遺産相続レポート

内縁関係にあるパートナーの生活を守るには

2017.10.16

内縁関係にあるパートナーの生活を守るには|遺産相続の専門的な情報

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ(通称「逃げ恥」)」が最終回を迎えて、もう5か月も経ったという事実に、時の流れの早さを実感せざるをえません。私も、ご多分に漏れず恋ダンスを練習してまったく踊れなかった者の一人でございました。

さて、逃げ恥の第2話において、みくりが市役所に行って転入届を提出するシーンがありました。ここでみくりは、津崎さんとの続柄を「妻(未届)」と記載しています。未届とは、ここでは婚姻届を出していない事実婚や内縁状態を意味していました(なお、ドラマでの津崎さんとみくりの関係が内縁と認められるかは難しい問題ですので、今回は割愛致します)。

相続のことを申しますと、内縁の夫や妻には相続権がありません。したがって、内縁の夫(または妻)が亡くなった場合、なにもしなければ、そのパートナーである内縁の妻(または夫)は、亡くなった方の財産等を受け取ることは出来ないことになります。

内縁の夫が所有していた家に一緒に住んでいた内縁の妻が、内縁の夫死亡後も住み続けていたところ、内縁の夫の相続人が明け渡しを求めた訴訟において、最高裁判所は、内縁の夫の相続人による家屋の明け渡し請求を、信義則違反として退けた最高裁判所の判例があります。(最高裁判所第3小法廷昭和39年10月13日判決)

この判例においても、内縁の夫の所有する家屋について内縁の妻の居住権や相続権を認めたものではなく、個別具体的な事情から、あくまでこの件についての明け渡し請求を権利濫用と判断したものであって、事情が異なれば逆の結論もありうるといえます。 また、内縁の夫(または妻)の財産を引き継ぐケースとして、特別縁故者に当たる場合がありますが、相続人が他にいない時であるなど、条件としてはかなり厳しく、事前の対策もできません。

このように、相続が生じた際の内縁の夫や妻の立場は弱いところがあります。 なんらかの理由で籍を入れることが出来ない、あるいは望んで籍を入れていない大切なパートナーがいる場合は、自身亡き後のパートナーの生活のためにも、遺言書を作成して、ご自身の財産が確実にパートナーに渡るような手立てを早めに打っておかれることをおすすめいたします。

このレポート執筆の弁護士

朝日中央綜合法律事務所 弁護士

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