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売買による承継

事業承継マニュアル

第4章

事業財産の承継と税

集合写真
第1

事業財産の承継にかかる課税のしくみ

5

売買による承継

(1)
売買による株式譲渡所得の課税方法
株式の売却収入からその株式の取得費を差し引いた株式譲渡益に対して、所得税15.315%・住民税 5%の課税が行われます。
株式の譲渡益課税は申告分離課税となるため、給与所得等の他の所得との損益通算はできません。(ただし、同じ年の複数の株式売買取引において、利益と損失がでている場合には、それらの損益を相殺することができます。)
売却の態様による課税関係の詳細は以下のとおりです。
(イ)
個人間の売買の場合
(a)
支配株主間での売買
この場合、株を売却した個人については、売却価額を基に譲渡益が算出されれば譲渡所得税(申告分離課税)が課されます。
また、売却価額が適正な価額を下回る場合には、適正価額と実際の売却価額との差額は低額譲渡として売却した個人から譲受した個人への贈与とみなされて贈与税が課されます。
(b)
支配株主から少数株主への売却
この場合も課税関係としては、株を売却した個人については譲渡所得税が、また、適正な価額を下回る売却価額については、その差額に対して譲受けた個人に贈与税が課されることになります。
(c)
少数株主から支配株主への売却
この場合においても、株を売却した個人に対して所得税課税がされ、適正価額を下回る価額により売却がされた場合には、譲受した個人に対し贈与税課税がされます。
(ロ)
個人が法人に対して売却する場合
売却した個人に譲渡所得税が課税されますが時価の 1/2 未満であるケースでは、売却した個人に対して時価により売却があったものとみなして、譲渡所得税が課されます。
購入を行った法人に対しては適正価額であれば課税は行われませんが、個人にみなし譲渡所得税が課されるケースでは、時価と購入価額との差額について受贈益として法人税の課税が行われます。
(ハ)
法人が自社株を売却する場合
売却益に対して法人税が課税されますが、法人が自社株等の株式時価よりも低い価額で売却するケースでは、時価で譲渡したものとみなして時価と売却価額との差額を譲渡益として計上するとともに、相手方に対する贈与税又は寄付金として計上するという形で法人税が課税されます。
(2)
株式譲渡所得課税での自社株評価
取引の主体により、税法上の適正額が異なります。
その概要を箇条書きにしますと次のとおりです。
(イ)
個人間での売買の場合
支配株主間での売買では、相続税評価における原則的評価法による価額が税法上の適正価額となります。
支配株主から少数株主への売却では、相続税評価における配当還元法による価額とすることができます。
少数株主から支配株主への売却では、相続税評価における原則的評価法による価額が税法上の適正額となります。
以上、詳細は章末<参考>2、(1)を参照して下さい。
(ロ)
個人が法人に対して同族株を売却する場合
所得税法基本通達 59-6 に定める「1 株又は 1 口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引と認められる価額」が適正な時価とされ具体的には一定の条件のもとに、相続税の財産評価基本通達の例により算定して価額とされています。
詳細は、<参考>2、(2)を参照して下さい。
(ハ)
法人が同族株式を売却する場合
法人税基本通達 9-1-13 及び 9-1-14 を準用して適正価額を算定することとなります。
詳細は<参考>2、(3)を参照して下さい。
(3)
売買による承継のメリット・デメリット
(イ)
売買による承継のメリット
当事者同士の合意でいつでも自由に取引ができます。
また、売主の株式譲渡益に対する税率が一律 20.315%となっているため、一度に大量の譲渡を行っても適用される税率が変わることはありません。
(ロ)
売買による承継のデメリット
譲受者が株式買取資金を用意しなければなりません。
また、売主の手元に残る株式売却資金は、既に株式譲渡所得税が課税されておりますが、そのまま保有している場合には、更に相続税の課税財産となってしまいます。

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