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納税対策

事業承継マニュアル

第5章

事業財産の承継と節税方法

集合写真
第1
自社株に関する節税方法の概要
3

納税対策

非上場会社のオーナーに相続が発生した場合、その相続人が一番苦労する点は相続税の納税の問題です。
会社の業績がよい場合、オーナーの所有している株式等の評価額は高額となり、多額の相続税が課税されます。
しかも、オーナーの財産の大部分を当該株式等が占めている場合においては、その納税資金を相続人が別途調達してくる必要があります。このようなケースにおいて、相続人が資金調達を検討した場合、通常、非上場会社の株式等は借入等の担保に供することができないことから大変苦労することになります。
したがって、非上場会社の株式等を資金化する方法についても、事前に充分検討しておく必要があります。具体的な方法としては以下のとおりです。
(1)
金庫株制度の活用
平成13年の商法改正によって、会社は商法上の一定の手続により原則自由にその発行した株式等を自己株式として取得・保有することが可能となりました。その「金庫株制度」を活用して、会社が相続人から当該株式等を買取ることにより、その株式等を資金化することが可能となります。
なお、平成16年税制改正において、平成16年4月1日以降発生した相続につき、相続発生日以降に相続人が相続財産に係る非上場株式を発行会社に譲渡した場合は、以下の特例が適用されます。
相続又は遺贈による財産の取得をした個人で、その相続又は遺贈につき相続税があるものが、その相続の開始があった日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以降3年を経過する日までの間にその相続税額にかかる課税価格の計算の基礎に算入された上場株式等以外の株式(以下「非上場株式」という。)を当該非上場株式の発行会社に譲渡した場合について、次の措置を講ずる。
(イ)
当該非上場株式の譲渡の対価として当該発行会社から交付をうけた金銭の額が当該発行会社の資本等の金額のうちその交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額については、みなし配当課税を行わない。
(ロ)
上記(イ)の適用を受ける金額について、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして、株式等に係る譲渡所得税等の課税の特例を適用する。
この特例により、相続発生後の自己株式の発行会社への売却は、
(a)
みなし配当への高税率の課税から株式譲渡益への低税率の課税になる。
(b)
相続税の取得費加算の制度が使えることになり、譲渡所得税等がさらに少なくなる。
という大きな課税上のメリットが発生します。
(2)
M&Aによる株式の資金化
相続人が当該会社の事業に関与しておらず、後継者が不在のケースにおいては、M&Aによる株式の資金化という方法も検討可能です。非上場会社のM&Aによる株式の資金化の方法としては、具体的には以下のスキームが考えられます。
(イ)
第三者への株式譲渡
オーナー一族が単独で支配権を確立している場合において、当該会社に技術力やブランド価値等の特色があるケースでは、第三者の買手をみつけることも比較的容易と考えられます。M&Aによる第三者への株式の売却を行う場合には、買手企業等の選定、売却価額の算定、買手企業等との交渉、契約関係など、様々な専門的ノウハウが必要となることから、専門家の適切なアドバイスが不可欠と考えられます。
(ロ)
上場会社との合併、株式交換
非上場会社が上場会社と合併したり、あるいは株式交換によって上場会社の子会社になることによって、当該非上場会社のオーナーは当該株式等を非上場株式等から上場株式に転換することが可能となります。上場株式に転換できれば、その後に市場において売却し、換金することも容易となります。
また、会社は大企業グループの一員として今後も安定的な発展を期待することができます。
(ハ)
MBO(マネジング・バイ・アウト)
オーナーの後継者がいない場合に第三者ではなく、現在の会社の役員に株式を売却し、オーナーは経営から退くという方法がMBOです。最近は、当該役員の株式購入資金を支援するMBOファンドが多数設立されており、活発に行われております。MBOのメリットは、全くの第三者への売却と異なり、会社の従業員や取引先等への影響が少なく、従来どおりの経営が引き続き期待できることにあります。
(3)
非上場株式等の物納
上記に挙げたような非上場株式等の資金化が非常に困難である場合には、非上場株式等の物納についても以下の管理又は処分するのに不適当であると認められる有価証券に該当しないかどうか検討する必要があります。
譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていない株式
譲渡制限株式
質権その他の担保権の目的となっている株式
権利の帰属について争いのある株式
共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。)
暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社又は暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役及び執行役をいいます。)とする株式会社が発行した株式
(4)
生命保険の活用
生命保険は、被相続人が契約者でかつ被保険者であり、保険料を支払ったものであれば、被相続人の死亡により、一時に多額の現金が受け取られることと、所得税等の対象とならないため、効率良く納税資金を確保できます。
受け取った生命保険金については、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、相続人一人当り500万円の非課税限度額があります。
相続税予想額が高額になる場合は、納税資金準備として高額の生命保険契約を結ぶことが望ましいといえますが、高齢者や健康に不安がある場合は、十分な生命保険に加入することは困難と考えられます。ただし、最近では生命保険各社で特徴のある生命保険を組み立てていますので、生命保険に加入できる最高年齢が非常に高いものや、病気を限定した生命保険も見受けられます。さらに海外の生命保険会社には、日本の保険会社で引受けができないような条件での生命保険契約の引受けをしている会社もありますので、生命保険会社等の扱っている商品をよく研究することが大切です。

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