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相続による承継に課税される相続税の納税

事業承継マニュアル

第4章

事業財産の承継と税

集合写真
第2
納税方法
2

相続による承継に課税される相続税の納税

(1)
原則
相続税の納税は、原則として相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から 10 ヶ月以内)までに金銭で一括して納付しなければなりません。
(2)
特例
金銭での一括納付が困難な場合に、特例として、延納又は物納による納付が認められています。
(イ)
延納による納税
(a)
要件
納付すべき相続税が 10 万円を超え、かつ、納税義務者について納期限までに、又は納付すべき日に金銭で納付する金額を限度として認められます。申告書を期限内に提出し、併せて延納申請書も期限内に提出する必要があります。また、延納税額に相当する担保を提供しなければなりません。担保の目安としては延納税額と 1 回目の利子税の 3 年分の合計額とします。
(b)
期間
延納期間は原則として 5 年以内とされていますが、課税価格計算の基礎となった財産の価額のうちに不動産等の占める割合に応じて、割合が 5/10 以上の場合で15 年、割合が 3/4 以上の場合 20 年以内の期間の年賦延納が認められます。
(c)
利子税
延納が許可された場合には分納税額と併せて一定の方法により計算した利子税を定められた分納期限までに納付しなければなりません。
(ロ)
物納
(a)
適用要件
延納によっても金銭納付が困難な事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度として物納が認められます。
申告書を期限内に提出し、物納申請書も申告期限内に提出していることや、物納しようとする財産が管理又は処分するのに不適当であると認められない財産であることなど要件は細かく、また、非常に厳しいものとなっています。
(b)
管理又は処分が不適当である財産の例示
国税当局が「管理又は処分するのに不適当であると認める」財産とは、次に掲げるような財産をいい、相続税法施行令第18条及び施行規則第21条に記載されています。
「管理又は処分するのに不適当であると認める」財産の概要
不動産
担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産
所有権の帰属について争いがある不動産
境界が明らかでない土地
隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第 210 条の規定による通行権の内容が明確でないもの
借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産
耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)
敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産
その管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他会社通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
地上権、永小作権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産で、次に掲げる者がその権利を有しているもの
(イ)
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員((イ)において「暴力団員」といいます。)又は暴力団員でなくなった日から 5 年を経過しない者(ワ及び2ヘにおいて「暴力団員等」といいます。)
(ロ)
暴力団員等によりその事業活動を支配されている者
(ハ)
法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事 及び監事並びにこれら以外の者でその法人の経営に従事している者並びに支配人をいいます。)とするもの
株式
譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式
譲渡制限株式
質権その他の担保権の目的となっている株式
権利の帰属について争いのある株式
共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。)
暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社又は暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役及び執行役員をいいます。)とする株式会社が発行した株式
上記以外の財産
その財産の性質が上記の財産に準ずるものとして税務署長が認めるもの
(c)
物納劣後財産
次に掲げるような財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限り物納に充てることができます。(相続税法第 41 条 4 項及び相続税法施行令第 19 条)
地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権又は入会権が設定されている土地
法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地
土地区画整理法による土地区画整理事業等の施行に係る土地につき仮換地又は一時利用地の指定がされていない土地(その指定後において使用又は収益をすることができないその仮換地又は一時利用地に係る土地を含みます。)
現に納税義務者の居住の用又は事業の用に供されている建物及びその敷地(納税義務者がその建物及び敷地について物納の許可を申請する場合を除きます。)
劇場、工場、浴場その他の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びこれらの敷地
建築基準法第43条第1項に規定する道路に2メートル以上接していない土地
都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為をする場合において、その開発行為が開発許可の基準に適合しないときにおけるその開発行為に係る土地
都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除きます。)
農業振興地域の整備に関する法律の規定により定める農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含みます。)
事業の休止(一時的な休止を除きます。)をしている法人に係る株式
(d)
物納手続の明確化
イ.
物納財産を国が収納するために必要な書類として、物納財産の種類に応じ、登記事項証明書、測量図、境界確認書、要請により有価証券届出書等を提出する旨の確約書等一定の書類を定めるとともに、申請者は、これらの書類を物納申請時に提出する。
ロ.
提出された物納手続に必要な書類の記載に不備があった場合又は物納手続に必要な書類の提出がなかった場合には、税務署長は、これらの必要書類の補正又は提出を申請者に請求することができることとする。
この場合において、請求後20日以内に物納手続に必要な書類について補正又は提出がされなかった場合には、物納申請を取り下げたものとみなす。
ハ.
税務署長は、1年以内の期限を定めて、廃材の撤去その他の物納財産を収納するために必要な措置(物納を許可するために必要なものに限る。)を講ずべきことを申請者に請求することができることとする。
この場合において、期限内に当該措置がされなかった場合には、物納申請を取り下げたものとみなす。
ニ.
物納手続に必要な書類の準備や廃材の撤去等の措置に時間を要する場合には、申請者の届出により、上記イ.ロ.又はハ.に係る期限を、上記イ.の場合には物納申請期限から、上記ロ.及びハ.の場合には必要書類の補正等の請求があった日からそれぞれ最長1年間延長することができることとする。
ただし、一度の届出で延長できる期間は3ヶ月までとし、期間満了時には、1年に達するまで、再届出により延長する。
ホ.
税務署長が物納を許可する際に、必要に応じ、後日において汚染地であったことが判明した場合に必要な措置を講ずること、有価証券を売却するために必要な書類を提出すること等の条件を付すことができることとする。
なお、その条件に違反した場合には、5年以内に限り、物納の許可を取り消すことができることとする。
(e)
物納申請の許可に係る審査期間の法定等
イ.
税務署長は、物納申請の許可又は却下を物納申請期限から3ヶ月以内に行う。
ただし、物納財産が多数となるなど調査等に相当の期間を要すると見込まれる場合には、6ヶ月以内(積雪など特別な事情によるものについては、9ヶ月以内)とすることができることとする。
ロ.
物納手続に必要な書類の提出期限が申請者の届出により延長された場合(上記2)ニ.)における上記イ.の審査期間は、当該届出(当該必要書類が提出されたものに限る。)に係る延長期間の満了日から起算する。
ハ.
物納手続に必要な書類の補正若しくは提出の請求又は廃材の撤去等の措置の請求があった場合(上記2)ロ.及びハ.には、その補正若しくは提出又は措置に要する期間(上記2)ニ.により延長された期間を含む。)は、上記イ.の審査期間に算入しない。
ニ.
上記イ.からハ.までの審査期間内に許可又は却下をしない場合には、物納を許可したものとみなす。
(f)
物納申請を却下された者の延納の申請
物納の許可を申請した者について、延納による納付が可能であることから物納申請の全部又は一部が却下された場合には、20日以内に延納の申請を行うことができることとする。
(g)
延納中の物納の選択
相続税を延納中の者が、資力の状況の変化等により延納による納付が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納税額からその納期限の到来した分納税額を控除した残額を限度として、物納を選択することができる制度を創設する。
この場合における物納財産の収納価額は、その物納に係る申請時の価額とする。ただし、税務署長は、収納の時までにその物納財産の状況に著しい変化を生じたときは、収納時の現況によりその物納財産の収納価額を定めることができることとする。
(h)
その他所要の措置
イ.
金銭又は延納による納付困難要件について、その判定方法の明確化を図る。
ロ.
物納財産の性質、形状、その他の特徴により、金銭による納付を困難とする金額を超える金額の物納財産を収納することについてやむを得ない事情があると認められる場合には、税務署長は、当該財産の物納を許可することができることとする。
ハ.
物納により納付が完了されるまでの間について利子税の負担を求める。
ただし、審査事務に要する期間については、利子税を免除する。
ニ.
その他所要の措置を講ずる。

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