(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における法定相続分。以下、2.において同じ。)を乗じて算出した金額
(ロ)1億6,000万円

ロ. その配偶者に係る課税価格相当額

2. 上記1.における1の金額が2の金額以下である場合

この場合には、配偶者の納付すべき相続税額は生じません。

このように、配偶者に係る相続税の課税価格が、相続税の課税価格の合計額のうち配偶者の法定相続分相当額又は1億6,000万円以下であれば、配偶者は相続税を納める必要がありません。 ただし、この税額軽減を受けるためには相続税の期限内申告を行う必要があり、また、相続税の申告期限までに分割されていない遺産については、この税額軽減の適用を受けることができません。

(3) 未成年者控除

相続又は遺贈により財産を取得した者が次の1~3の要件を全て満たす場合には、その者の納付すべき相続税額の計算上、下記の算式により算出した金額が控除されます。 これは、未成年者の担税力に配慮して設けられている措置です。

  1. 居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者であること。
  2. 法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
  3. 相続又は遺贈により財産を取得した時において20歳未満であること。

10万円 ×(20歳-相続又は遺贈により財産を取得した時のその者の年齢(※1))

※1. “1歳”に満たない端数については、これを切り捨てます。

なお、その未成年者の納付すべき相続税額の計算に当たり、上記算式により算出した金額を控除しきれないときは、一定の範囲内でその控除しきれない部分の金額をその未成年者の扶養義務者(※2)の納付すべき相続税額の計算上、控除することができます。

※2. 扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹、3親等内の親族のうち一定の者をいいます(下記4においても同様)。

(4) 障害者控除

相続若しくは遺贈により財産を取得した者又は被相続人からの贈与(死因贈与を除く。)により相続時精算課税適用財産を取得した者が次の1~3の要件を全て満たす場合には、その者の納付すべき相続税額の計算上、その障害の程度に応じ、下記の算式により算出した金額が控除されます。 これは、障害者の相続後における生活に配慮して設けられている措置です。

  1. 居住無制限納税義務者又は特定納税義務者で相続又は遺贈により財産を取得した時において日本国内に住所を有するものであること。
  2. 法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。
  3. 相続又は遺贈により財産を取得した時において障害者(※1)であること。

※1. 障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で一定のものをいい、そのうち精神又は身体に重度の障害がある者で一定のものは特別障害者に該当します。

例えば、身体障害者手帳に身体障害者として記載されている人で障害の程度が1級又は2級と記載されているものは、特別障害者に該当します。

1. その者が一般障害者であるとき
10万円 ×(85歳-相続・遺贈により財産を取得した時のその者の年齢(※2))

※2 “1歳”に満たない端数については、これを切り捨てます(2においても同様)。

2. その者が特別障害者であるとき
20万円 ×(85歳-相続・遺贈により財産を取得した時のその者の年齢(※))

なお、その障害者の納付すべき相続税額の計算に当たり、上記算式により算出した金額を控除しきれないときは、一定の範囲内でその控除しきれない部分の金額をその障害者の扶養義務者の納付すべき相続税額の計算上、控除することができます。

(5) 相次相続控除

相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む。以下、(5)において同じ。)により財産を取得した者又は被相続人からの贈与により相続時精算課税適用財産を取得した者が次の1~3の要件を全て満たす場合には、その者の納付すべき相続税額の計算上、下記の算式により算出した金額が控除されます。 これは、相続が10年以内に相次いだ場合において相続税の負担が過重となりかねないことへの配慮として設けられている措置です。

  1. 相続人であること。
    相続の放棄をした人や相続権を失った人については、この制度は適用されません。
  2. その相続(以下、5において「第二次相続」といいます。)の開始前10年以内に開始した相続(以下、5において「第一次相続」といいます。)により、被相続人が財産(その第一次相続に係る被相続人からの相続時精算課税贈与により取得したものを含む。)を取得していること。
  3. 第一次相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課されたこと。

上記算式における各記号の意味するところは、下記の通りです。

A:今回の被相続人が第一次相続の際に課せられた相続税額
なお、この相続税額については、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額とし、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額並びに延滞税、利子税及び加算税の額はこれに含まれません。

B:今回の被相続人の第一次相続における純資産価額(※)

※ 純資産価額については、「相続税の具体的な計算の流れ」をご覧下さい。以下、5において同じ。

C:第二次相続に際して相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した全ての者に係る純資産価額(※)の合計額

D:第二次相続における各相続人の純資産価額(※)

E:第一次相続開始の時から第二次相続開始の時までの期間に相当する年数
(年数の計算に当たっては、1年未満の期間を切り捨てます。)

控除される金額

(3)国外財産の所在地国において課された税額(以下、「外国税額」といいます。)に相当する金額

(4)次の算式により算出した金額

※ 純資産価額については、「相続税の具体的な計算の流れ」をご覧下さい。

なお、外国税額の邦貨換算にあたっては、原則として次の1又は2のうちいずれか高い外国為替相場を用います。

  1. その外国税額を納付すべき日における電信売相場(TTS)
  2. 日本から送金して外国税額を納付する場合における、実際の送金日の電信売相場(TTS)
    ただし、送金日がその外国税額を納付すべき日よりも著しく遅延する場合には、2を用いることはできません。

(7) 相続時精算課税に係る贈与税額控除

相続時精算課税適用財産につき課せられた贈与税がある場合には、相続時精算課税適用者の納付すべき相続税額の計算上、その贈与税の額(※)が控除されます。

※ その贈与税の額については、在外財産に対する贈与税額の控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。

これは、相続税と贈与税の一体化課税という相続時精算課税制度の趣旨から設けられている措置です。 なお、相続税額の計算上、その贈与税の額に控除しきれない金額が生じた場合には、その控除しきれない金額の還付を受けることができます。 還付を受けるためには、相続税の申告書を提出する必要があります。