遺産相続トピックス
相続税申告における留意点
2025.12.09
1.はじめに
相続税の申告は、被相続人の死亡により相続が発生した日から10か月以内に行う必要があります。
しかし、実務上は「財産の評価が複雑」「相続人間で分割協議がまとまらない」「申告後に財産が判明した」など、様々な課題が生じるケースが少なくありません。
ここでは、2025年10月現在の法制度と実務運用を踏まえ、相続税申告で特に注意すべきポイントを解説します。
2.申告期限と延長の可否
(1)申告期限
相続税の申告書は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します(相続税法第27条)。
この期限までに申告と納税を行わないと、加算税・延滞税が課されるおそれがあります。
(2)期限の延長制度
災害・長期入院・相続人調査の遅延など、やむを得ない理由がある場合は、税務署に対して申告期限延長の申請を行うことが可能です(国税通則法第11条)。
ただし、延長が認められるには、事前申請と合理的理由の証明が必要です。
3.財産評価に関する実務上の注意点
(1)不動産の評価
不動産の評価は「路線価方式」または「倍率方式」により行われます。
土地の形状、接道状況、借地権割合、容積率制限などにより評価額が大きく変わるため、専門的な知見が必要です。
また、2023年の税制改正以降、地積規模の大きな宅地の評価減(いわゆる広大地補正)の適用要件が明確化されており、面積基準や地域指定を満たさない場合には評価減が認められない事例が増えています。
(2)非上場株式の評価
中小企業の株式(非上場株式)の評価には、類似業種比準方式または純資産価額方式が用いられます。
しかし、事業承継税制の特例や株式保有特定会社判定の運用強化により、単純な評価では対応できないケースもあります。
企業の財務内容や過去3期の利益状況、資産構成などを慎重に確認することが重要です。
(3)海外資産・デジタル資産の取扱い
2025年現在、海外にある金融資産・不動産・暗号資産なども、一定の要件を満たす場合は課税対象となります。
特に国外財産調書制度との連携が進んでおり、海外銀行口座や暗号資産ウォレットを申告漏れにすると、重加算税や刑事罰の対象となる可能性があります。
4.相続人間の協議と代償分割の課税関係
(1)遺産分割協議が未了の場合
申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、暫定で法定相続分にて申告・納税し、分割が成立した後に更正の請求や修正申告を行うことができます。
この手続を怠ると、配偶者控除・小規模宅地等の特例を適用できず、税負担が過大となるおそれがあります。
(2)代償分割と贈与課税のリスク
特定の相続人が他の相続人に金銭を支払う代償分割を行う場合、その金銭が「相続財産の分割の範囲を超える」と判断されると、贈与税課税の対象となることがあります。
実務上は、分割協議書の記載内容・支払時期・金額算定方法を明確にすることが不可欠です。
5.各種特例の適用要件の厳格化
(1)小規模宅地等の特例
被相続人が居住・事業用に使用していた土地について、最大80%の評価減を受けられる制度です(相続税法第69条の4)。
ただし、近年は被相続人と同居していた相続人の居住実態が厳格に審査されており、住民票上の住所だけでなく、実際の居住実態・生活費の共有状況などが確認されます。
(2)配偶者控除
配偶者が取得する遺産額が1億6,000万円または法定相続分までの金額であれば、相続税が非課税となります(相続税法第19条)。
ただし、相続登記義務化(2024年施行)により、登記遅延が生じた場合、配偶者控除の適用手続にも影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
6.税務調査と実務対応
相続税の申告後、税務署は申告内容を審査し、必要に応じて実地調査(税務調査)を実施します。
特に以下の点が指摘されることが多いです。
- 現金・預金の申告漏れ(名義預金・貸金庫内現金など)
- 土地評価の誤り(路線価適用ミス・間口狭小補正の誤用など)
- 名義株・貸付金・役員退職金の計上漏れ
税務調査に備えるためには、財産目録・評価根拠資料・相続関係説明図を正確に整備し、専門家による事前チェックを受けることが望まれます。
7.2025年10月時点の最新実務動向
- 相続税の電子申告(e-Tax)が完全対応し、税務署窓口提出よりも電子申請が主流化。
- 「国外送金等調書制度」や「CRS情報交換制度」により、海外資産の把握が強化。
- 2024年施行の「相続登記義務化」により、遺産分割未了の土地についても登記期限の管理が求められる。
- 相続税の申告漏れ・財産隠しに対する調査強化が進み、特に高額相続案件では国税局が直接調査を行う事例が増加。
8.まとめ
相続税申告は、単に期限内に申告書を提出すれば完了するものではなく、財産評価・分割協議・特例適用・税務調査対応など、多角的な検討が求められます。
特に、2025年10月時点では制度改正・IT化・税務調査の厳格化が進み、より慎重な申告準備が必要です。
相続税の申告に不安がある場合は、早期に弁護士・税理士など専門家に相談し、
- 相続財産の正確な把握
- 評価方法の適正化
- 控除・特例の適用判断
- 税務調査への事前準備
を一貫して行うことが重要です。
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