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贈与について

事業承継マニュアル

第3章

事業財産の承継

集合写真
第3

贈与による承継

法定相続では、相続人と相続割合が法律によって決まっているだけで、被相続人の意思で特定の人に特定の物を相続させるということができません。この点、贈与では、遺言同様、事業を承継させたい後継者に対し、経営に必要な会社株式を確実に承継させることができます。また、贈与は遺言と違い、オーナー経営者の生前から時間をかけて計画的に行うことができます。もっとも、贈与税は相続税より高額になるのが一般で、贈与の回数や株数(非公開会社の場合、価額算定だけをとってみても、さまざまな考慮を要します)等、具体的な実行プランについては、十分な税務面の検討が必要となります。
贈与では、遺言のように厳格な方式は必要ありません。また、契約として双方の意思の合致を必要とするため、財産をもらい受ける側から自分のもらい受ける財産を確認できることになります。
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贈与について

(1)
贈与とは
贈与とは、当事者の一方が相手方に対し自己の財産につき「ただであげる」という意思を表示し、これを相手方が「もらう」と受諾することで成立する契約です。単独行為でなく契約であるため、相手が受諾することが必要となります。そのため、相手に知らせずに「贈与する」などと書面を書いても、それだけでは贈与は成立しません。
贈与には、生前贈与と死因贈与があります。また、その内容によって、負担付贈与とそうでない贈与に分けられます。
また、方式によって、書面による贈与と書面によらない贈与に分けられます。
(2)
負担付贈与
贈与は、基本的には、あげる側が贈与の義務を履行するという片務契約(当事者のうち一方のみしか義務を負わない契約)とされています。しかし、贈与には負担付贈与といわれるものもあります。負担付贈与は、受贈者(もらう側)が一定の給付をする債務を負担する贈与です。たとえば、養親の老後の扶養をする代わりに財産を贈与するなどという契約が負担付贈与です。
負担付贈与は、負担部分と贈与の部分を一体として成立しており、受贈者が負担を履行していれば、後述の「書面によらない贈与」でも取り消すことができなくなるということに注意が必要です。
もっとも、すでに引渡等の履行が済んでしまった等、撤回できない贈与であっても、判例上、いわゆる「忘恩行為」として撤回を認めている事例があり、その多くは、扶養等の義務の不履行を負担付贈与における負担義務の不履行として構成しています。しかし、日本の民法は贈与は撤回できないことを原則として特別その例外を置いていないことから、そのような「忘恩行為」というものは、裁判所が、信義則上放置できない非常に酷な例において当該贈与者を救済するために限定的に認めているものにすぎず、受贈者の行為に高度の背信性があることや贈与者の生活の困窮していること等、大変厳しい要件をみたすことが必要となります。贈与をするにあたっては、のちに撤回したいなどということのないよう、上記のことを前提とした考慮が必要です。
(3)
死因贈与
(イ)
死因贈与とは
死因贈与は、贈与者の死亡によって効力を生じる贈与のことです。死因贈与も贈与であり、贈与は契約ですから、贈与者の贈与意思と受贈者の贈与を受ける意思が合致して初めて成立します。この点で、単独行為である遺贈とは異なります。しかし、死因贈与も遺贈も贈与者の死亡により効力を生じる点で類似するため、方式や遺言能力に関するものなど単独行為的性質の規定を除き、遺贈に関する規定が死因贈与に準用されます(民法 554 条)。
生前贈与が贈与税の対象となるのに対し、死因贈与は、相続税の対象となります。
(ロ)
死因贈与の取消
遺贈は、遺言者が遺言の方式にしたがっていつでも取り消すことができます(民法 1022 条)。最高裁の判例では、死因贈与についても、遺言同様いつでも取り消すことができ、かつ、遺言の方式による必要はないものとしています(最判昭 47.5.25)。
もっとも、和解のなかで死因贈与につき取り決めた事例で、特段の事情があるとして当該死因贈与を取り消すことができないとした判例もあり(最判昭 58.1.24)、原則的には自由な撤回を認めつつ、特段の事情のある場合には例外を認めるのが最高裁の立場とみられます。
(ハ)
死因贈与と仮登記
死因贈与による受贈者の期待権については、仮登記(不動産登記法2条2号)することができます。受贈者の当該仮登記手続を贈与者が承諾したことを証書上に記載しておけば、不動産登記法32条により受贈者の単独申請で仮登記することができます。

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