遺産分割

遺産分割一覧

遺産分割 農地寄与分

判例No. 1061

大阪高等裁判所 平成27年(ラ)第908号 遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告事件

事件番号 大阪高等裁判所決定/平成27年(ラ)第908号
判決日付 平成27年10月6日
判示事項

相続人の一人がみかん農家である被相続人とともに農業に従事していたことが寄与分にあたるかどうかが争われた事例において、遺産である農地が荒廃せずみかん畑として維持できたことは当該相続人が農業に従事したことによるものであり、当該農地の価値の減少を防いだことが特別の寄与にあたるとして、当該農地の評価額の30%相当額が寄与分として認められた事例。


遺産分割 特別受益数次相続持ち戻し免除

判例No. 1006

最高裁判所第3小法廷 平成17年(許)第14号 遺産分割審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

事件番号 最高裁判所第3小法廷決定/平成17年(許)第14号
判決日付 平成17年10月11日
判示事項

相続の開始後、遺産分割未了の間に二次相続が開始した場合において、二次被相続人から特別受益を受けた者があるとき、持戻しは必要か否か。

判決要旨

遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである。
そうすると、被相続人Aの遺産について二次相続の被相続人Bが有する共有持分は、Bの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。

遺産分割 遺産の範囲預貯金契約

判例No. 1065

最高裁判所大法廷 平成27年(許)第11号 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

事件番号 最高裁判所大法廷決定/平成27年(許)第11号
判決日付 平成28年12月19日
判示事項

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、遺産分割の対象となるか。

判決要旨

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。

遺産分割 寄与分介護農地

判例No. 1016

大阪高等裁判所 平成18年(ラ)第1052号 遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告事件

事件番号 大阪高等裁判所決定/平成18年(ラ)第1052号
判決日付 平成19年12月6日
判示事項

被相続人の療養看護、農業への従事、不動産の補修等への費用支出について、遺産の維持形成への寄与を認めつつ、寄与相続人も被相続人と長年同居してきたことにより相応の利益を受けてきた側面もあること、農業への従事は専業として貢献した場合と同視することのできる寄与とまでは評価できないこと、建物の補修費関係の出費は寄与相続人自身の利益にもなっており支出額に即して評価すべきでないこと等から、寄与分を遺産総額の30%と定めた原審判を変更し、遺産総額の15%と定めた事例。

遺産分割 錯誤遺産分割協議の無効

判例No. 1072

東京地方裁判所 平成26年(ワ)2823号 遺産分割協議無効確認等請求事件

事件番号 東京地方裁判所判決/平成26年(ワ)2823号
判決日付 平成28年10月19日
判示事項 A国の戸籍に記載されていた被相続人の相続に関し、相続人の一人が他の相続人に対し、A国民法に基づいて、遺産分割協議の通謀虚偽表示による無効を主張し、予備的に同協議の錯誤による取消(※A国民法に基づく)を主張した事案である。原告は、遺産分割協議の通謀虚偽表示無効の理由として、遺産分割協議に出席した税理士から、葬儀費用・税金等を直ちに支払うためには被相続人名義の預金口座を被告名義の口座に換える必要があると言われたことから、本件協議書の内容の合意をする意思がないにもかかわらず、通謀してそのような意思があるように合意したことを主張し、遺産分割協議の錯誤取消の理由として、(1)税理士の上記説示により、被相続人名義の預金口座を被告名義の口座に換える必要があるとの錯誤に陥ったこと、(2)遺産分割協議書に署名押印する前後に証人Bから「事後報告を完全にしてください」という発言があったため、後日、真実の遺産分割協議があるものと誤信したことを主張した。

これに対し、本判決は、証人Bの供述は、本件協議書に署名・押印がされた場面についての重要な点すら覚えておらず信用できないと述べた上、原告の供述等のみでは原告らの主張する事実を認定することはできないとした。また、仮に税理士から上記原告の主張するような発言がされたとしても、遺産分割協議書には、遺産分割方法が記載されており、原告らはそれに署名押印していること、原告は社会経験のある成人であること、相続人らが一同に会する場で、弁護士立会いの下、印鑑証明書を持参し、実印で押印していること等を認定し、原告が本件協議書の内容を理解せずに署名押印したとは認められないとして、原告の虚偽表示無効の主張を認めなかった。

また、錯誤取消については、上記の理由に加え、遺産分割協議の対象に不動産が含まれていることから、原告が、法要等の支払いのために分割協議をしなければならないと誤信することはないこと、遺産分割協議の前に読み上げられた被相続人の遺嘱には、被告に財産処分を任せるとの意向が記載されており、原告はその内容に同意していたと認められること等から、原告は錯誤に陥っておらず、仮に錯誤があったとしても過失があるとして、原告の錯誤取消の主張も認めなかった。