東京高等裁判所 平成27年(ネ)第5825号 遺産分割金支払請求控訴事件

東京高等裁判所 平成27年(ネ)第5825号 遺産分割金支払請求控訴事件

遺産分割 遺産分割協議の無効

判例No. 1068

東京高等裁判所 平成27年(ネ)第5825号 遺産分割金支払請求控訴事件

事件番号 東京高等裁判所/平成27年(ネ)第5825号
判決日付 平成28年5月17日
判示事項 控訴人が、被相続人の遺産を管理する被控訴人に対して、遺産分割協議の内容にしたがって金銭を支払うことを請求したのに対し、被控訴人から、遺産分割協議における控訴人の寄与分についての説明(不動産の評価額、寄与分の算定方法等)に誤りがあったとして、遺産分割協議の錯誤無効を主張して金銭の支払いを拒否した事案において、第一審は、被控訴人の主張を認め、遺産分割協議が錯誤によって無効であるとして控訴人の請求を棄却した。

これに対して控訴人が控訴したところ、本判決は、寄与分の有無及び程度が当事者によって自由に処分することのできる性質の事柄であることを前提として、本件遺産分割協議の場において控訴人が最終的に提案した寄与分の金額が当事者の主張として十分あり得るものであること、また、不動産の価額の資料や、控訴人の主張する寄与分の前提事実の資料について、もしこれを精査する必要があるなら、資料の提出と再度の協議を要求すればよいことであり、それが到底できなかった事情は見当たらないことから、本件遺産分割協議に錯誤あったとは認められないとして、控訴人の請求を認めた。

上記のような判断にあたって、本判決は、本件遺産分割協議において不動産を控訴人の所有とすることには共同相続人間で異存はなく、また、控訴人が遺産分割協議の場で説明した不動産の金額と実際の不動産の金額の乖離の程度等からすると、不動産の価額がいくらであるかは、遺産全体の価額における寄与分の価額の割合としては大きな影響を与えるものとはいえないなどとした。